「千の想いを」～第三章・境界・固定イベント「演習」#2～

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

異質な物を視界に確認して、陸奥が眉をひそめる。 ２つの影が波を踏み台に跳び上がったのだ。 ２発の砲撃の『弾道上』へ。 偶然なわけがない。確実に、砲撃に気付き、弾道を理解し、そららを踏まえた上で遮る位置に飛び込んでいく。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

身を呈して仲間を守ろうと言うのか。 陸奥は冷静に判断する。もしもこの砲撃とあの２つの影を眼で追う事ができる存在が他にいたとして、きっと同じように思うだろう。既に宙にいる時点で、回避は不可能だ。

陸奥 @erxtcyvubyvubin

@tiyodadayo （ふふっ、一気に二隻…MVPは貰ったわ！）

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

仲間を守る為に自らを犠牲にする精神は立派だと彼女は嘲る事なく思う。 結局は同じ事だ、とも陸奥は同時に考える。リタイアする順番が変わっただけに過ぎない。この２発を妨害したところで、それきり撃てなくなるわけでもない。 次の瞬間、陸奥は信じられないものを目の当たりにする事となる。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

先に飛んだ影が、砲弾を『斬った』。 高速で飛来する火薬と金属の塊を、奇麗に両断しすれ違う。背後で起こる半分ずつになった爆風を背に海面へと降り立ち、何も無かったように走り出す。 宙で物を斬る、という剣の腕前と技術は無論の事、尋常ならざる度胸と自信が無ければできる芸当ではない。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

後に続くもう１つの影は、砲弾の軌道を『逸らした』。 手にした薙刀が触れたと思いきや、爆発を招く事も無く放物線を歪める。触れた刃先へ力を籠めるのが早かったり強ければその場で爆砕する事となるし、逆に遅かったり弱ければ軌道は変わる事なく、その身か仲間を犠牲にするだろう。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

どちらも『高等技術』等という区分を通り越し、技能や技術の範疇を超えている。 数え切れない程の人ならざるものを撃ち砕いてきた陸奥から見ても、敵にも味方にもこんな現実離れした業を成し遂げた者などいなかった。想像にすらしていない。

陸奥 @erxtcyvubyvubin

@tiyodadayo なっ！？　そ、そんな馬鹿な事が…！

長門＠指輪 @BIG7_NAGATO1

@tiyodadayo だから言っただろう。 奴らを甘く見るなと

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

驚愕の声を思わず漏らしてから、無意識に姉の横顔を見る。 …。 『喜んでいる』。 『歓んでいる』。 『悦んでいる』。 姉が。長門が。 彼女らが現れ、そしてここを目指して迫ってきている事実を。 姉が。 長門が。

第十五支援艦隊　天龍 @15tennryuu

はっ、つまらねー弾。 長門じゃねぇな。

龍田@GM @GM_tatuta

@tiyodadayo ふふ、うふふっ、あはっ、あははははっ♪

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

間もなく２つの人影が近くにまで到達する。 短い髪と、眼帯。天龍が無感情な瞳で長門と陸奥を睨みつける。 奇麗な髪と、天使の輪。龍田がにこにこと嬉しそうに姉妹を眺める。 軽巡が、２人。 最強と謳われる戦艦とその妹の前に、当然のように立ち塞がる。

長門＠指輪 @BIG7_NAGATO1

@tiyodadayo ふっ、待っていたぞ天龍、龍田！

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

長門が声を朗と上げる。 陸奥に背を向けて。 陸奥に背を向けて、軽巡を見ている。 陸奥の砲撃を無駄にした、軽巡を見ている。

龍田@GM @GM_tatuta

@15tennryuu @tiyodadayo 早くいこ？ つまらなくなんかないもの、ほら、うずうずしてる。ね？ いこ？ 倒しにいこ？

第十五支援艦隊　天龍 @15tennryuu

そうだな。とっとと終わらせないとあいつらが心配だ。 手早く終わらせるぞ。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

龍田が天龍の袖をつかみ、ゆっさゆさと揺する。 わずかに紅潮させた頬と、満面の笑みはまるで子供のようで。 天龍が龍田の腕を離そうとして、できなくて諦める。 冷たく長門達を見据える瞳と、隠そうともしない殺気はまるで狼のようで。

陸奥 @erxtcyvubyvubin

@tiyodadayo くっ…！(ｷﾞﾘｯ （落ち着きなさい陸奥…まだ負けた訳じゃない…。ここであの二人を一片に倒せば良いのよ…！相手は軽巡。一撃当てればこっちのもの…！）

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

陸奥が再度砲を構える。先程とは違い、この至近距離だ。直撃するような事があれば演習をリタイアするだけでは済まないのは想像に難くない。 それでも陸奥は構わなかった。 単純に陸奥は許せなかった。 目の前のこの２人は、微塵も長門と陸奥に畏怖の感情を抱いていない事実が。

龍田@GM @GM_tatuta

@BIG7_NAGATO1 @tiyodadayo あはははっ♪ お待たせ、ハジメるね。

第十五支援艦隊　天龍 @15tennryuu

@GM_tatuta @BIG7_NAGATO1 @tiyodadayo 悪い、待たせた。始めるぞ。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

刹那。 １秒にも満たない極少の時間単位を挟み、陸奥のすぐ目の前で２人の獣が得物を振りかぶっていた。 片方は身体を右に捻って、両手で掴んだ刀を構えている。 片方は身体を左に捻って、両手に握った長刀を構えている。 鏡合わせのように対象の姿勢で、渾身の力を武器に籠めていく。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

血に飢えた虎のような鋭利な瞳が。 玩具を求める童のような無邪気な瞳が。 驕りも躊躇いも罪悪感も慈悲も疑問も常識も理屈も正義も何も宿さずに、陸奥の瞳をまっすぐに見詰めている。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

陸奥は瞳を見開くだけで、動かない。 動けない。 ２人の斬撃が放たれる。 巨大な砲弾すら一刀に断った一撃は、血の花を咲かせる事叶わず、間に割り込んだ長門の両腕で防がれる。