四大聖戦:第一戦闘フェイズ【巨大樹の間】

抗いしは瑞風の勇者 @wind_he_ro 対するは徒波の魔王 @fileWoz
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【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

「すげぇ」 光が無い。なぜなら樹がある。生ある樹。養分水分が枯渇しきりカラカラに乾いた樹ばかり見てきた少年には、光無くとも眩しい深緑が沁みる。 「魔王が殺せれば、世界はこんな風になるのかな」 生命満ち充ちる森林となれば、飢える事などないのだろう。

2014-09-29 00:31:05
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

砂に埋む樹根を掘り起し、奪い合って細々と生きるのは厭だった。少年だけでなく。母も、父も、同じ。文字通り木の根を噛み浅ましく生きるのは嫌だった。 「僕に魔王を殺すチカラがあるっていうなら、僕は戦う。父さんにも母さんにも、もうあんな生活してほしくない。僕だってしたくない」

2014-09-29 00:31:27
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

拳を、握る。少年は自らに与えられたチカラが分からない。その名のみ知っている。 「【黒白ノ南風】――どうやって傷つける?どうやって殺す?」

2014-09-29 00:31:39
徒波の魔王 @fileWoz

「ふむ」 扉を開けた先。広がる鬱蒼とした樹々の圧力に、男が最初に漏らした言葉はそれだけだった。 「陽が届かねぇ程の樹の密度、イイねぇ人間がいなくなればこんな光景が生まれるかもしれない」 顎に手を当てくつくつと不敵に嗤う。段々と魔王としての感情が昂ぶってきた。

2014-09-29 06:56:47
徒波の魔王 @fileWoz

「いっっっでぇ!うわくそ枝か!貴様枝このくそ野郎!」 しかし、魔王としての威厳もそうは続かない。一歩歩けば木々から飛び出した枝が徒波の首筋を傷付ける。 そしてまともな外傷にもならぬそれを、男は騒ぎ立てる。 もし敵などがいれば、居場所がばれてしまうだろう。

2014-09-29 07:03:14
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

パッと顔が上がる。誰だ?――心当たりは一つだけ。魔王だ。噛みしめる歯が軋む。 「――僕は瑞風!平穏な世界を取り戻すべく女神の名の下に推参した勇者!お前は――誰だ」 憎悪が込もる。微かに風が流れ始める。

2014-09-29 09:56:12
徒波の魔王 @fileWoz

木を分け枝を分け、声の元に近付く。 堂々とこちらを呼ぶ声に導かれ、徒波は辿り着く。 「俺様の名は徒波の魔王。お前らが生きる道を駆逐し、俺様たちの生きる道を切り開くもの」 風を吸い込む。樹々を攫おうとした風は何処か美味しい、と微笑む。 「お前が勇者か、女神サマはなんとまぁ」

2014-09-29 11:30:22
徒波の魔王 @fileWoz

憎悪の篭った声を響かせる主を、勇者と名乗る彼をじろりと睨み付ける。 「まだ餓鬼じゃねえか」 嘆息。やれやれと首を振り肩を竦める。

2014-09-29 11:30:35
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

少年の胸で憤怒が膨れる。子供と謗られた怒りではない。極限の生に於いて、じりじりと山積させてきた感情の防波堤が瓦解せんとしている。諸の辛酸の根源を前に、誰が冷静で在れようか?それも、魔王も称した通り、まだ年端もいかない子供が。

2014-09-29 20:30:53
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

「子供で何が悪い。言っちゃえば、こんな子供でさえ殺意を向けられるくらいの事を君たちはしてるんだよ?報いを受ける覚悟も当然できてるんだよね?そうじゃなきゃこんな事できないよ?」 突風に飛ぶ木の葉が皮膚に叩きつけられて痛い。限界まで開き憎悪を滾らせ凝望する目が痛い。

2014-09-29 20:31:01
徒波の魔王 @fileWoz

突風。凡そ勇者の力というものだろう。そこまで筋肉の付いていない徒波は飛ばされそうな身体を堪える。ローブに付いた羽飾りは千切れかけ、露出している顔や首元に、突風に煽られた枝や草が槍や刃物と化し襲い掛かってくる。 「いっでぇな……」 何時ものように声を荒げず、苛立つように呟く。

2014-09-29 22:18:01
徒波の魔王 @fileWoz

「報い、ねぇ。それは今お前達が虐げられてるから言えるセリフじゃあ、ねえのか」 一歩踏み出す。少年の方へとジリジリと脚を擦り寄らせる。風などものともしていないとばかりに堂々とした出で立ちだが、実際には違う。なんとか、踏ん張っているだけだ。 「俺様の仲間はお前らに傷付けられた」

2014-09-29 22:18:07
徒波の魔王 @fileWoz

経緯や理由など男は知らない。けれどその事実だけは知っている。 「俺様は心が広いんでな、お前らを滅ぼそうとしてるだけに留めているけどな」 突風の中、耳に小指を突っ込み掻き回す。取れた汚れは風に流され後方へ。 「自分達だけ被害者面してるやつぁ滅ぼすよりも苦しい目に合わせてやりてえ」

2014-09-29 22:18:11
徒波の魔王 @fileWoz

勇者に向かって、手を伸ばす。その翡翠の瞳が見つめる先は彼の後方。 「【浅薄】のカース」 僅かに、手が光る。瞬間、勇者の背中に大人の頭ほどの泡が二つ、現れる。 其れらは荒れる風に流され少年に襲い掛かる。 「それ、凄え簡単に爆発すっから。触ったらすぐボン、だぜ」

2014-09-29 22:18:17
徒波の魔王 @fileWoz

その代わり、威力といえば殴られたような痛みが走るぐらいで、大した威力はない。 細かな刺激で破裂するが、その実威力は大した事はない。まさしく徒波を現している。 果たして風に煽られるそれらを、勇者は避けられるか魔王らしく腕を組み観察する徒波。

2014-09-29 22:18:58
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

爆発物!?振り返る。背後で浮遊する泡に危険を察知し、前方に飛んで距離を取る。前転の勢いで体勢を立て直す。――チカラの使い方がよくわからない。今の風もどうやって起こしているかわからない。聊か、風が湿り気を帯びてきた、気がする。 轟と風が悲鳴を叫び始めた。

2014-09-30 03:05:42
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

嵐の前日はこんな風が吹いている。風が曇天を雨を運んでくる。少年は閃く。これは【梅雨を運ぶ風】だ。チカラの一端の理解に至ったその瞬間から、ぽつぽつと上空から雫が落ちだした。徐々に徐々に雨足は強くなっていくことだろう。茂る樹葉の頭を垂れさせ、地をぬかるませていくだろう。

2014-09-30 03:05:47
徒波の魔王 @fileWoz

「ま、そんくらいじゃねえとな」 前方に転がり、回避される。行き場を無くした爆発のエネルギーは空中に霧散する。 ーー風が、唸った。 天候がいきなり切り替わった、とでも言うのが正確か、少なくとも徒波にはそうとしか捉えられなかった。 急に湿り気を帯びてくる風。

2014-09-30 06:16:18
徒波の魔王 @fileWoz

その変化は、すぐに現れた。頬に、ポツリと水が一粒弾ける、 「うっわてめぇ俺様のブーツが汚れるじゃねえか!」 叫ぶ、急に降り出した雨はざあざあと音を立て周りを責めたて、地面の質を変えてしまう。 泥濘に気を取られ一瞬転びそうになるが、すぐさまその顔は不敵な笑みをたたえ始める。

2014-09-30 06:37:29
徒波の魔王 @fileWoz

「実はよ、お前らにも恐らくある様にな、俺様達にも属性ってものがあるんだ」 手を翳す。またもや狙いは勇者の元、その周りに。 「この俺様は水だ」 勇者の周りに、泡が浮かぶ。先ほどよりも大きく、数も六つ程だ。そして何より、落ちてるくる雨粒の刺激で、間も無く爆発するだろう。

2014-09-30 06:38:16
徒波の魔王 @fileWoz

コントロールの都合上、泡は相手を取り囲む様にしているがその頭上には泡がなく隙になっている。瞬時に飛べばあるいわ避けられる筈だ。 「このあとどんなことが起こるのかは知らねえがよ、俺様を倒してえってんならこんな天気やめた方が良いぜ。周りに水がある間は負けねぇ」

2014-09-30 06:38:32
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

ーー雨だ。激しい降雨に最も驚いたのは降らせた少年本人だ。雨なんて、何時ぶりだろう。此の雨が故郷に降れば如何程の人々が助かるのだろう。滴る空の泪に目を奪われ、少年は一時戦いを忘れる。それが隙になる。 少年が我に返る頃には手遅れだ。泡沫が弾け飛ぶ。

2014-09-30 15:03:32
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

目の前の爆発から距離を取ろうとし、背後の泡が炸裂する。背を強かに打擲される。貧相な少年の身体は憐れに吹き飛び、顔から泥土の中に倒れた。 ーー痛い、けどこれくらい。食べ物を取り合った大人たちに殴られたときに比べれば。 身体の苦痛など幾らでも堪えられる。これまでも堪えてきたのだから。

2014-09-30 15:04:59
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

奴は【水の魔王】と言った。世界の水源たる海を澱ませた張本人。水が無ければ生き物は生きられない。人のみならず、どれだけの生物の怨みを背負っているだろうか。

2014-09-30 15:06:11
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

ーー瑞風。僕に与えられたチカラはどんなもの?【黒白ノ南風】はどんなチカラ? ーーとある地では、黒雲を運び梅雨告げる季節風を黒南風と呼び、また黒南風が連れてきた梅雨を振り払い夏の到来を告げる風を白南風と呼び習わす。 夏は、梅雨に水を得た生命が、花開く季節。

2014-09-30 15:08:24
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