「千の想いを」~番外編・天城がいた頃/夏の日(#7)~
- mamiya_AFS
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【『千の想いを』解シナリオ『天に願いを』番外編 赤城の過去編『天城がいた頃/夏の日』クライマックス『天城がいた頃』開始】 【介入制限:前半間宮のみ 後半赤城、金剛、最上、龍田解禁】
2014-11-01 14:12:03間隔無く風を裂く弾幕の隙間を縫って、天城が波を滑る。自らの意思で操る数機の艦載機が彼女のすぐ傍を追従し、時に散開しすれ違い様に異形の怪物共へ火薬の雨を落としていく。装甲を破壊し身をよろけさせた所を、水飛沫に隠れて接近した間宮が単装砲で『殴る』。振り下ろしてから始めて引き金を引く。
2014-11-01 14:17:53ゼロ距離で放たれた砲弾が既に瀕死である敵へのとどめとなった。飛び散る金属混じりの肉片と体液と海水と炎から逃れつつ、間宮が横目で天城の位置を探る。相方は既に次の獲物へと向かっており、息をつく間すら惜しく武器を肩に担いで間宮も動き出す。 たった2人で敵の艦隊を蹂躙していく。
2014-11-01 14:22:16海面すれすれの砲撃に天城が波を蹴り、高く跳び上がる。それを隙と見た残り2隻となった深海棲艦は照準を上げる。躊躇いなどあるわけのない攻撃は、宙の天城へとまっすぐ突き進む。空中にいた経験の無い怪物でも、知っていた。いかに機敏な艦娘と言えど宙で方向転換できない事を。
2014-11-01 14:25:52間宮が顔を上げると、水飛沫を纏わせた天城が宙で狙い撃たれているのが見えた。戦闘経験のある者なら一目でわかる。 回避不可能。 戦艦だろうと駆逐艦だろうと、例え天才だろうと直撃は免れないコース。 それでも間宮の顔は落ち着き払っていた。表情は欠片も天城の身を心配していない。
2014-11-01 14:28:21事実、天城も楽しそうな子供の笑顔を浮かべたままで焦燥を見せてはいない。 彼女を挟んだ位置にいる2機の艦載機がきらりと光る何かを射出する。間もなく直撃する、その刹那のタイミングで天城が『真横へと』移動した。 何も存在しない空中で、見えない足場にひざを軽く曲げてから身を跳ねさせた。
2014-11-01 14:31:09回避不可能な攻撃をあっさりと逃れた天城が、そのまま見えない足場を経由して自らが航空機でもあるかのように空から生き残りへと迫る。彼女が跳ぶ直前には2機の艦載機が細かく光を跳ね返しているが、奴らに見えていたかはわからない。見上げる、という行動に慣れていない怪物の死角から間宮が動く。
2014-11-01 14:34:33間宮の接近にいち早く気付いた重巡チ級が振り返り、砲口を間宮へと向き直させようとする。このまま直進すれば殴る前に撃たれるだろう。それでも間宮は減速しない。何故なら、彼女の相棒は天城だからだ。 それを上から見下ろしていた天城が傍の艦載機をチ級の方へと加速させる。
2014-11-01 14:37:452機の烈風がチ級の頭上でまたきらりと輝く何かを射出した。爆薬の類であればもう眼前の間宮にも被害が出るだろう。が、それは爆発を起こすわけでもなく、ただ、チ級の身体を『固定させた』。 ぎちっ、とでも聞こえてきそうな程不自然にヒト型に近い怪物が微妙な姿勢のままに固まる。 間宮は悠々と。
2014-11-01 14:40:31大きく振りかぶり、隙だらけのその胴体へと鉄の塊をフルスウィングする。普通の人間ならば持ち上げる事すら叶わない重い重い物体であるその一撃に、いかに頑強な深海棲艦であろうと耐えられはしない。 衝撃の直前で拘束が解かれたものの、回避も防御も間に合うわけがなかった。
2014-11-01 14:43:42戦闘開始からわずか10分すら経っていない。 残る1隻も容易く沈めた天城が傍らに降り立ち、ようやく間宮が深く息を吐き出す。流れる汗が前髪を額に張り付かせ、うなじを流れていく。細い首のラインとあいまり艶めいているが、いかんせん背景は炎天下の海洋であり、見ているのも天城だけだ。
2014-11-01 14:47:57そう、汗だけだった。 血液は一切間宮自身も割烹着も汚していない。火傷はおろか、焦げた跡すらどこにも見当たらなかった。傍らの天城は小破状態だというのに。 飛ばしていた艦載機を回収している天城は、それを何も不思議と思っていない様子である。
2014-11-01 14:50:21回収を終えた傍から矢の形状をした射出具に航空機を装填していく天城の手元を見詰め、間宮がしみじみと相方の天才振りを理解する。前線を離れてからしばらく天城の戦闘を見ていなかったが、当時既に限界値だろうと思っていた彼女の強さが更に鋭くなっている事に驚くしかない。
2014-11-01 14:53:34@amagisane @tiyodadayo お疲れ様です、天城さん。にしても本当にどうしたんですか?いきなり戦いに出るだなんて…
2014-11-01 14:52:27天城の専用航空機『銀星』は特殊な装置を内蔵している。先に電磁石の機能を持つ分銅を極細ワイヤーで発射できるのだ。これにより、艦載機同士をワイヤーによって線でつなぎ、そのワイヤーを足場にしたり敵の拘束に用いたりして戦う事ができる。あの空中機動やらは、これを用いているのだ。
2014-11-01 14:57:31口を開けば嘘ばかり。それでありながら、天城の行動は全て明確な目的を伴っている事を間宮は知っている。 火薬兵器を積むよりもローコストでありながら、威力はご覧の通りだ。もっとも、扱うのが天城だからこそであるのも言うまでもないが。普通の空母では扱い切れない程の精密な操作が必要でもある。
2014-11-01 14:59:58銀星の補填が済んだ天城が笑む。間宮がわずかに驚きに眉を上げる。 天城が顔を逸らしたので、表情をよく見ていなかった。何か。何かに違和感を感じた。それが何かを考える前に。 2人が顔を同時に同じ方向へと向ける。
2014-11-01 15:02:42