学術書翻訳の現在:2014年7月
翻訳続き。自分の経験から言うと、翻訳は他人の役に立つだけでなく、大学院生等にとっては、論文や著作をどのようにして書き、文献の引用をする時や注釈をつける時にどういう事に気をつけるべきなのか、そして、そもそも自分の書きたい事を、どのような文章で表現するのかを学習するのにも極めて有効。
2014-07-30 14:21:10補足すると、翻訳は「意味を取る」のは当然で、腕の見せ所は「既にわかっている意味」をどう表現するか、にある。だからこそ問われるのは、外国語能力以上に日本語能力。翻訳の過程で「書き方」を覚えれば、その技術は自分が論文を書く時にも確実に使える。
2014-07-30 14:23:20更に付け加えると、「日本で読まれる」事は、現地での日本研究に大きな緊張感を与える事ができる。自分の経験でも、翻訳の過程で海外の研究者に疑問部分を無数に突きつける事により、様々なコミュニケーションを交わす事が出来た。
2014-07-30 14:27:38
@kanayVc さん(科学史)、@tsujifolyam さん(欧州近現代史)
実際問題というのもそうだが・・翻訳を業績としてカウントしてほしい、するべきなのでは、とは良く思う。前にも書いたが、翻訳すべき文献を自ら選び自ら水準以上の訳を仕上げられる、というのは研究者としての基本能力の一つだと思いますので。
2014-07-30 14:06:13修士課程に入ったころ、まずやったのが自分の専門にしたい分野の露語・英語論文を逐語訳することだった。(別に公刊をもくろんだものではない。)あれは外国語能力、日本語能力、論述能力を鍛えるうえで役に立った・・ような気がする。まあ、あくまで後から思えば、ということですが。
2014-07-30 14:12:48私の個人的体験はともかく、学術水準の底支えのために、翻訳は軽視してはいけないだろう。綿密な翻訳という作業を早い段階でやっておけば、「研究世界ではうまいこと言ったものが勝つ」という類の勘違いをかなりの程度未然に防ぐことができるのではないか。
2014-07-30 14:17:14研究者の業績を評価する際に「独自性」を重視すると、翻訳の大元は他の研究者の業績であって自分では何も産み出していないと見なされてしまうところはあると思う。「研究しない大学教員」への批判として「最近は論文を書かず翻訳しかしていない」というのも何度か耳にしたことが…。
2014-07-30 14:16:04もちろん、この批判の最大のポイントは「論文を書いていない」ことにあるのですが、論文の方が翻訳よりも研究者の業績として評価されることは示していると思います。
2014-07-30 14:19:43@tsujifolyam 翻訳に独自性は十分現れると思うのですが、まあそう言ってもしようがないですね。個人的には、翻訳することをオリジナル業績の形成にうまくつなげる路はありうるし、実際にあると思っています。
2014-07-30 14:21:12@kanayVc 私もそう思います。論文の先行研究レビューに独自性が表れるように、そもそもの翻訳の題材選びの時点でその人の研究者としての独自性がある程度読み取れるのも確かですよね。
2014-07-30 14:29:10@tsujifolyam ただそう見てくれる人ばかりではない・・という厳しいご指摘もその通りかと思います。いやはや。
2014-07-30 14:37:54
中村和恵『日本語に生まれて』岩波書店(@kkkkota さん)
翻訳の大切は、中村和恵さんの『日本語に生まれてーー世界の本屋さんで考えたこと』でも強調されている。 「世界の情報流通の主流を握るヨーロッパ諸言語をほぼまったく使えない人が、日本語だけで諸外国の事情や歴史文化ほか、さまざまな事象や知的活動の成果について、相当の知識を得ることができる
2014-07-30 14:29:22(承前) それがすくなくともこれまでの日本だった。カンナダ語しか読めないカルナータカ[南インドの州]の人に、英語が苦手な日本人学生に開かれているような知的可能性が開かれることは、まずない。カンナダ語だけでは情報は不十分だ。一方、日本では基本的に日本語だけで大学の講義さえほぼ不自由
2014-07-30 14:32:04(承前) なく行える。この非西洋語圏では数すくないーーと数々の旧植民地諸国を思い浮かべてわたしはおもうのだーー言語事情の国で、翻訳の果たした役割は、直接、間接に絶大である。日本語文化が生きのびるか否かは、日本語翻訳の努力をつづけるかどうかにかかっているといっても過言ではないかも
2014-07-30 14:35:12(承前) しれない。翻訳出版の質と量が維持できなくなったら、日本語文化の質と量も維持されなくなるだろう。すぐに読まれる読まれないとか、採算の合う合わないとかいう話ではない。長期にわたるひろい意味での影響が問題なのだ」 中村和恵『日本語に生まれて』pp. 57-8.
2014-07-30 14:37:35
@gakeau さん、@ginnyushijin さん、@okisayaka さん
今翻訳がほとんど業績にならないのは、翻訳しかしない(自分のアウトプットがない)「出羽の守」がかつて主流になってた反動なんだろうけど、あんなに大変で日本の学問にも貢献するものが業績にならないというのもおかしな話である。
2014-07-30 14:34:06日本は翻訳大国として来たけれど、いま新訳ブームの中で、アカデミックな観点からの翻訳(または、既存の訳の批評)が盛り上がってくれたら、と願う。研究者としても若いうちから翻訳すると、原典を精読する体験になるし、訳もこなれると思うし。なにより、学問を享受する立場のひとの喜びになるよね。
2014-07-30 14:40:54これはほんとにそうで,翻訳をした人より時間をかけて原書を精読している人というのはとても少ないわけである。学者が翻訳するのは「精読の手段」でもあったわけだ。
2014-07-30 14:46:59翻訳は業績評価の中に積極的に取り組んでいくべきだと思っている派。グローバリゼーションの時代にはむしろ必須。これまでは似通った言語の話者しかいない西洋中心主義的な基準で業績を判断してたからこそ、類縁性の少ない言語同士の翻訳の知的意義を評価できなかったのではないか?
2014-07-30 14:49:37これはただの思いつきですけど、言語間の「似てなさ」度の距離を数値化して、翻訳の業績に重み付けをすることは出来ないか?(本気でやると言語学?界隈の論争を招きそうだし、やり過ぎると形骸化するとは思うけど…)
2014-07-30 14:51:03
@sakinotk さん(職業翻訳者)
おいしいとこだけ持ってかれて後始末なんてまっぴら的な。単価を先方の20倍にしてくれるなら考えますが。あちらは給料もらってるわけで。 RT @ynabe39: @leeswijzer 大学の先生と違ってプロの翻訳者にはちゃんとした金を払わなければならないことが出版社にとって……
2014-07-30 14:08:40