不知火に落ち度はない その11

@yamoto 氏の #不知火に落ち度はない をまとめました。 以下本家より抜粋 【不知火に落ち度はない】 続きを読む
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yamoto @yamoto

だけど遠くて届かない。 俺の身体は、命綱で宙ぶらりんのまま固定されてるんだ。 今から救命胴衣を取りに行く時間もない。 あいつの手がこちらを呼ぶように波間に浮かんでは消えていた。 俺は命綱に手をかけた。 そんとき必死だったんだよな。 #不知火に落ち度はない

2014-07-25 01:38:58
yamoto @yamoto

後のことなんざ知ったことか。 泳ぎには幸い自信があった。 だけど命綱はガッチリ固定されてて、金具を外すのに一苦労だったわけでな。 そしたら、いきなり甲板の上から声がしたんだ。 『大馬鹿野郎! なにやってんだ!』 それはモグリの声だったんだよ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-25 01:42:19
yamoto @yamoto

どういう事だって混乱したわ、あんときは。 そしたらな、気づいたんだ。 波間に浮かぶ手が、一本だけじゃないことに。 そいつらはみんなこっち向けて手招きをしてた。 #不知火に落ち度はない

2014-07-25 01:44:48
yamoto @yamoto

心底ゾッとしたね、あれは。 その後俺はモグリに引き上げられて、思いっきりぶん殴られた。 あいつはな。部屋に最初からいたんだとさ。 だが、俺が出ていったのを見て、おかしいと思ったんだと。 あいつな、寺の生まれで『そういうこと』にちょっと詳しいんだ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-25 01:48:53
yamoto @yamoto

で、後になって分かったんだが。 その海域では飛び込む奴が年間で20人ぐらいいるらしくてな。 海に呼ばれるって話が、海兵の間で語られているスポットの一つになってるそうだ。 俺もまあ、海に呼ばれたらしいってことになる。 #不知火に落ち度はない

2014-07-25 01:55:12
yamoto @yamoto

「っていう落ちのない話だ。お前も見知らぬ手を見つけたら気をつけろよ?」 「司令。それは深海棲艦の話じゃないんですか?」 あっさり否定してくださる。 「ん、もしかしたら変種って可能性はあるかもな」 「そうですか。見かけたら雷撃を打ち込むことにします」 #不知火に落ち度はない

2014-07-25 01:57:06
yamoto @yamoto

何とも力任せな除霊方法を申してくれる副官殿である。 「お前、怖くないわけ?」 「不知火は生きてる相手の方が怖いので。死人ができることはありません」 お前の冷静さにちょっと乾杯したくなったぞ。 「ところで司令。こんな夜中に誰と話を?」 「は?」 #不知火に落ち度はない

2014-07-25 01:59:21
yamoto @yamoto

振り返ると、そこには懐中電灯を持った不知火がいる。 あれ? お前哨戒中じゃなかったっけ。 「通信機まで動かして誰とお話を?」 「え?」 あれ。 ちょっと待て。 俺さっきまで通信機で、不知火と話してたよな。 #不知火に落ち度はない

2014-07-25 02:02:05
yamoto @yamoto

通信機の方を振り返ると、電源は今だオンのまま。 ただ、そこからはノイズが流れているばかり。 バカなと思って、耳に当てると、声が聞こえた。 「また、つかまえそこねた」 背筋が一気に凍るような、そんな低い声だった。 #不知火に落ち度はない

2014-07-25 02:04:11
yamoto @yamoto

「あは、ははは。ははははは」 「司令、何かあったのでしょうか」 「いや、なんつーかな」 うっわー。しつこいのいるんだなあ。 あれから何年経ってるんだか知らないのに。 「不知火、お前塩とか持ってる?」 きょとんとする不知火の顔が、わりとレアだった。 #不知火に落ち度はない

2014-07-25 02:08:05
yamoto @yamoto

今日はそんな日。 戯れに怪談を話してたら、まさかの本物が戻ってきてた日。 あの日の思い出が、けっこーガチだと証明された日。 不知火が持ってきた塩を、司令室の端っこに盛った日。 そんな1日であった。 #不知火に落ち度はない

2014-07-25 02:11:23
yamoto @yamoto

「あ、不知火。現像頼まれてた写真なんだけどさ……」 「ありがとうございます陽炎。何か問題が」 「えっと……捨てた方がいい写真が撮れててね?」 「どれでしょうか」 「ほらこれ。司令だけ撮ってるやつだけど」 「背景にカ級が紛れてますね。報告します」 #不知火に落ち度はない #おまけ

2014-07-25 02:17:14
yamoto @yamoto

「いや。これカ級じゃないと思う」 「では新手かも知れませんね。潜伏に気づきませんでした。他に被害状況がないか──」 「ホントは怖いとかないわよね?」 「……不知火に落ち度でも?」 「ないわ。不知火が居れば怖いモノなしね」 「そうですか」 #不知火に落ち度はない #おまけ

2014-07-25 02:24:41
yamoto @yamoto

と、いうわけで今回は短いですがこれでおしまし。 ちなみにこの話、商船学校の知り合いから聞いた実話をちょっといじったものです。 どこまでが実話か、それは想像にお任せします。 #落ちぬい

2014-07-25 02:25:58
yamoto @yamoto

「モグリ野郎、ちょい頼みがある」 「電話でなんだよ」 「最近憑かれてるぽくてな」 「ご自慢の秘書艦に肩揉んで貰えよ」 「ん?」 「お?」 #落ちぬい

2014-07-25 02:42:19
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