「千の想いを」～番外編・天城がいた頃/夏の日 事件編 前編(#2)～

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

【『千の想いを』解及び番外編　赤城の過去話『天城がいた頃/夏の日』　事件編　開始】

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

朝を迎え、赤城が目を覚ますと一瞬ここはどこだと考えてしまった。寮で割り当てられた部屋だとすぐに気付き、目をこすりながら起き上る。向かいのベッドでは姉が女性らしからぬ身だしなみとポーズで寝息を立てていた。起きる気配は無い。 床を埋め尽くす大量の荷物の隙間に足を下ろす。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

赤城自身の荷物も他の新人より多いのだが、それでも部屋にある分の半分以下でしかない。ほとんどは天城が昨日まで使っていた部屋から運んできた荷物の一部である。 なんでも間宮、という艦娘と相部屋だったらしいのだが、赤城が着任するに当たってこっちに来てくれたらしい。

正規空母赤城 @AC_akagi

@tiyodadayo 姉さんは昔から寝相は悪かったからなぁ…… 荷物も…片付けないと……

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

昨日の事を思い出す。訓練と銘打ってはいるが姉と遊んだ感覚でしかない時間を過ごしてから２人で晩御飯を食べ、この部屋へと初めて足を踏み入れた。天城は用があると言ってどこかへ出掛けていき、疲労が溜まっていた赤城は姉が戻ってくる前に爆睡し、今目が覚めるに至る。

正規空母赤城 @AC_akagi

@tiyodadayo さてと…、今日の予定は…っと……

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

机の上にある書類の束を数枚めくる。これによると、ドッグに行き生体データを色々と取らなければいけないらしい。艦娘として必須となる治療の為に登録しなければならない事が沢山あるのは研修で何度も言われた事である。 艦隊の旗艦である高雄が迎えに来ると言っていた時間まではまだ少しあった。

天城 @amagisane

@tiyodadayo むにゃむにゃ。おばちゃーん、肉が生だよこれ～…。すぴー。

正規空母赤城 @AC_akagi

@tiyodadayo ううん…、姉さん起きないなぁ…… ………、おなかすきました…

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

昨日の今日で食料の用意が何も無く、元来お嬢様である事も加わりこの寮の部屋の中で何をどうしたらいいのか皆目見当がつかなかった。 と、常人なら気付かないだろうが、甘い香りがわずかにするのに気付き、周囲を見回す。 ある。間違いなく、ある。 この部屋のどこかにパンがある。

正規空母赤城 @AC_akagi

@tiyodadayo こ、この香りは……っ

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

パジャマのままふらふらと立ち上がり、荷物の山へ鼻を近付けつつ移動していく。 わけのわからない玩具ばかりの天城の荷物の中、遂にそれを引っ張り出す。 『間宮』とマジックで可愛く書いてあるバスケットを開くと、昨晩焼いたばかりであろうメロンパンが２つ、乾かないように丁寧に包装されていた。

正規空母赤城 @AC_akagi

@tiyodadayo ううっ……、美味しそう…… でも……、姉さんのものだし……… 勝手に食べるわけには……(しゅん

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

ぶんぶんと首を振って欲望に耐える。その折に、中に折り畳まれた１枚のメモ用紙も入っている事に気付く。『妹ちゃんへ』と書いてある。一瞬躊躇ってから紙を開くと、良かったら食べてという旨と、これからの生活頑張ってという意味の文章が綴られている。端のこんにゃくと思われるイラストが気になる。

正規空母赤城 @AC_akagi

@tiyodadayo こ…、これは……っ で、でも…、せめて姉さんに一言…言った方がいいかなぁ……？

天城 @amagisane

@AC_akagi @tiyodadayo ん…？　おはよ、赤城。どしたの…？

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

妹の想いが通じたのか、天城がもぞもぞと動き、しょぼしょぼの目をこすりながら赤城を見上げる。ぼっさぼさになった髪が「ひゃっはー」とでも言いたげであり、別人に見えた。

正規空母赤城 @AC_akagi

@amagisane @tiyodadayo あっ…、姉さんっ おはようございますっ これ、頂いてもいいですかっ？

天城 @amagisane

@AC_akagi @tiyodadayo んー？　おう、食べな食べな。赤城用に俺が頼んだ奴だから…。 うーん、おやすみ。　Zzz．．．

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

答えるや、ぼふ、っと枕に頭から突っ込みすぐに寝息を立て始める。 記憶とは異なる姉の朝の弱さ振りに目を丸くしていた赤城ではあるが、許しを得てメロンパンの自由を得た喜びが勝った。 バスケットをテーブルに置いて、包装紙を丁寧に開く。ふわ、っとした甘い香りが鼻腔をくすぐる。

正規空母赤城 @AC_akagi

@amagisane @tiyodadayo やったぁ♪ ふふっ、頂きます♪ って…、姉さんまた寝ちゃった……

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

かじりつく。焼いてから時間が立っているというのに、外はさくっと、中はしっとりとしていて、しつこさの無い上品な甘さが広がっていく。 究極だ。 このパンを焼いた間宮という人物は全く知らないが、天才だと赤城は確信した。 感動に涙すらあふれそうだ。

正規空母赤城 @AC_akagi

@tiyodadayo 美味しいです～♪ 間宮さん…、会ってみたいなぁ……♪

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

ほとんど一瞬で２つのメロンパンを平げた赤城が、上機嫌で着替えを始める。 生体データを取るにあたって簡素な服でいいと記されてはいたが、この赤い戦闘着しか衣装を用意していなかった。 胸当ては流石に無しで、鏡を前に色々とチェックを重ねる。

正規空母赤城 @AC_akagi

@tiyodadayo よし…、これで………良いかな…？