オーズ・ディケイド・平成ライダー 火を噴け!十二人ライダー 01
平成ライダーカプセルトイ二次創作シリーズ 「オーズ・ディケイド・平成ライダー 火を噴け!十二人ライダー」 01:羊とオーロラとピンクの男
2013-08-27 22:26:51※本小説は『仮面ライダーOOO』最終回後の展開を踏まえ、オーズサイドで放送千回記念回(本編に於ける第27、28話)及び『レッツゴー仮面ライダー』に相当する出来事がなかった世界観のお話です。「MOVIE大戦MEGAMAX」との関連要素は特に無く最終回とそれを繋ぐお話でもありません。
2013-08-27 22:27:39※本小説では、通常のオーメダルに代わり、食玩及びカプセルトイでしか登場しなかった『平成仮面ライダーのコアメダル』が登場します。 ※前作「仮面ライダーW Rの脅威/帰って来てくれ仮面ライダー」http://t.co/Z2YVHzlQsf との繋がりはありません。
2013-08-27 22:30:31と、いうわけではじまります。 オーズ・ディケイド・平成ライダー 火を噴け!十二人ライダー 01:羊とオーロラとピンクの男
2013-08-27 22:31:38その日の高原は雲一つない、澄み切った空だった。牧草の乾いた匂いが鼻孔をくすぐり、少し冷やかな気候と相まって、嗅ぐ者に落ち着きと安らぎを与えている。1
2013-08-27 22:32:16青々と茂った草原の上を、肌触りの良さそうな真白い毛の羊の群れと、それらを連れた十数人の男女が横切った。彼らは羊飼いの遊牧民。良質な牧草を求め、北へ南へと移動中の旅団である。2
2013-08-27 22:33:33上は老齢ながらも矍鑠《かくしゃく》とした女性。下は羊たちを先導する馬の上に乗った小さな少年。皆一様に羊毛で拵《こしら》えられたコートや帽子を纏っており、同じ家族であることが窺える。3
2013-08-27 22:35:53だが、その中に同じ服装をしている割には、彼らとは妙に顔立ちの異なる男がいた。馬に乗って列の先頭を陣取る、立派な顎髭《あごひげ》を蓄えた男性は、隣で馬の手綱を引いて歩く彼に話しかけた。4
2013-08-27 22:37:51「嫌な風だ。山の向こうから嵐が来る。早い所ここから離れるぞ。エジー」 「あぁ、はい。って……俺はエジーじゃなくて『映司』ですよ、サヴァンおじさん」 「うぅむ。お前の言葉は訛りが強くてな、済まんかった、エッチ」5
2013-08-27 22:40:03「いや、だから……。エッチでもスケッチワンタッチでも、お風呂に入ってアッチッチでもありませんって。映司です、火野映司」 「そんなことはどうでもいい。さっさと馬に乗れ。手遅れにならんうちにな」6
2013-08-27 22:41:04映司と名乗る青年は「まだ覚えてもらえないのか」と落胆しつつ、馬の背に腰を据えて一団の遥か後方に指示を飛ばす。引き返せという命令は瞬く間に伝わり、皆馬の背に乗って羊を先導しつつ、踵を返して引き返し始めた。7
2013-08-27 22:42:32手綱を握って馬を操る映司の肩を、背後から優しくつつく者がいる。彼と一緒に馬に跨る小さな少年、末っ子のパドルだ。8
2013-08-27 22:45:14「ねぇ、ねぇねぇエイージ。あの話の続き、また聞かせてよ。ねぇねぇ」 「えぇと、どこまで話したっけ。俺の初恋の話? それとも正義の味方になりたい御父さんと男の子の話? じゃなきゃ、爆弾作りが大好きで、自分のために他の人たちまで吹き飛ばそうとした人の話……かな」9
2013-08-27 22:48:10「うぅん。仮面ライダーバースのタダさんが、敵の一味と仲間になっちゃうところぉ」 「タダ……、あぁ、伊達さんのことね。もうそこまで話してたっけか。えぇっと……」10
2013-08-27 22:49:41仮面ライダーオーズ・火野《ひの》映司《えいじ》。 世界を丸ごと喰らわんとする途方もない欲望を持ったメダルの怪物・グリードたちを下し、世界の終末を阻止した彼は、少しのお金と明日のパンツ、今は亡き相棒の形見を手に、自らが欲した絆の手を結ぶため、世界中を巡る旅を続けていた。11
2013-08-27 22:51:50彼は今、鴻上《こうがみ》ファウンデーションの学芸員という職を得て世界を飛び回っており、作業の傍ら、こうして現地の住民たちと交流を深めている。名前をきちんと覚えてもらえないのは悔しいが、皆人当たりが良く、流れ者の自分を快く受け入れてくれたことを喜んでいた。12
2013-08-27 22:53:57「――というわけ。尤も、伊達さんはその手術に成功して、最後の戦いの前に帰って来てくれたんだけどね」 「最後……、ってことは、エイージの戦いはもう終わったの?」 「あぁ、そうさ。世界を滅ぼそうとする化け物たちはもういない。……そう、もう終わったんだよ」13
2013-08-27 22:55:23「――というわけ。尤も、伊達さんはその手術に成功して、最後の戦いの前に帰って来てくれたんだけどね」 「最後……、ってことは、エイージの戦いはもう終わったの?」 「あぁ、そうさ。世界を滅ぼそうとする化け物たちはもういない。……そう、もう終わったんだよ」14
2013-08-27 22:57:34”戦いは終わった”。世界の終末もグリードが全てを喰らうこともない。何もかも元に戻ったんだ。 しかし、それを手放しに喜べない自分がいる。世界を救った代償も大きかったからだ。映司はそんな複雑な気持ちを振り切るように、ズボンのポケットに収まった「かつての相棒」を握り締めた。15
2013-08-27 23:00:20「エイージ、どうしたの? そんな浮かない顔して」 「何でもないよ。さてと、次のお話は……」 そんなことを話して何になる。映司はポケットから手を出して迷いを振り切り、先程までと変わらない笑顔を見せた。だが今度は少年の様子がおかしい。不安げな表情で嵐とは別の方向を指差している。16
2013-08-27 23:02:54「エイージ、エイージ。大変だ、嵐だ。嵐が来るよ」 「分かってるよ。だから必死に引き返してるんだろ」 「違うんだ。雨とか風じゃない。もっと恐ろしい”何か”が」17
2013-08-27 23:04:27少年に促され、彼の指す方を向く映司。見た限り後方の嵐より危険なものは見当たらない。彼は一体何を恐れているのか。首を傾げつつも「大丈夫だよ」とパドルをなだめる映司だったが、彼らの遥か前方に、不気味な色合いの『光のオーロラ』が現れ、状況は一変した。18
2013-08-27 23:06:50押しても引いてもたわむだけの通り抜けられないオーロラに、羊たちはおろか、飼い主たちも戸惑って足並みを崩してしまう。口々に何がどうなっているんだと愚痴る中、二つの『何か』が光のオーロラを砕いて飛び出し、平野の上に降り立った。19
2013-08-27 23:08:54現れたのは二人。一人は煤けた銅の鎧を全身に纏い、蠍の絵柄の盾と柄に鎖が付いた斧を構えた、炯炯《けいけい》とした目付きと口髭顎髭が印象的な男。もう一人は、ピンク地の顔に黒の縦縞が無数に刻まれた、緑色の複眼の戦士。顔どころか体中が桃色で、鎧の男に負けず劣らず不気味な印象を受ける。21
2013-08-27 23:12:22