「千の想いを」~最終章 クライマックス3『到達点』~
- mamiya_AFS
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【クライマックス③『到達点』開始】 【介入制限: 序盤不可 二幕第十五支援艦隊サイドのみ 三幕長門同行組のみ 四幕扶桑艦隊組のみ】
2015-04-25 19:33:55『サボ島海域にて、被害を可能な限り少なく南方棲姫を倒したい』という久瀬の願いを実現する事を条件に、艦娘の除名と過去の罪の発露を免れた千歳は、この5日間あらゆる謀策を張り巡らせていた。
2015-04-25 19:50:48まずはその目的を達する為の戦力の構成が難問であった。 現在の鎮守府に於いて最大に制圧力を誇れるのは長門艦隊と扶桑艦隊を組ませる事であろう。が、それでも全滅の可能性が見えていた。ならばどうするか。そこで千歳が久瀬に目を付けられたのだ。即ち『千代田の指揮の元に両艦隊を出撃させる』。
2015-04-25 19:55:01しかしこれはいきなり難問を孕んでいた。 肝心の千代田が自己の才能と能力に気付いてすらいない事が第一に挙げられる。それは同時に周囲からもそう認識されていない事を意味する。 ワールドカップの試合の直前に『この子を監督にするから従え』と少年サッカー選手を挙げて、誰が従うものか。
2015-04-25 19:57:29尚且つ、これはスポーツの試合等ではなく、実際に命の懸かった実戦である。 個々の戦闘能力が高い長門艦隊や、連携を最大の武器にする扶桑艦隊の面々が、土壇場で指示に逆らうのは容易に予想できる。敗戦必至の戦況を覆す指揮というのは、歴史を顧みるまでもなく『奇策』に決まっているのだから。
2015-04-25 20:00:06なので千歳は大きく2つの課題が抱えた。 千代田の才覚を明示する事と、両艦隊が千代田の指示に従わざるを得ない状況を創り出す事である。 そこで久瀬と相談し合い、両方の達成を目指す為、第十五支援艦隊と長門艦隊の演習を行う運びとしたのである。
2015-04-25 20:04:21どこまでも問題となるのは千代田の性分であった。姉に依存し切っている千代田は、千歳が隣にいる限り本領を発揮する事は無い。止むを得ず、演習の直前で千歳はわざと負傷し演習に出られない状態へと自ら陥った。これは裏で動きやすくなるという目的があったのもある。
2015-04-25 20:09:16単に演習を行ってもらえばいいと云うものでもなかった。千代田には能力を発揮してもらわねばならない。それに当たり、千歳は日向の協力を仰ぎ1つの策略を巡らせる。 天龍と龍田が組んだら、間違い無く『長門と陸奥の組に勝ってしまう』。なので天龍には演習を不参加にならない程度の負傷を与えた。
2015-04-25 20:13:02個別の戦闘能力ならば戦艦の2人と軽巡の2人では勝負にはならない。が、組み合わせた結果として見るのなら、互いに高め合う天龍龍田と、その時点では相乗効果どころかマイナスを抱えた長門陸奥では戦局は異なる。 そして千歳の思惑通り、演習は最終的に千代田と長門の一騎討ちとなった。
2015-04-25 20:16:49これにより、千代田の才能の片鱗を戦っている当事者達や周囲に見せる事ができた。更に、長門に『天龍や千代田は、失わせるには惜しい』と思わせる事を成功としたのだ。作戦はあくまで第十五支援艦隊と扶桑艦隊だけであり、長門艦隊には独断で追い掛けてもらわねばならないのだから。
2015-04-25 20:20:21それでも規律を重んじる長門を動かすのは、確実とは程遠い。 だから千歳は演習前から動いていた。自ら悪役を演じ、裏があると匂わす事で長門を始めあらゆる者達に『放ってはおけない』と感じさせたのだ。3つの艦隊のメンバー全員に統一の目的意識を持たせれば、自然と連携も生まれる。
2015-04-25 20:24:29千歳にとっての難問はまだ続く。 第十五支援艦隊の出撃メンバーの構成である。千歳がいては千代田は本気を出さないというのに、千歳が出撃しなくてはそもそも悪役を演じた意味が無くなってしまう。 この矛盾した要素を両立する為にどうしたらいいか。 しかし千歳はやってのけてみせた。
2015-04-25 20:28:57またも日向に協力してもらい、天龍を出撃不能な域にまで追い込む。そうしても天龍の性格と恋慕の念からして、きっと彼女は追い掛けてくるだろうと踏んだのだ。腕を斬り落とすのは完全に想定外ではあったが、この企みもまた成功と言えた。 千歳の計略と信頼通りに、天龍は千歳を潰しに来てくれた。
2015-04-25 20:32:46全てが千歳の思惑通りに進んだと思えるかもしれないが、本人にとっては賭けの連続であった。事実、彼女の予想外の出来事は多く起きている。 最も畏れたのは『自分が天龍に沈められる事』とキレた千代田によって『天龍が沈められる事』である。 『可能性としては大きくある』と千歳は思っていた。
2015-04-25 20:35:51久瀬と共に、深海棲艦を呼び寄せるサイレンを仕込み千歳の謀略はようやく終わりを迎える。 千歳は見事『全員を騙し切ってみせた』。 ここまでやっても犠牲は少なからず出ると予想していたが、結論だけを言うのならば万事全て上手く行ったのである。
2015-04-25 20:42:30千歳からすれば、もう後の事は係わる必要も無いのだが、ここまで来たのならば天龍親子の問題もまともな終焉を迎えてほしいとも感じてしまっていた。なんだかんだで、最愛の妹を愛してくれており、今回が上手く運んだのは他の誰でもない天龍のお陰によるところが大きいのだから。
2015-04-25 20:45:48その天龍に『多くの艦娘達も身を切って協力してくれている』のは知っている。 その千の想いを無駄にもしたくはない。
2015-04-25 20:47:12久瀬の机と懲罰房に仕込んでいた盗聴器からの通信を聞き、千歳は深々と溜め息を吐き出す。 天城とやらが沈んだ時の天龍の状態も聞き及んでいるが、やはり親子は親子か。
2015-04-25 20:50:21隣の夕張に告げ、椅子から立ち上がる。自然と集まる視線を受け流し、会議室の出口へと向かっていく。 木箱を手にした天龍と、ぽけっとした妹へと横目を一瞬投げ掛けただけで他に何も言いはしない。
2015-04-25 20:56:23