火砲小話~砲身の寿命について(パンターの砲、ゲルリッヒ砲、そしてパリ砲を主に)

火砲の砲身寿命について勉強がてらあれこれ
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

広く用いられた火砲の中でたぶん徹甲弾(硬芯徹甲弾とかAPDSとかじゃないよ)の初速が最大級なZIS-2対戦車砲の弾 http://t.co/SLtyVxlrJ3 やはり弾帯に注目。やたら幅広で肉厚です。だいたい2mm厚くらいありそうで、ガス漏れ対策が重点が伺えます

2014-03-10 22:33:51
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

@sudo_simoigusa なんともはや……確かに理屈を見れば出来そうな気はしてきますが

2014-03-10 22:37:48

パンター砲を例に

えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

話をパンター砲に戻して。これの70口径砲の砲身寿命は2000発程度と言われます。でも、これは通常の徹甲弾(初速920m/s)を用いた場合の寿命。実際には榴弾(700m/s)の場合は1/4発分、硬芯徹甲弾(1120m/s)は4発分と数えました。使用弾種によっても寿命は変わるのです

2014-03-10 22:39:29
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

硬芯徹甲弾を使うと砲身寿命が縮むのは何故か? たぶん装薬が異なるからでしょう。軽量な硬芯徹甲弾は通常徹甲弾より素早く加速しますから、通常のゆっくり燃える装薬では弾が砲口から出るまでに燃え切りません。故に急燃性の装薬を用いるのですが、これは圧力が急激に高まること≒高腔圧を意味します

2014-03-10 22:45:14
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

パンターの硬芯徹甲弾では装薬の種類を変えているほか、さらに装薬量も4kgから3.3kgへと減じています。たぶん量をそのままま急燃性の装薬に替えてしまうと腔圧が上がり過ぎてしまうのでしょう。なんとなくパワフルなイメージのある硬芯徹甲弾は、実は装薬量だけ見れば減装でさえあるわけです

2014-03-10 22:48:43
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

砲弾の生産数を見るに、パンターの徹甲弾:榴弾:硬芯徹甲弾の使用比率は1:1.276:0.009。これに砲身寿命2000発、榴弾は1/4発分、硬芯徹甲弾は4発分として数えると……典型的パンター砲の寿命は3373発ほどだった事になります。榴弾のお蔭で本来の2000発を超えるんですね

2014-03-10 22:55:06
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

もっとも、実際にパンターの砲身が何発の射撃で交換されていたのかは、また別問題でしょうけども

2014-03-10 22:56:22
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

もしパンターの砲で榴弾だけ撃ち続けたら、その砲身寿命は8000発になります。これは榴弾の初速が近い90式野砲より遥かに長く、むしろ38式野砲に近いです(国が違うので単純比較は良くないですが)。技術や材質の差もありましょうが、長い砲身でゆっくり加速してやるのは砲身に優しいわけです

2014-03-10 23:02:51
SUDO @sudo_simoigusa

@FHSWman 実は38式野砲のほうが90式野砲より命数が短いという驚愕の事実(実際に多数発射の実験やって確認してます)

2014-03-10 23:05:57
SUDO @sudo_simoigusa

なお熱の影響もあるので短時間で連射するのは緩慢に撃つより同じ弾数なら負担あるだろうねとか

2014-03-10 23:07:58
SUDO @sudo_simoigusa

なおドイツの火砲の命数は冶金等の優位もあるけど、装薬の優位じゃないかなとか思う要素もあったり

2014-03-10 23:08:31
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

. @sudo_simoigusa あ、れれ……(本をめくる音)あらら確かに。90式野砲は33年の北満での審査で2900~3600発程までは問題なく撃てていて4600発で交換に至ったのに対し、改造38式野砲は(たぶん同時期の試験で)2500発くらいで燒蝕が酷くなったとありますね

2014-03-10 23:16:21
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

長砲身砲は砲身寿命が短い印象がありますが、これはあまり正確でもないようで。長砲身砲は高初速を目指したものが多く、そういう砲は大概が高腔圧で、高腔圧砲は寿命が短くなりがちという話で。だからパンター砲の榴弾や赤軍のF-22師団砲のように、長砲身砲でも腔圧が低めなら短命とはならない、と

2014-03-10 23:19:50

ゲルリッヒ砲は寿命が短い?

えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

あるいは逆に、パンター砲で硬芯徹甲弾だけを撃ち続けると、通常徹甲弾換算2000発分の砲身寿命は500発で尽きてしまう。「砲身寿命が短い」の枕詞が必ず付くPaK41ゲルリッヒ砲の寿命は500~600発程度とされていましたが……こう見るとゲルリッヒだとかどうかは無関係に思えません?

2014-03-10 23:23:30
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ゲルリッヒ砲である7.5cm PaK41の初速は1125m/sで、これはパンターの7.5cm KwK42での硬芯徹甲弾使用時の初速1120m/sと同等です。こんな無茶苦茶な高初速にもなると、ゲルリッヒ砲だとか普通の砲だとかに関係なく砲身寿命は短くなってしまうのでしょう。たぶん

2014-03-10 23:26:14
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

寿命の短い高初速砲の極端な例としては、ソ連の57mm ZIS-2対戦車砲の前身であるZIS-1KVがあります。これは86口径もの長砲身を持ち初速は1150m/sでしたが、40発撃った時点で精度と初速が明らかに低下し、50発撃つ頃には旋転不良に伴う横弾を生じています

2014-03-10 23:32:16
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

焼蝕は薬室付近から発生し「徐々に」前方へ成長していくわけですから、横弾を生じるようになった砲とて、腔面が完全にツルツルになっているとは考えにくいです。多分ZIS-1KVでは拡大した隙間からの噴出ガスで弾帯のほうが損傷してしまい、噛まなくなってしまったんじゃないでしょうか

2014-03-10 23:37:07
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ともあれこういう訳で、「ゲルヒッヒ砲の砲身寿命が短いって話はあんまり適切じゃないんでないの?」などと先日から思っていたのです。や、実際寿命が短いのは事実ですが、それはゲルリッヒ砲に限らず、1100m/sを大きく超えるような無茶な高初速ライフル砲では逃れられない問題なんじゃないのと

2014-03-10 23:42:13
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ライフル砲と言えば、ゲルリッヒ砲をライフル砲と呼んでいいかどうかについては首を傾げる人もあるやもしれません。でもPaK41の場合、どうやら薬室から2950mmは普通にライフリングが切ってあり、そのあとの直径を絞る部分と最後の直線部分は滑腔なんだそうで。つまり一応ライフルかしら…?

2014-03-10 23:46:48
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ライフリングに食い込んでた弾が砲身途中から滑腔部に突入するとなると、ライフリングに合わせて変形してる弾帯と滑腔砲身の間に隙間ができてガスが漏れるんじないの? と心配になります。でもゲルリッヒ砲の場合は円錐部に入って直径を絞る事になるので、施条部から滑腔部に移っても漏れは無いのかな

2014-03-10 23:52:21
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

尤もゲルリッヒ砲の弾に弾帯は無いですが、絞られる部分……傘? ともかくあれがライフリングに噛むようです。あれは(よく軽金属とか言われますけど)軟鉄製ですが、普通の弾でも軟鉄製弾帯なんてのがある程なのでライフリングとの噛みは問題なさそう http://t.co/qPkZdU5Bu7

2014-03-10 23:55:11
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ライフル砲の途中から施条が消えて滑腔砲に変わるなんて砲(半滑腔砲?)はゲルリッヒ砲以外にはあまり聞きませんが、ソ連ではT-34-85向けに一応検討されてました。これは先端1/3程だけが滑腔砲になったものですが、詳細はよくわからず。弾道がひどく不安定だったという話は残っています

2014-03-10 23:59:39