不知火に落ち度はない その12

@yamoto 氏の #不知火に落ち度はない をまとめました。 以下本家より抜粋 【不知火に落ち度はない】 続きを読む
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yamoto @yamoto

「コツは、紙をなるべく濡らさないことだ。斜めから切り込むようにして、椀に入れてみ」 「こう……ですか?」 恐る恐るという感じで、椀を用意し金魚をポイにのっけて入れ込む。 実に初心者丸出しであるが、ポイはちゃんと耐え抜いてくれたらしい。 おめでとさん。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 04:11:40
yamoto @yamoto

その後もう一匹取ろうとするが、ポイはそこで任務を終えた。 ご苦労。お前は良くやった。 「もっぺんやるか?」 「……いえ……これで充分です」 大事そうに。 椀にいる一匹を見つめて呟く。 その顔は見たこともない、神通本来の表情に思えた。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 04:17:56
yamoto @yamoto

本来は何匹かオマケをつけるのだが。 1匹で満足してるようなのでそれだけビニールに入れてやる。 「毎度。じゃまた後でな」 「はい……失礼します」 手に1匹の金魚を獲て。 神通はするりと去っていった。 よし、危機回避成功。 当然今日もボイコットである。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 04:20:40
yamoto @yamoto

そうして、祭りの中の時間は過ぎていく。 じわじわと人が減り始め、目の前の金魚ももう僅か。 目の前にポニーテールの黒髪美女が通りかかった。 色っぽいうなじに、藍色の浴衣。 こりゃ眼福と、視線を尻に持っていこうとして気づいた。 その尻、見覚えある。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 04:29:33
yamoto @yamoto

「司令、どこを見てたんだ?」 「お前かよメスゴリラ」 もうちょっとわかりやすい格好しよう。 危うく騙されて、幸せ感じるところだったじゃん。 「もう少し黙ってればよかったか」 「うっせ。黙ってても気づいてやったわ」 尻で気づいたけどな。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 04:31:57
yamoto @yamoto

「お前もお祭り楽しんでたくちか」 「ああ。駆逐艦面子の引率も終わったからな。自由時間を満喫してるよ」 あー、そいや大勢駆逐艦連中連れてたなこいつ。 頼れるビッグセブンお姉さんというやつである。 連中の財布としても大活躍。 流石の長門であった。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 04:35:21
yamoto @yamoto

その手には食べかけの綿飴があり、頭にはお面が一つ。 あとは焼きそばとたこ焼きのパックが一つずつ。 なるほど充実してやがるな。 「司令、一ついるか?」 「その綿飴をいただこう」 「はい。あーん」 「いや。人前でそれはちょっと」 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 04:38:53
yamoto @yamoto

差し出された綿飴を千切って口へ。 うん。実に安っぽい甘さがある。 指についたぶんもぺろり舐め取り完了。 「折角だ。一緒に回らないか?」 「残念、サボってるのがばれるからな」 屋台の大半は基地の面子だ。 仕事は最後までやりましょう。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 04:41:41
yamoto @yamoto

「それじゃ、陸奥とでも回るか」 「そうしとけ。どうせどっかでナンパされてるぞあいつ」 「もしそうだとしたら、悲劇の種がまた増えてるな……」 少し苦そうな顔をして、相方のことを思い浮かべてるであろう長門。 珍しくこのメスゴリラが振り回される相手なのだ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 04:43:17
yamoto @yamoto

最盛期、っていうか今も最盛期だが陸奥の伝説は凄まじい。 入れあげる男全員が、二股三股当たり前。 ほどよく心中騒ぎが起きるというとんでもない爆弾女である。 火遊びはしないでっていうけど、陸奥は火遊びじゃなくて火の海だものな。 火消しに回る方にもなれ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 04:49:02
yamoto @yamoto

そんなわけで長門と巻き添えを食う俺が、消火係として動くことになると言う。 アレもビッグセブン。戦力としては申し分ないのだが、あれだけはいただけない。 いや、実際いい女なのは認めるぞ。 男運っていうか、星の巡りが致命的に悪いだけで。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 04:51:44
yamoto @yamoto

「それじゃ、司令。がんばれよ」 「お前こそな。綿飴ごっそさん」 ぷらぷらと手を振って別れる。 火消しが必要な事態になってないことを祈ろう。 そして、長門はたこ焼きを『忘れていった』ようである。 冷めちまうから食っておくことにしよう。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 05:00:40
yamoto @yamoto

「そろそろ片付けるとするかね」 客足はとぎれ、金魚の残りも僅かばかり。 バケツに入れて店じまいを開始する。 今年もこの基地祭は盛況なようで何より。 那珂が歌うステージとか、最初どうなるかと思ってたが、今では名物になってるしな。 全く平和である。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 05:13:28
yamoto @yamoto

この後のイベントに併せて、皆移動を開始してる。 俺もさっさと片付けるとしよう。 テントをバラして、水槽の中の水を捨てる。 余ったポイ類は来年のために大事にダンボールにしまい直す。 近くの屋台の面子の手も借りて、店じまい完了である。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 05:17:21
yamoto @yamoto

さて、と。 このバケツを持って、あいつの所へ行こうか。 他屋台の撤収手伝いも終わり、他面子に後処理を頼んでそこへと向かっていった。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 05:22:46
yamoto @yamoto

祭りの入口近く。 赤色の浴衣に身を包んだ、背の低い娘が、プラカードを持って立ってるのが見える。 『花火会場はあちら』との文字があった。 手を上げてみるとこちらに気づいたらしい。 さりげなく手を振って応えてきた。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 05:29:28
yamoto @yamoto

「暑い中案内ご苦労、浜風」 「提督もお疲れさまです。盛況なんですね、このお祭り」 「自治体と一緒にやってるからな。ここいらじゃまあまあでかい祭りだよ」 今回初めての浜風に、赤い着物を着て貰って案内役を任せたのは正解だった。 結構顔を覚えて貰えるからな。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 05:32:00
yamoto @yamoto

「もう少しでシメの花火も始まる。特等席で拝めるぞ」 「それは楽しみです。司令はこれから?」 「解雇されたんで、酒かっくらってくる」 言うとバケツを浜風の足下に置いてやる。 「そしてこれが約束の金魚な」 「ありがとうございます。今度鉢買ってこないと」 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 05:39:24
yamoto @yamoto

「しかし、案外似合うな浜風」 「案外って何ですか。素直に似合うと言ってください」 「素直に似合う」 「もう! そうじゃなくって!!」 おお、怒るな怒るな。 金魚みたいになるのは58だけで充分だ。 「で、どうよ。祭りの一端を見た感想」 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 05:45:04
yamoto @yamoto

「そうですね……難しいですけど……生きてるんだなーって……」 言葉は上手くまとめられなかったのか、そんな言葉が出てくる。 「来年もこうやってできりゃ、言うことないんだがな」 「そうなるように、がんばるつもりなんでしょう?」 うむ、その通りである。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 05:55:49
yamoto @yamoto

「来年はどうすっかな。金魚屋はやったし……」 かき氷、フランクフルト、焼きもろこし。 適当にサボって羽を伸ばせる上、モグリをいじれる仕事が望ましい。 「それでしたら、私焼きそばとか焼けますよ」 「お、そっか。その手があるな」 浜風焼きそば。名物ぽい。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 06:03:19
yamoto @yamoto

「じゃ、その格好で焼きそば焼くか?」 真っ赤な浴衣でコテ二刀流。 見た目としても申し分ない。 「いいかもしれませんね。力帯を結んで……」 ふんふんと頷く。だいぶ乗り気なご様子。 こいつが楽しむ側に回るのはとても望ましい。 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 06:05:21
yamoto @yamoto

「それじゃ、その時はよろしくお願いしますね、司令」 「おうよ。任せとけ」 浜風に焼かせて俺は裏でノンビリ仕様。 モグリが来たら山ほど唐辛子をかけて遊んだりできる。 今から来年が楽しくなってきた。 「それじゃ、近いうちに一度ごちそうしますから」 お? #不知火に落ち度はない

2014-07-26 06:07:11
yamoto @yamoto

「食べたこと、ないでしょ?」 「いや、焼きそばってそんなに珍しいもんでも──」 「そうではなくて。私の焼いた焼きそばです」 「そりゃないが、違いあるもんかね?」 焼きそばはどこでも一緒な気がするが。 「全然違いますよ。楽しみにしておいてください」 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 06:09:02
yamoto @yamoto

えらく自信があるようだ。 料理に自信アリとか、ほんと駆逐艦らしくはない。 ただ、旨いのは事実なので、馳走になるとしよう。 「期待しとくわ。それじゃ、引き続き案内頼むな」 「はい。……あ、司令?」 ん? 「この後、することありますか?」 #不知火に落ち度はない

2014-07-26 06:14:03
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