笠井潔氏が語るファシズムと安倍政権 ― 都知事選の結果を受けて

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笠井潔 @kiyoshikasai

もう一度整理する。ファシズムの第一の意味は、世界資本主義の危機に直面し、生存圏の確保と世界再分割のため侵略戦争を企てる後発帝国主義の国内支配体制で、これにはドイツを典型に枢軸三国が多かれ少なかれ当てはまる。この意味でのファシズム概念が、すでに失効していることは明らかだろう。

2014-02-20 15:41:49
笠井潔 @kiyoshikasai

ホブスン/レーニン的な帝国主義概念は、第二次大戦が終わり冷戦が開始された時点で原理的に失効したからだ。西側諸国を従属的な同盟国として支配した「半世界国家」アメリカを、古典的な意味で帝国主義と規定することはできない。もうひとつの「半世界国家」ソ連にしても同様である。

2014-02-20 15:46:33
笠井潔 @kiyoshikasai

ファシズムの第二の意味は、第一次大戦や1929年恐慌として到来した、19世紀的資本主義(自由資本主義)の危機を超えるために試みられた国民社会主義運動と、その国家体制である。侵略戦争を戦う後発帝国主義の国内体制というだけなら、立憲国家の体制を暴力的に破壊する必要はない。

2014-02-20 15:53:13
笠井潔 @kiyoshikasai

実際、第一次大戦期のドイツでは戦前からの欽定憲法体制が維持されていた。自由や民主主義などの近代的理念と、その政治的フレームを徹底的に破壊したのは、ファシズムが「超近代」をめざす運動だったからだ。経済的には近代=資本主義だから、ファシズムは超近代=社会主義を標榜することになる。

2014-02-20 15:57:00
笠井潔 @kiyoshikasai

体制に批判的な勢力や個人を、近代的な法治や人権など完全に無視して徹底弾圧し、根絶し、かつて目撃されたことのない異様な警察国家を築いたのは、ファシズムが「前近代」だったからではない。「超近代」めざしていたからだ。「超近代」にとって、近代的な自由や人権は超克の対象である。

2014-02-20 16:08:22
笠井潔 @kiyoshikasai

近代の産物である立憲体制も、ファシズムは超克しようとする。ナチス国家がワイマール国家の欄外の空白に存在したこと、憲法が停止される例外状態の永続化を目指したことは、その必然的な結果だった。日本でも事態は同様で、昭和新体制=戦時天皇制は明治憲法体制の「例外」である。

2014-02-20 16:14:37
笠井潔 @kiyoshikasai

この点で安倍政治の解釈改憲路線はファシズム的である。改憲の難度を引き下げることで、改憲を強行しようとする発想も同様だ。しかも自民改憲案は、とうてい近代的な憲法とはいえないシロモノだ。それを採択することは、立憲体制の外的な「否定」ではない。立憲体制のファシズム的な例外状態化なのだ。

2014-02-20 16:23:30
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