J・フォン・クリースとマックス・ウェーバー補遺(因果分析の方法論を中心に)

以前もまとめられていた「J・フォン・クリースとマックス・ウェーバー」(http://togetter.com/li/668538)や「toshisato6010氏による「ウェーバーを挟むかたちでの実証性/実定性の転換」という仮説の彫啄過程」(http://togetter.com/li/679576)に関連する一連の書き込みを、個人的な備忘としてまとめました。 冒頭で言及されている書評については、まだ書誌情報が確認できませんでした。
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佐藤俊樹 @toshisato6010

大学行政事務の嵐のなか、この数か月苦闘してきた専門書の書評がなんとか載せてもらえそうで、ほっと一息。論文数本分の時間と労力を投入したからなー。でも、書評だから、もちろん公式の業績にはならない。

2014-08-13 03:21:19
佐藤俊樹 @toshisato6010

ま、学の水準とか信頼性を保持するのは、世の中へのプレゼンの華々しさではなく、もちろんネット上での「冴えた」コメントでもなくww、こういう地道な作業の積重ねだと考えているので。しかたがないのだけど。

2014-08-13 03:21:41
佐藤俊樹 @toshisato6010

関連して、載せきれなかった豆知識をいくつか。

2014-08-13 03:22:00
佐藤俊樹 @toshisato6010

Weberの因果分析の手法はG.Radbruch経由でJ.von Kriesの考え方を取り入れたわけだが、それが分析哲学や統計的因果推測での「反事実的条件counterfactuals」と並行することを最初に指摘したのは、どうやらJon Elsterらしい。

2014-08-13 03:22:20
佐藤俊樹 @toshisato6010

訳書『社会科学の道具箱』で、数理社会学会周辺でもおなじみの人だ。 歴史学派や文化科学の文献だけを読んでるとまず気づかないので、誰が発見したのか不思議だったが、なるほど。分析的マルクス主義の視座のとり方がうまく効いたのかな。

2014-08-13 03:22:39
佐藤俊樹 @toshisato6010

そして、それをWeberの方法論の検討に持ち込んだのがWagner & Zipprian(1985、1986)。この論文ではS.A.Kripkeの固有名の議論を援用して、文化科学的な「個性」概念と反事実的条件の使用が矛盾することが指摘されている。

2014-08-13 03:23:05
佐藤俊樹 @toshisato6010

ある意味、当然な着目ではあるが、文化科学や歴史学派との関連ばかりが強調される日本語圏のWeber研究になれていたので、びっくりした。1985は独語、1986は英語の論文だから、独語が読めなくてもWagner & Zipprianの主張はフォローできる。

2014-08-13 03:23:26
佐藤俊樹 @toshisato6010

それと関連して、v.Kriesの科学論の主著は1886年の『確率計算の~』でもなく、1888年の適合的因果関係論の論文でもない。1916年刊行のLogikである。どうも少なくとも第一次大戦の敗戦までは、今でいう科学方法論をLogikと呼ぶ用法があったらしい。

2014-08-13 03:24:33
佐藤俊樹 @toshisato6010

Weberのいわゆる「マイヤー」論文の正式題名も「文化科学の論理学の領域における批判的研究」で、なぜLogikと称するのかが疑問だったが、それも理解できた。 この著作のなかでv.Kriesは、Rickert流の自然科学/文化科学の二分法への批判も展開しているのだが、

2014-08-13 03:25:13
佐藤俊樹 @toshisato6010

そこで彼は、法則定立的な科学(=「自然科学」)とはinduktivな、個性記述的な科学(=「文化科学」)とはregistrierendな手続きだといったん仮留めしている。Wagner &...

2014-08-13 03:25:59
佐藤俊樹 @toshisato6010

あと、Wagner & ZipprianはLuhmannのシステム論への批判も書いていて、Luhmannも反論を寄せている。Zeitschrift fuer Soziologie誌。A.Nassehiも後で首を突っ込でいて、続きもあり、一つ一つは短いがちょい豪華な論戦。

2014-08-13 03:27:08
佐藤俊樹 @toshisato6010

主題は自己産出系の同一性....うん絶対気になるねよ、ここww。固有名の議論とか知っていたら、なおさら。 中身を追跡する余裕は全くなく、完全なぱらぱら読みだが、にやにや笑ってしまった。でも、正直、羨ましくもあった。

2014-08-13 03:28:38
佐藤俊樹 @toshisato6010

WeberにせよLuhmannにせよ、方法を論理的に論じるのであれば、それなりの基礎知識はあらまほしきだから。日本ってやっぱり極東の田舎だなあと(もちろん自分自身もふくめてww)感じた数か月でもあった。卑下する必要はないが、事実は事実。夜郎自大は自滅への早道である。

2014-08-13 03:30:10
佐藤俊樹 @toshisato6010

そうそう、v.Kriesは今は生理学者と統計学者として知られているけど、KantやGoetheに関する著作もあって。なかなかに化けものである。当時の独語圏での知の布置がそういうものでもあったのだろうが。

2014-08-13 03:30:37
佐藤俊樹 @toshisato6010

それをふまえて、Marianneの伝記のv.Kries関連の叙述を読み直すと、新たな面がみえてきて。また楽しめる。

2014-08-13 03:31:04
北田暁大 @a_kitada

@toshisato6010 そうなんですね。日本だと浜井修さんや野本和幸さんがウェーバーの因果分析を分析系の土俵にあげてた記憶がありますが、手元にないんでエルスターが挙がってたか、ちとわかりません。エルスター論文当たってみます。

2014-08-13 04:28:02
佐藤俊樹 @toshisato6010

@a_kitada おーありがと。野本和幸さんとかだと言及しおられそう。助かります(^^。  文化科学の論法と少しつきあって、Fregeの気持ち、よくわかりました。

2014-08-13 04:46:48
佐藤俊樹 @toshisato6010

あ、Wagner & ZipprianはJon ElsterのLogic and Societyを(独語訳で)参照してます。本郷の文学部図書館から借り出して確認。そこでは特に誰かを引用していないようだけど、他の著作や論文は全く読めず。もっと前にも誰かいるかもしれない。

2014-08-13 04:53:22
佐藤俊樹 @toshisato6010

【続き】kitadaさんに教えてもらい、浜井修さんの『ウェーバーの社会哲学』を久し振りに読み返す。うーむ....見てるものはそんなにちがわないと思う。でもだからこそ「適合的因果関係」「法則論的/存在論的」「客観的」というv.Kries由来の術語が、v.Kriesを参照せずに、

2014-08-14 04:30:17
佐藤俊樹 @toshisato6010

独自に解釈されていることには強い違和感、というか議論が妙な方向へ引きずられていく感じを覚えた。 一方、反事実的条件との並行性を最初に指摘した人については、新たな手がかりが。Elsterよりさらに遡る可能性がありそう。

2014-08-14 04:34:39
佐藤俊樹 @toshisato6010

あと、v.Kriesが無視されやすい理由を、一つ新たに思いついた。Kniesと混同されやすいからではないか。J.v.Kriesは生理学者で統計学者でFreiburg大学教授、K.G.A.Kniesは歴史学派の経済学者でHeidelberg大学教授だ。 二人はほぼ一世代ちがうし、

2014-08-14 04:35:44