諫早湾干拓前後の有明海の漁獲統計と解説

松川・佐々木・羽生(2014)「有明海奥部の貧酸素と諫早湾干拓事業の因果関係の検証」がこの5月に出ました。著者の一人の佐々木さんによる漁業統計の解説は、諫早湾干拓事業によって現地の漁師さんたちが追い込まれている苦境を示しています。食料自給率の低い日本で、漁業資源をこれだけ減らすのは奇妙な話です。開門調査が待たれます。
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飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

松川 康夫・佐々木 克之・羽生 洋三(2014)「有明海奥部の貧酸素と諌早湾干拓事業の因果関係の検証」、『海の研究』Vol.23-3, pp.87-110 こちらで読めます。 kaiyo-gakkai.jp/jos/publicatio… #諫早湾と有明海

2014-06-19 08:52:48
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 筆頭著者松川さんによる解説文もあるのですが、現在こちらはメーリングリストで揉んで書き換え中。拡散のお許しが出たら出します。

2014-06-19 08:54:08
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 共著者の佐々木さんによる解説文は拡散許可をいただきました。佐々木克之「 有明海の漁獲量の推移と松川論文で見る貧酸素化との対応」。以下、【佐々木解説文】として内容を連投します。

2014-06-19 08:59:03
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1【佐々木解説文1】多くの漁民が干拓事業によって有明海の漁獲量が減少したと感じていて、このことを明らかにする開門調査を希望している。裁判では諌早湾漁業の悪化は干拓事業によることを認めているが、(続)

2014-06-19 09:03:02
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 (承前)干拓事業の諌早湾を除く有明海漁業への影響については不明という立場をとっている。 松川論文は、2000年のすこし前から、雨量の増加より前に貧酸素が進行していることと、貧酸素の程度が1980年代より悪化していることを示した。

2014-06-19 09:04:35
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説2】そうであれば、有明海の、とくに貧酸素によって影響を受けると予想される、底層で生活している魚類が干拓事業(1989年開始)と堤防閉め切り(1997年)によって影響を大きく受ける可能性がある。

2014-06-19 09:05:48
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1【佐々木解説3】そこで、既往資料が整備されている1972年以降の有明海漁業の漁獲量の推移から、松川論文から予想される底層に生息する魚類漁獲量の推移を検討した。

2014-06-19 09:09:38
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説4】以下に示すように、貧酸素の影響を受けると考えられる底層系魚類の漁獲量は、干拓事業が開始されて以来、一貫して減少している。

2014-06-19 09:11:43
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説5】タイラギだけ長崎県について示したが、おそらく干拓事業が始まってすぐに長崎県漁獲量が減少し、堤防閉切以後に有明海奥部から島原半島沖の漁獲量が減少したと考えられる。

2014-06-19 09:12:42
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説6】このことは、松川論文で示す、堤防閉め切りの1997年付近から有明海奥部の底層の酸素濃度が減少し続けていることと一致する。

2014-06-19 09:13:34
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説7】 1. 魚類漁獲量の減少 まず魚類漁獲量全体を見る。参考に、瀬戸内海漁獲量と比較してみる。有明海の漁獲量は1972年以降の統計資料がある。

2014-06-19 09:23:56
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説8】魚類漁獲量(図1)を見ると、諌早湾干拓事業が始まった1989年頃から一貫して減少傾向にあり、1997年の堤防閉め切り(点線棒)以後も減少している。 pic.twitter.com/LqT7PRFnQj

2014-06-19 09:24:44
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飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 飯島注:『有明海の制定系再生をめざして』(2005、編集委員・佐々木・松川・堤、恒星社厚生閣)に漁獲量資料の図があ りますが、佐々木さんは今回もう少し整理したとのことです。

2014-06-19 09:27:16
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説9】干拓事業が始まった1989年(図の黒棒)ときの魚類漁獲量は約12000トン、2012年の漁獲量は約3000トンなので、1/4に減少している。

2014-06-19 09:28:42
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説10】同じ時期の瀬戸内海の魚類漁獲量(図2)を見ると、1989年の漁獲量は25.5万トンで、2005年のそれは15.5万トンであった。1972年と比べて減少率((21.6-15.4)/25.5=0.28)は28%で、72%が残った。

2014-06-19 09:29:54
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説11】同じ期間で有明海を見ると、減少率((1.229-0.39)/1.229=0.68)は68%で、1989年時点に比べて32%しか残っていない。有明海の漁獲量の減少率は瀬戸内海のそれの2.4倍倍で、大きい。

2014-06-19 09:30:45
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説12】2. 生態別漁獲量の推移 多々良(1981)は、瀬戸内海の魚類を生態別に以下のように分類している。Aプランクトン食(イワシ類、イカナゴ、イボダイ)、B魚食 浮魚系(アジ、サバ、ブリ、サワラ)、C魚食 中層系(タチウオ、スズキ)(続)

2014-06-19 09:33:32
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 (承前)D魚食 底魚(エソ、ヒラメ)、Eエビ・カニ食(ベントス系)中層(イカ、クロダイ)、F エビ・カニ食 底層(ハモ、アナゴ、ニベ・グチ、その他のカレイ、マダイ、タコ、など)(続)

2014-06-19 09:35:19
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 (承前)G ベントス食(メイタカレイ、その他のエビ、カニ、シャコ、ウニ、ナマコ、クルマエビ、ガザミ)。

2014-06-19 09:36:14
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説13】この分類に基づき漁獲量の推移を見た。 A プランクトン食(図3)・・・1980年代初めまでは漁獲があったが、それ以降減少したままである。 pic.twitter.com/P4iy0SyzZa

2014-06-19 09:38:22
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飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説14】B 魚食、浮魚系:大きく変動していない(図4) C 魚食、中層種:1989年から一貫して減少して、2000年に入って約1/4になってその後の変化は小さい(図5)。 pic.twitter.com/boMSgV6CRR

2014-06-19 09:41:58
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飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説14】D 魚食 底魚(エソ、ヒラメ):1993年から減少して、2000年に入って1/3~1/4の値で安定している(図6)。

2014-06-19 09:43:32
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説15】E エビ、カニ食・・中層:イカ、クロダイ(図7)・・・イカ+クロダイの漁獲量のほとんどがイカの漁獲量(左目盛)。クロダイ漁獲量は右目盛り。 pic.twitter.com/TN7yjk277O

2014-06-19 09:46:25
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飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説16】全体の漁獲量は1990年代前半にピークとなり、その後減少するが、これはイカ漁獲量を反映している。クロダイ漁獲量は1989年から減少傾向となり、1997年以降も減少している。

2014-06-19 09:48:18
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

@a_iijimaa1 【佐々木解説17】イカ漁獲量の大部分は長崎県によるものであり、おそらく有明海湾内ではなく、有明海湾口付近の漁獲と推定している。

2014-06-19 09:49:13