イマジナリーライン、あるいは「切り返し」について~過去のマンガ入門書を中心に
- gryphonjapan
- 18727
- 0
- 1
- 1
過去の関連togetter再掲載
【イマジナリーライン】を超えたマンガは最悪なのか
http://togetter.com/li/641095
【イマジナリーライン騒動】はマンガ業界を変えるのか
http://togetter.com/li/641938
(おまけ)
【関連】かかし朝浩先生によるイマジナリーライン解説
http://togetter.com/li/641711
「イマジナリーライン」まとめてメモ
http://togetter.com/li/641279
いまだマンガにおける「イマジナリーライン」をめぐる論争? は続いているようなのだけれど、昨日大学に行って資料をもってきたので、いくらか共有できるようテキスト化してみる。
2014-03-15 06:08:22いまはなぜか「イマジナリーラインを越えない」という言い方になっているが、マンガ技法書では多く「切り返しはやってはいけない」という言い方になっている。
2014-03-15 06:09:23「切り返しはやってはいけない」を、「並ぶ二人の人物をある方向からの<カメラ>でとらえたのち、反対側の方向に<カメラ>を持って行くこと」と、映画の180度ルールの意味ととらえるのが一般的な理解だし、だから「イマジナリーライン」とも呼ばれているのだが、(続く)
2014-03-15 06:11:31(続き)単にコマ内の人物の配置を、連続するコマで反転させてはいけないという意味(必ずしも仮想的な<カメラ>を想定しない)で用いられていると考えられる場合もある(例:鳥山明のHETAPPIマンガ研究所)。
2014-03-15 06:13:09『鳥山明のHETAPPIマンガ研究所』では、ひじょうに平面的なキャラ図像が用いられ、二人の人物の間に置かれたコップ等に厚みが描かれていない、画面内の奥行きのない絵が解説のための例に用いられている。なお、この作例は鳥山明によるものではない。
2014-03-15 06:15:18@GoITO 論争になってますかね。技術的なことで自分に聞いてきたのは2〜3人で、一人はDBという権威を持ち出して揚げ足取りしたい気配を感じる物言いで、技術論なんか興味ないのでは? 他人の揉め事に便乗して騒ぎたいだけ?( ´ ▽ ` )ノ
2014-03-15 06:19:35飯塚裕之・小野敏洋『熱筆! まんが学園!! 』小学館、1997 では、「キャラの立つ位置が急に変わると、読者は混乱してしまう!!」と書かれている(下巻、p.85)。
2014-03-15 06:19:39さらに(この本はマンガ仕立てで、主に登場人物たちの会話で解説が行われている)、「切り返し」については以下のように禁忌であるといわれている。同、p.84
2014-03-15 06:20:44(会話する二人の人物を示す連続する二コマで、コマ内の人物の位置が逆転しているものを示したうえで)「こ…この構成の どこがわかり にくいんだっ!!」と主人公(熱筆という名)が叫ぶと(続く)
2014-03-15 06:24:04「ダメよ 熱筆!!」「こ…この構成は、まんがではタブーと される「切り返し」!!」とツッコまれる。さらに「「切り返し」!?」「そうです。構成を乱し、読む者のリズムを崩し、状況をわかりにくくする 憎むべき存在…その名は 「切り返し」!!」と続く。
2014-03-15 06:26:42これなどが「『切り返し』はやってはいけない」と説く典型的な例だろう。「切り返し」なる語は、映画の世界ではショット・リヴァースショットという別の意味で用いられており、180度ルールのことを指すものではない。
2014-03-15 06:29:36拙著『マンガは変わる』所収の「マンガの描き方本の基礎知識」(初出1998)では「誤用」としたが、誤用と断じるのは早計かもしれない。管見の限りでは「劇画村塾」のテキストまで遡ることができ、先の『熱筆!! まんが学園』もそうだが、劇画村塾系の著者の本に出てくることが多い。
2014-03-15 06:31:56一方、「切り返しはやってはいけない」と同義のことを、編集者がマンガ家に言っていたことを示す資料もある。またそこでマンガ家の側からこのルールは必要ないということも言われている。以下、竹宮惠子『Passé Composé』駸々堂書店、1979、p.100より引用する。
2014-03-15 06:36:14『変奏曲外伝』という作品について詳細に解題する文章の一部である。 「ここでちょっと第2ページを見てもらいたい。最初、右にウォルフがいて、ボブは左にいる。5コマ、6コマと進んだあと次のコマでは、ふたりの位置が左右逆になっている。頭のよい読者諸君には、もうおわかりのことと思うが」
2014-03-15 06:39:23「(白土三平氏がよく使ったねェ、このセリフ!)つまりカメラが彼らを中心に百八十度回転して、逆から写しているのよ。」 <写して は原文ママ>
2014-03-15 06:41:09「昔はこう描くと、編集部からよくおこられた。幼い読者が見間違う、誤解をする、というのだ。キャラクターの描きわけられていなかった昔ならいざしらず、このくらいキャラクターが描きわけられていたら、いくらなんでも読者が間違ったりすまい。」
2014-03-15 06:42:46「最近は、TVでもスタジオでは、1カメ、2カメ、なんてあって三、四台のカメラで、バンバン構図を変えて写す。そういうことが子供にだって理解されているんだから、漫画に同じ方法を使ったってなんの支障もないはずだ。」
2014-03-15 06:44:48以上、竹宮惠子『KEIKO-TAKEMIYA Passé Comosé』駸々堂書店、1979、p.100 より引用。 ここで「昔」と言われているのは、おそらく1960年代末から70年代なかばにかけてのことと思われる(竹宮惠子のデビューは1968年)。
2014-03-15 06:47:58次に、「切り返し」という語を明確に用いつつ、コマ内に置かれた人物の位置関係(正確には、物語世界内での位置関係ではなく、紙面上での配置関係)が連続するコマで反転することを「あえて行う」ことを解説した例を引用する。藤島康介『漫画描き方入門じゃありません』講談社、2009、p.120
2014-03-15 06:52:10「P6~P8 このあたりが、第一話の”承”にあたる部分です。(中略)この”承”の部分は会話だけで話を進めなくてはいけなかったのですが、視点の切り返しを使うことで絵面にバリエーションをつけています。」
2014-03-15 06:56:16