「千の想いを」~最終章 クライマックス2『生還者達』~
- mamiya_AFS
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【クライマックス②『生還者達』開始】 【介入制限: 序幕 不可 二幕 第十五支援艦隊のみ 三幕 扶桑艦隊のみ 四幕 長門艦隊+間宮・金剛・響等の特定所属未定キャラのみ】
2015-04-11 20:56:28……。 罰則を犯した艦娘は基本、懲罰房での謹慎を受ける事となる。が、罪状が重いと判断された場合は懲罰房よりも下層に設けられた『厳罰房』に幽閉される決まりとなっている。 自由が利かないだけで意外に住み心地の良い懲罰房と違い、厳罰房は牢獄と呼べる程に暗く厳重な造りであった。
2015-04-11 21:04:34その厳罰房のベッドとトイレしかない狭い空間で、カビ臭い壁に背を預け天龍は片目で鉄格子を眺めていた。居るだけで気が滅入りそうな暗さと狭さは、まさしく牢獄と呼べる。 自分の呼吸音すらはっきりと聴こえるくらいに静まりきった空気の中、天龍は深く溜め息を吐き出す。
2015-04-11 21:08:20過去の、龍田と共に監禁されていた日々が自然と浮かび、ありもしない激痛が走ったような気がする。 残ってもいない傷が疼く錯覚すら覚え、天龍は唇を噛み締めて寒さに耐える。
2015-04-11 21:11:35忘れたくても忘れられない記憶を強引に無視して、体内時計と照らし合わせる。 彼女の呟きに呼応したように、鉄格子の向こうの廊下から、足音が徐々に近付いてきた。 立ち上がり『相手』が姿を現すのを待つ。
2015-04-11 21:14:39片手に食事用のナイフを携えた日向の不適な笑みを睨み返す。打ち合わせ通りの筈だが、と小さく呟き、日向はナイフを改めて握り直す。 意図を察して天龍は数歩後ろへと下がる。
2015-04-11 21:18:37日向の右腕が動いたようには見えなかった。音も無かった。 居合いの達人が右腕を下ろし、左手で鉄格子を軽く押す。途端に、元からそういう仕組みであったかのように鉄の棒が滑り落ち、乾いた音を響かせる。断面は鏡の如く綺麗であり、まさかたった今ナイフで切断されたとは誰も思うまい。
2015-04-11 21:22:05日向が開いてくれた隙間をくぐり抜け、飄々と笑む戦艦娘を横目で睨む。 相手は心外だ、と言いたげに片方の眉を傾ける。
2015-04-11 21:26:06だらりと垂れ下がったまま動かない天龍の右腕を見下ろし、一人で何かに納得して頷かれる。相手にするのも面倒になり、背を向けて歩き出す。 出口に辿り着くまでに警備員を何人か相手するのは確定だが、それ自体は困難ではない。
2015-04-11 21:30:27そう思っていた矢先に、廊下の角の向こうから数人の駆けてくる足音が耳朶を打つ。 一瞬だけ警戒を見せた天龍だったが、彼女の鋭敏過ぎる聴覚は、その足音の主の正体に気付いて戸惑いへと変わる。 同じく察したのだろう日向が、笑みを深めて天龍の横に並ぶ。
2015-04-11 21:33:51「天龍! いたー!」 天龍の予想通りに、千代田が姿を見せ、どうして救出する前から廊下にいるのか等の疑問をすっ飛ばして喜びだけの感情だけで勢いそのままに飛び付く。 豊満過ぎる双方の胸はクッションにもならず、天龍はそのまま背中を壁に押し付けられる形になる。
2015-04-11 21:38:01左腕だけで押しのけようとするも、千代田は離れようとも返事もせずに、今気付いたとばかりに日向を睨むばかりだ。 やがて、千代田に続いて姿を見せたのは千歳や夕張と言った第十五支援艦隊のメンバー達であり、提督までも付いている事に改めて驚く。
2015-04-11 21:41:29抱き締め合ってるようにしか見えない千代田と天龍の間でたわわに弾む肉を見、次いで自分の胸を見下ろして夕張が一人で凹み始める。 包帯だらけの千歳を見やると、肩をすくめられただけだった。 常盤はいつものにこにこ笑顔を浮かべ、伊吹はおろおろと周囲を見回している。
2015-04-11 21:46:35今は脱走者でしかない日向がナイフを指先でくるくると回しつつ出口を目指していく。 千歳が続き、小声で何かを話し合っていた。 しょげている夕張を常盤が慰めてはいるが、普通に豊満な方である彼女では逆効果のようだった。 抱き着いたまま離れない千代田を引きずるようにして、天龍も続く。
2015-04-11 21:52:25やらなければならない事だとわかっていながら、それでも進みたくないと感じてしまうのは、千代田のぬくもりが心地良いからという理由だけではなく。
2015-04-11 21:53:47