筍提督と僻地の泊地 (1)

筍提督と僻地の泊地＠新時代鎮守府 @storyoflingga

この日記は、リンガ泊地に飛ばされた副業提督・筍が、なんでもない鎮守府の日常を書いた日記です。

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筍提督の本業は学生なので、鎮守府には夕方以降にしか来られません。ですが、日記は一日の終わりにつけるものなので、丁度いいのです。 #僻地の泊地日記

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今日も出迎えは鳳翔さんでした。 「お疲れ様です。お風呂にしますか？　ご飯にしますか？　それとも……」 DTだと分かっていて訊いているようです。 #僻地の泊地日記

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DTイジリをなかったことにして、鳳翔さんは私の手提げ鞄を持ってくれます。 「さ、提督、食事はできていますよ」 『うん、ありがとう』 お艦の言葉に甘えて食堂に向かうことにします。この時間、食堂にいる子らと言えば、戦艦か空母たちくらいのものです。 #僻地の泊地日記

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食堂に行くと、ぽつんと一人分の食事が置いてあり、その隣のテーブルを金剛型が占領していました。みな不満そうです。何やら嫌な予感がしますが、避けるわけにもいきません。「ただいま」と声をかけて、席につきました。 #僻地の泊地日記

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「！！　てェとくーゥ！」『何だ』「最近私たちを出撃させてくれないのは何故ですか！？」『あーそれは明日話す』「今話してください！　榛名、気になります！」『飯食わせて』「私の戦況分析が不満ですか！？」『あの、飯』 #僻地の泊地日記

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金剛型に囲まれ、傍から見ればモテる提督ですが、こればっかりはうんざり。キリがないので無視して箸を持つと、「しょうがないデース。My sisters, 寮で花札でもするネー」と長女を先頭に引き上げていきました。 #僻地の泊地日記

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飛鷹型や千歳型たちが酒でも飲んでるかと思いましたが、いません。結局私は一人になった食堂で独り食事を済ませました。食器を下げたところに現れた鳳翔さんが、金剛姉妹撤退後に現れた唯一の艦娘でした。 #僻地の泊地日記

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「お皿をください。洗います」『いい、俺がやる』「そうもいきません。提督は休んでください」『しかし…』「明日は会議でしょう？　早く寝ないといけません」 そうです、明日は艦人会議です。 #僻地の泊地日記

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艦人会議とは、その名の通り人間である提督と艦娘が集う会議です。戦艦、空母(含軽母)、重巡(含航巡)、軽巡(含雷巡)、駆逐艦から三人、潜水艦から一人が出ます。いずれも各艦種の中でレベルが高い者ばかりです。 #僻地の泊地日記

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提督も艦娘の男版みたいなものなので、人艦会議ではなく艦人会議となっています。月の始めから一週間のうちから一日を選んで開かれますが、だいたいが大安です。こんな会議、我が鎮守府くらいにしかないでしょう。 #僻地の泊地日記

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私は、皿洗いを任せることにして調理場を後にし、すぐに思い立って振り返りました。 『鳳翔さん――貴艦を明日の秘書にしようと思う』 「あら、願ってもないこと」 『忙しくなるぞ』 「いつものことです」　#僻地の泊地日記

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明日の会議は、戦艦や正規空母の出撃が最近ゼロなこと、南西諸島海域で軽空母と重巡が酷使されていることで非難の嵐になること請け合いです。が、こっちにも話したいことはあります。負けません。 #僻地の泊地日記

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艦人会議は荒れに荒れました。特に憤っていたのはやはり戦艦組でした。金剛はやや感情的に出撃を増やせと要求し、榛名は冷静に電探を増やすべきだと主張し、伊勢は瑞雲ガン積みをやめろと頼んできました。航戦は強く生きてください。 #僻地の泊地日記

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彼女らの主張も尤もですが、空母の話も聴かねばなりません。16万以上あるボーキのおかげでほくほくな赤城さんは措いといて、翔鶴姐さんと千歳は烈風や流星改の増産を求めてきます。確かに空母が増えた今、満足に配備できていません。 #僻地の泊地日記

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十時に始まった会議は、十五時までかかりました。だいたい戦艦と空母のせいです。艦載機の開発は先月からの課題なので、今月は仕方なく電探の増産に取りかかることにしました。 駆逐艦たちへの菓子代も高騰です。経費落ちないかな。 #僻地の泊地日記

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「では、今月の艦人会議は…」鳳翔さんが締めようとしたのを、私が止めます。『俺から二つ言いたいことがある』と言うと、重巡の那智・最上・衣笠と、駆逐艦の吹雪・綾波・夕立が弾かれたように顔を上げました。察したようです。 #僻地の泊地日記

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『一つ。我が艦隊がサブ島沖で足止めを喰ってるのは知ってるな。重巡四人と駆逐二人で一度は主力を撃破したが、それ以来一度も勝てていない。そこで、編成を見直すことにした。戦艦を加える』 「Wow!!!!」 『榛名、姉を止めろ』 #僻地の泊地日記

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『新たな編成によるサブ島沖攻略。これを沙号作戦と名付け、残り四隊あるとされる敵主力艦隊を撃滅する』 サブ島のサに、旁の読みが「勝」と同じである沙の字を当てたこの作戦名は、学生としての勉強をしながら考えました。 #僻地の泊地日記

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「鎧袖一触ですね！」相棒の言葉を借りたのは赤城さん。この言葉が後押しとなったのか、会議室は拍手に包まれました。勝てるとは言ってないのですが。 一方、サブ島侵攻隊長の那智が言います。「もう一つの連絡とは何だ？」 #僻地の泊地日記

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『それが、知り合いの提督やその艦娘に異変が起きているらしい』 「異変？」 『変身したり、艦娘が本来持っていない超人的な力を身につけたり』 「変身が気になりマース」 さすがにフラタになっているとは言えません。濁します。 #僻地の泊地日記

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『とにかく、他の鎮守府の子らと会うことがあったら気を付けてくれ。お前たちには、異変の犠牲にもなってほしくないし、異変が起こってもほしくない』 寝ている大井に一番聴いてほしかった。新幹線並みの魚雷は噂だけで腹一杯です。 #僻地の泊地日記

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「そういえば、提督」手を挙げたのは翔鶴姐さんです。「航空班の妖精さんたちに、新装備の開発を依頼したと聞いたのですが」『その通りだ』「えっ、どんなのです？」と千歳も喰いつきます。 『竹トンボだ』 #僻地の泊地日記

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途端、皆の頭上に疑問符が踊ります。 「知らない子ですね…」「それって魚雷で撃ち落とせます？」「お、面白い趣味ネー」「提督さん、子供に戻るっぽい？」 好き勝手言われてますが、こればっかりは彼女たちには明かせません。 #僻地の泊地日記