長谷敏司先生による第34回SF大賞受賞作紹介等まとめ

『あなたのための物語』『BEATLESS』で知られるSF作家、長谷敏司先生による第34回SF大賞関連の発言まとめ 酉島伝法先生の大賞作『皆勤の徒』 宮内悠介先生の特別賞受賞作 『ヨハネスブルグの天使たち』 『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』他 続きを読む
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長谷敏司 @hose_s

なんというか、今回のSF大賞で読者の皆さんにもご参加いただいた「エントリ」というシステムは、エントリに参加するときに今年のSFの話で盛り上がってほしい意図を含んでいた。そして、大賞が決まったあと、この祭りの話題で楽しんで次年度のSFと大賞に期待してもらいたいということもあった。

2014-03-07 22:35:31
長谷敏司 @hose_s

せっかくなので、先日twitterですこしつぶやいてもいたのだけれど、SF大賞受賞作『皆勤の徒』について、紹介など書いてみることにした。「盛り上がってほしい」と言われても読者さんも困るだろうから、率先して作家側からやってみることにしたのだ。

2014-03-07 22:41:08
長谷敏司 @hose_s

落選したノミネート作家がこういうタイミングで出すのは、本当によいのか迷いもした。けれど、SF大賞自体も過渡期であるし、悪いばかりでもないだろうと思う。SF大賞の記憶が薄れないうちに、SFの話をみんなでして盛り上がる機会が増えればいいなということで。以下敬称略ですが、ご容赦を。

2014-03-07 22:44:10
長谷敏司 @hose_s

長谷のtwitterを見てくれているかたに、大賞作『皆勤の徒』(酉島伝法:東京創元社)のおもしろさや凄さを紹介しようと思った。だが、テキストを書くのにおもいのほか苦心した。この小説の一番面白いところは、紹介すら難しい独自の言語世界だからだ。

2014-03-07 22:46:49
長谷敏司 @hose_s

たとえば『皆勤の徒』というタイトルにイメージとして強くつながっている、〝社〟という語が作中何度も出てくる。けれど、この言葉自体も何通りもの意味を持って造語に組み込まれている。造語の中に組み込まれた〝社〟の意味の違いは、物語の中で切り取られる社会の局面の違いにもつながっている。

2014-03-07 22:47:40
長谷敏司 @hose_s

作中では、その造語世界から脱出できる場所はない。読んで行く間、読み手はよく知っているはずの〝社〟という語の意味を、自分の手に取り戻せない。持っているつもりだったものを手放すことは、揺さぶられるということでもある。ここではない場所へ行きたいという読書の欲求は、達成されているのだ。

2014-03-07 22:56:26
長谷敏司 @hose_s

『皆勤の徒』の造語世界づくりが巧みなのは、最終篇『百々似隊商』で風穴が空くことだ。そこで物語の全容の見通しがつくこと自体が、本としての一つのクライマックスになっている。

2014-03-07 22:59:17
長谷敏司 @hose_s

すでにここまで読み進めた読者の足場は、造語世界の側に一歩引き込まれている。この状態で、身近さを感じる風景と俯瞰図のヒントが提示されることで、造語世界に翻弄されていた自分本来の人間性を読者が思い出す(言葉を取り戻す)のだと思っている。この揺り戻しは、一つのSFらしいドラマだ。

2014-03-07 23:04:35
長谷敏司 @hose_s

『皆勤の徒』のプロ評価が高いのは、読んでいて明らかに自分には書けないと感じる小説だからだと思っている。それはただ酉島伝法にしか書けない小説だということで、魅力のあるワン・アンド・オンリーには無視しがたい力がある。それを最高のものとして評価することは正しいありようだと思う。

2014-03-07 23:06:31
長谷敏司 @hose_s

ともあれ、『皆勤の徒』はおそらく読むのが一番わかりやすい小説である。興味がわかれたらお手にとってみてください。 http://t.co/nzu68B6PG0

2014-03-07 23:09:12
長谷敏司 @hose_s

長文つぶやきの連投にお付き合いいただき、ありがとうございます。しかし、書いてみるとやはり『皆勤の徒』の紹介は難しい。未読の人にどう伝わったかもあるし、既読のかたにも異論たくさんありそう。皆さんの話題の一助にでもなれればさいわいです。

2014-03-07 23:16:06
長谷敏司 @hose_s

実は、『ヨハネスブルクの天使たち』、『NOVA』についても書いてはいるのだが、twitter掲載していいかは迷うところもある。読者さん的にどうなのだろう。問題なければ、明晩は『ヨハネスブルクの天使たち』で。

2014-03-07 23:19:51
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

選考会でもそこが焦点のひとつになりました。北野さんが「だが日本SFの伝統に連なってもいる」と興味深い指摘を。 RT @hose_s 『皆勤の徒』のプロ評価が高いのは、//それはただ酉島伝法にしか書けない小説だということで、魅力のあるワン・アンド・オンリーには無視しがたい力が//

2014-03-07 23:32:20
小川一水 @ogawaissui

そういえば昔から「寄宿生」って言葉に微妙な気持ち悪さを感じてた(しらじらしい)。

2014-03-07 23:07:20
小川一水 @ogawaissui

「寄宿生っていったら寄宿生じゃん、学生なんかが人の家に住み込むことでしょう……」と思った人は、皆勤の徒を読むとその感覚がガラッと裏返るので、おすすめる。もう今までの目で「寄宿生」を見られない。

2014-03-07 23:08:50
小川一水 @ogawaissui

寄宿生の元の意味は寮生か。

2014-03-07 23:10:30
長谷敏司 @hose_s

@ogawaissui 『皆勤の徒』は、徹底しているのがいいですね。漢字のある中国語以外でどう翻訳できるのか想像もできないです。原語で読める日本人でよかったと思います。

2014-03-07 23:27:49
小川一水 @ogawaissui

@hose_s はい。大笑いできる要素と言葉の意味の作り替えが絡み合って、すごく不思議な世界ができていました。しかもハードボイルドな面もあるんですよね。

2014-03-08 03:03:37
長谷敏司 @hose_s

@ogawaissui 異形なものを描くときの、人間性との距離感というのは、おもしろいと思います。SFを書いていてよかったと思う瞬間でもありますね。

2014-03-08 22:35:02
酉島伝法(∴)とりしま @dempow

@hose_s 長谷さんありがとうございます。感激しつつ、興味深く読ませていただきました。『ヨハネスブルクの天使たち』や『NOVA』についてもぜひ。

2014-03-07 23:29:45
長谷敏司 @hose_s

酉島伝法(@dempow)さんご本人から温かいお言葉いただき、感謝しつつ胸をなで下ろす。なぜほっとしているかというと、今晩の一連のつぶやき、ご本人の了承なしでやってしまったからだったり。実はブックありではなく、わりとガチな出たとこ勝負だったのだ。勝負のしどころを間違えている感。

2014-03-07 23:45:33
長谷敏司 @hose_s

えー、先ほどご指摘いただきまして。『ヨハネスブルグの天使たち』でした。×ヨハネスブルク○ヨハネスブルグ。宮内悠介さんすみません。こんな肝心なところで表記ミスとは。

2014-03-07 23:57:54
Kotani Mari @KotaniMari

『皆勤の徒』のような感性の風景をかつてどこかで見たことがあるようなないような。のどまででかかっていまいち思い出せなかったのだが、林良文「脳髄を懐胎したある唯物論者の花嫁」(トレヴィル)だったかも。フェティシズムが極限まで行くとタガがはずれてヒトの肉体に見えなくなる、アレね。

2014-03-08 00:15:54
長谷敏司 @hose_s

今日は特別賞『ヨハネスブルグの天使たち』(宮内悠介:ハヤカワJコレクション)のご紹介を。実を言うと、昨晩の『皆勤の徒』とは違った意味で緊張している。これは紹介文ではないのではないかと思うところも大きいからだ。

2014-03-08 22:47:59
長谷敏司 @hose_s

つまり、拙作『BEATLESS』のギミックであるhIEと、今作のDX9がどちらも人型アンドロイドであるためである。媒体がtwitterということで、フォロワーのかたが見る紹介文であることを考えると、この点を避けると盛り上がらない気がする。いらない娯楽根性かもしれないけれど。

2014-03-08 22:50:05
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