「千の想いを」~番外編・天城がいた頃/夏の日(#1)~
- mamiya_AFS
- 1030
- 0
- 0
- 0
錆の浮く管がいくつも剥き出しになっている廊下を赤城とその姉が歩く。 カンカン、という足音が反響を繰り返し、どこまでも届くかのようだ。 工廠の屋上に設けられた空母娘の練習場に向かっているのだが、今日はエレベーターが修理中らしく、階段を上っていく必要があった。
2014-06-22 16:26:58問題なのは、この施設は増設と改造を度々行っている関係で、まっすぐ屋上に伸びている階段が無い事である。1つ階を上がっては移動する、を何度も行わなければならない。 自信満々で歩いていく天城の案内がなければ、赤城は辿り着く事もできなかったであろう。
2014-06-22 16:28:40後にいつでも使えるスペースとして開放されるが、まだ空母の装備は研究段階であり、ちゃんとした手続きを行った者しか立ち入る事が許されていなかった。 先程許可をもらった赤城は、天城に言われるがままにつき従っている。
2014-06-22 16:30:39姉妹揃って何かの冗談みたいな量の食料を腹に詰めたばかりだというのに、足取りは重さを見せない。天城が軽快に縛った黒髪を揺らし、妹はきょろきょろとする事で長髪を揺らす。
2014-06-22 16:35:14@amagisane @tiyodadayo ううっ……、結果的にはそうでしたけど……っ もう少ししっかり書いてくれてたらすぐに行けたのに……
2014-06-22 16:35:17『赤だからすぐわかる』。確かメールにはそんな事が書いてあった気がする。 だがいまだに意味はわからなかった。建物はどこにもそんな着色はされていなかったはずだ。 赤城は首を傾げるしかない。
2014-06-22 16:37:38エレベーターが使えない以上階段から階段へと繋がる通路は職人や艦娘達が意外と多く通っている。だというのに赤城にとって恥ずかしい事を言ってから大声で笑われるのは、彼女を真っ赤にさせるに余る行為である。 実際、通路を歩く人達の多くが振り向いて姉妹を見やった。
2014-06-22 16:44:47昔から姉はこういう所があった。赤城に謎かけのような意味深な言葉を投げ掛けては、妹を困らせそれでも結果的にちゃんと道は遠回りながらも示してくれている。その行程と結果のほとんどに赤城を辱める部分も含まれていたが、先読みされているという感覚は常に感じていた。
2014-06-22 16:49:35階段の前で天城がきびすを返し、奥まで伸びている通路を進んでいく。 「花を摘む」や「用を足す」等の表現を使わない辺りにも天城の開けっぴろげの性格が見て取れる。 食堂を出る際に済ませておいた赤城は言われた通りに待ちぼうけた。ここまで来ると見える範囲にも人の姿は見えない。
2014-06-22 16:52:41黒の薄手のセーターに同色のスカート。長い両足と切れ長な『両目』が奇麗な女性だった。 何か大きな紙袋を右脇に抱えている。
2014-06-22 16:56:57@AC_akagi @tiyodadayo 許可はもらっているの? どこの艦隊? …あ、あー。もしかして今日からうちに加わるっていう子かしら? 赤…ギ、だっけ?
2014-06-22 16:58:32ぱちくりと金の瞳とグローブをはめた手が動く様は、どことなく可愛かった。雑なようで、どことなく同じ貴族階級の人間だけが持つ気品を感じさせる。…今はもう貴族階級じゃないか、と思い直す。
2014-06-22 17:01:02@AC_akagi @tiyodadayo はいはい、わかったわ。思ったよりも早く来たのね。 私は天龍、まぁ貴女の先輩に当たるかしら。よろしくね。
2014-06-22 17:02:03紙袋を左側に持ち直し、笑顔で握手を求めてくる。 天龍。確かに最初にもらった書類の中に、同艦隊にその名があったと記憶していた。
2014-06-22 17:03:45