rsbs日誌#35

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　ハヂマリ。

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#rsbs日誌　物々しい風体の巨大で白い建物が其処にはあった。のっぺりとした壁はしかし、所々何物かによって破壊された様な痕跡が点在していた。「いつ見ても嫌な代物じゃのう…」身長が５尺にも満たない、第二種軍衣を身に纏った少女がつまらなさげに呟いた。名を比良坂巴と言う。

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#rsbs日誌　「提督ー…此処、怖い…」軍衣の裾を掴みながら護衛として連れてこられた舞風は小さな少女…提督と呼んだ比良坂にぼやいた。「此れでも此処はかーなーり、ホワイトなんじゃよ」「嘘だぁ…そんな冗談は壁に塗ったペンキだけにしてよ…」舞風はそう言うが、提督は首を振った。

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#rsbs日誌　「ここ、一般公開しとるんじゃよ」「…なにそれ、テロリズムの標的になっちゃうじゃん」「じゃから、ああ言うのが在るわけじゃ」比良坂が指差した先には装甲を施した帰還砲銃座や重々しい重戦車。そして何人もの重武装が施された艦娘と人間が周囲を守っていた。

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#rsbs日誌　「ま、ともあれ入るのじゃよ」そう言いながら比良坂はスタスタと門へと近付いていった。「帝国海軍艦娘提督、比良坂巴である。こちらの所長殿に招かれた。書簡をゆっくり取り出すゆえ、見守って欲しい」「良いだろう。ゆっくりと出せ」警備隊長であろう天龍が許可を出した。

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#rsbs日誌　ゆうるりと、宛らストリップの様に時間をかけて懐から書簡を取り出し、比良坂は警備隊長らしき天龍に手渡した。「所でわしと護衛のこの子なんじゃが、自衛用の武器を持っておるんじゃが」書簡を確かめ終えた天龍が顔をあげて眉を潜める。「悪いが規則だからな。置いていって貰う」

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#rsbs日誌　「まぁ、仕方がないの」そしてガチャガチャと幾つもの武器を比良坂と舞風は取り出し、警備隊の面々を辟易とさせた。「お前ら、武器商人か何かか？」「ただの提督と艦娘じゃよ」「ただの提督と艦娘が拳銃とナイフをそんなに持ち歩くかよくそったれ。おい！追加のケース持ってこい」

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#rsbs日誌　何処に隠し持っていたのか分からない大量の護身武器を警備隊に預け、漸く二人は巨大で物々しい白壁の建物へと踏み入れた。「比良坂殿。お待ちしておりました」「やぁ所長殿。相変わらずじゃな」背の高い、モノクルをかけた品のよい男の老人が義手で比良坂と握手を交わした。

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#rsbs日誌　「して、研究のほどはどうかね」「悪く有りませんな。人体改造由来にせよ、人造人間にせよ、最近は酷い発作や適合不和も減っていますから」老人から手渡された書類を読みながら比良坂は歩く。「ほぅ…確かに順調じゃな」「今は整備調達をローコストに、と言う研究をしとります」

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#rsbs日誌　「悪くない命題ではあるが、それでスペックが落ちたのでは話にならんぞ？安かろう悪かろうになる」筋繊維の力や持続力を示したグラフや資料写真を見ながらに比良坂は呟いた。「勿論です。今は他の生物の筋肉の構造なども調べております。虎などは力強くまた素早いですからな」

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#rsbs日誌　「わしからも幾つか私物のサンプルを用意しておいたでな。活用してくりゃれ。イルカの様な水棲人類と幾つかの獣人の筋肉サンプルじゃ。それと蛋白質もじゃな。ああ、間違ってもバイオハザードさせるでないぞ？洒落にならん」「分かっております。最悪の場合は焼却処分を行いますので」

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#rsbs日誌　所長によってカードキーが解放され、比良坂と舞風は建物の中枢部へと招かれた。「…わぁー…ＳＦだぁ」舞風は純粋に感嘆の言葉を洩らした。そこには大量のカプセルシリンダーと、大量のコンピュータ、研究員と…未だ目覚めぬ戦女神が薄ら青い『羊水』の中を浮かんでいた…

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#rsbs日誌　「ここのレーンは改造タイプの艦娘さんの物です。駆逐艦型ならば三日で人間からの改装が終わりますな」「速いのう。脳殻に移し変えて筋肉やエネルギー変換系まで総取っ替えじゃのに」「遺伝子工学が進んだのもありますが、生体部品の精製の高速化が一躍を買っていますね」

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#rsbs日誌　「生前の…と言うと何か可笑しいかもしれませんが、人間であった頃のＤＮＡデータで再構築した艦娘用の筋肉を使用する事で脳との馴染みもいいんですな。初期型はそれから来る身体との馴染みの悪さが問題でした」「まぁ、元々己の体だった物じゃからのう…馴染みも良かろう」

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#rsbs日誌　「あ、私がいる」ぽつりと呟く舞風の視線の先にはカプセルシリンダーの中で体を丸めているまだ眠ったままの『舞風』が居た。「ねぇ提督？私たちって似てるけども、やっぱりちょっとずつ違うんだね。あそこの私、ちょっぴり足長いよ」「個性は出るからのう。人造人間でも」

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#rsbs日誌　「私たちって、すごーい科学で割りと同じモノとして作られてるけど、どーして違いがあるの？あ、この吹雪泣き黒子がついてる」「そりゃあ恐らく、嘗て艦に乗った万人が、万人それぞれのイメェヂを艦に抱いておるからじゃろうなぁ…」染々と比良坂は呟き、シリンダーの中の少女を見た。

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#rsbs日誌　「乗り手それぞれが思い浮かべる７、８割のイメージが体の大体の容姿を定める。のこりの３から２割が其々に与えられた個性とも言うべき、小さな小さな違いじゃ。金剛おるじゃろう。アングロサクソン特有のキャラメルブラウンとブルーの瞳を持った個体をわしは見かけた事があるのじゃ」

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#rsbs日誌　「まぁロマンも面白味も無く言い切るとただの乱数じゃがな」「うわー…本当に可愛いげがないよう。それ」「ま、神が与えたもうた個性。それでいいじゃろ。嘗て魔性の存在であった物達は科学と言う名前の膨大な力の前に捩じ伏せられ…何時かはこの世の全ての事象も解き明かすじゃろう」

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#rsbs日誌　「じゃが、そんな１＋１は２。みたいな決まり腐った世の中なんぞ糞ほどつまらんじゃろう。人とは恐れ、知り、笑い、旅し、涙してこその人生じゃ。ロマンもへったくれも無い世の中なんぞ味気ないじゃろう？」「まぁ、ねぇ。私のダンス、機械にして貰ったって何も楽しくないもん」

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#rsbs日誌　不意に爆発音が鳴り響いた。研究所のスピーカーからアラームが鳴り響いた。「こちら所長、何が起きたのか」手近な内線電話に向かい、所長が吠える。『研究エリアにて艦娘が一人暴走しました！ただいま鎮静部隊を向かわせています！』「バイオハザードの可能性は！？」『問題無いです』

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#rsbs日誌　「舞風、行くぞ？」「いいよー」「比良坂殿！？何をする気ですか！」比良坂の突然の行動に所長が狼狽した。「泣いてる娘っ子を慰めに行くんじゃ。お主らのヘマをリカバリーしようと言うのじゃよ」「危険過ぎます！お止めください！」「わしは魔女じゃよ。問題ない」

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#rsbs日誌　廊下を進んでいる間も、爆発音や衝撃が耐えなかった。振動に負けて、廊下に取り付けられた硝子が割れていた。「今度からプラスチックの窓にした方がよいのう。所長」「そうします…もうすぐです」携帯端末からの情報を見ながら所長は言う。警備隊らしき声も聞こえてきた。

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#rsbs日誌　「クソ！退却、退却！」「麻酔弾が当たりゃしない！」「あれが生まれたてなの！？」阿鼻叫喚の声が聞こえる中を比良坂と舞風は悠々と歩いた。「はーいちょっと御免よー。魔女が通るのじゃよー」「おまっ…！？下がって下さい！危ないんですよ！」「問題ない。気にするな」

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#rsbs日誌　廊下に集まった警備隊の群れを押し退け、比良坂は騒動の現況へと対面した。「フーッ…フーッ…」「おや、まぁ…随分と目を血走らせてしもうて…」「ーーーーーッ！！！！」「うわあぁぁ！？」獣が咆哮し、辺りを衝撃波が襲う。無事だった窓ガラスはひび割れ、廊下の壁にも傷が走った。