「サプライズド・ドージョー」 #6
「ヒュージ! 起きてくれ! 俺に支援を!」アースクエイクは自尊心を捨てて無様に叫ぶが、ヒュージはタタミに伏したまま動こうとはしない。「インガ・オホー」の6文字が、アースの脳裏にタイピングされた。
2010-08-21 23:45:05アースクエイクの全身を、絶望が支配した。この勝機を見逃さず、ドラゴン・ゲンドーソーとニンジャスレイヤーは、巨漢の左右から同時にジャンプキックをくり出す。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
2010-08-21 23:45:39左右からの鋭い飛び蹴りがアースの頭部に命中し、バリキ・ドリンクのCMのように、野太い首を勢いよくねじ切って上空に飛ばした。「サヨナラ!」アースクエイクの生首は、空中で断末魔の叫びを上げて爆発する。
2010-08-21 23:47:02首を失った巨人の体は、ミズゲイのように高さ10メートルほどの血柱を噴き出してから、ずうんとタタミの中に沈んだ。崩落した天井では、無数の鴉たちが群れ集って、招かれざる余所者の死を見下ろしゲーゲーと鳴いていた。
2010-08-21 23:47:46力を使い果たし、タタミにくずおれるニンジャスレイヤー。「よくやったぞ、インストラクション・ワンは合格だ」とゲンドーソー。だがフジキドは罪悪感が蘇り「センセイ、やはり駄目です…セプクさせてください…」と呻く。ドラゴン・ゲンドーソーは静かに歩み寄り、声をかけようとした。その時だ。
2010-08-21 23:48:51「イヤーッ!」瀕死の状態にあったヒュージシュリケンが、最後の執念で吹き矢を吹いた。 「グワーッ!」注射針がドラゴン・ゲンドーソーの首元に突き刺さる! ヨロシサン製薬が極秘に開発していたアンチニンジャ・ウィルスが、日本最後のリアルニンジャの体内へと容赦なく侵入していった!
2010-08-21 23:51:50「グワーッ!」もだえ苦しみ泡を吹くドラゴン・ゲンドーソー。全身の血管がどす黒く変わり、ミミズのように表皮に浮かび上がって、皮膚を内側から突き破らんばかりに暴れ回った。 「イヤーッ!」最後の一針を、ヒュージシュリケンはニンジャスレイヤーに向かって吹き出す。
2010-08-21 23:54:43だが、ニンジャスレイヤーは細さ0.5ミクロンの極細毒針を見切り、それを人差し指と中指だけでつまみ、後方に受け流した。 「おのれ!よくもセンセイを!」ニンジャスレイヤーはヒュージシュリケンに止めをさすべく体を起こし、酩酊ゲイシャのようなおぼつかない足取りで歩む。
2010-08-22 00:02:32血を失いすぎたヒュージシュリケンは、薄れ行く意識の中で呟く。(((畜生が、スペアも取れなかったか。だが、最後にドラゴン・ゲンドーソーを道連れにしてやった。俺を囮に使いやがったアースクエイクも、良い気味だぜ……
2010-08-22 00:03:31だが、俺もついにここまでか。もうアンチニンジャ・ウィルス「タケウチ」の弾も切れた。せめて足が動けば、ハーレーに積まれた小型戦術核、バンザイ・ニュークを起動させ、任務を果たせるというのに。あと少しだったのに……。畜生が、俺の体はもう駄目だ……)))
2010-08-22 00:05:33「ヒュージシュリケン=サン、貴様はやはり、もっと早く殺しておくべきだった…」ニンジャスレイヤーは肩で息をしながらヒュージの横に歩み寄り、右足の裏をヒュージの後頭部に乗せた。そして最後の力を振り絞って足を上げる。これでオシマイにしよう。
2010-08-22 00:06:48「サヨナラ!」ニンジャスレイヤーが足を振り下ろしながら叫ぶ。だが、それとまったく同時に、強烈なサーチライトの光が上空から照射された。「グワーッ!」暗視状態になっていたニンジャスレイヤーの目は、突然の猛烈な光を浴びてショックを受け、一時的な盲目に陥ってしまう。ウカツ! 何たる未熟!
2010-08-22 00:07:54騒音が聞こえてくる。ヘルカイトによって先導されたソウカイヤの武装ヘリ軍団が、屍骸に群がるハゲタカのように襲来したのだ。6台の武装ヘリから、ドージョーに向けてガトリングガンが斉射される。一秒三十発という猛烈な射出速度のため、弾丸は雨の中で燃え上がり、ドージョーを火の海に変えていった
2010-08-22 00:09:03「AAARGH! いかん、ニンジャスレイヤー=サン、逃げるのだ!」精神力でウィルスの発作を一時的に抑えたドラゴン・ゲンドーソーが、激痛に耐えて立ち上がる。「イヤーッ!」五連続のバク転と側転。「イヤーッ!」そして流れるようなブリッジで、ゲンドーソーはガトリングガンの射撃をかわした。
2010-08-22 00:09:29「グワーッ!」ニンジャスレイヤーはまだ、両目をおさえて悶え苦しんでいる。敵はすぐに、ゲンドーソーからニンジャスレイヤーへと攻撃目標を変えるだろう。このままでは蜂の巣である。「ニンジャスレイヤー=サン! わしの声に続け! ハイ! これだ!」
2010-08-22 00:09:41ドラゴン・ゲンドーソーは爆発寸前の体に鞭打ち、大仏の前にある黒いタタミを叩いた。タタミがぐるりと回転し、シークレット・パスウェイが現れる。「こっちだ、ニンジャスレイヤー=サン! 急げ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーはただ、センセイの声の方向へと闇雲に走るしかなかった。
2010-08-22 00:10:22「ヘルカイト=サン、逃げられてしまいます」と、武装ヘリを操縦するY-12型ヤクザ。平然とヘルカイトが返す「ノープロブレム。俺たちの任務は、ドージョーの放火。ハーレーを狙え。バンザイ・ニュークを起こしてやれ」
2010-08-22 00:11:41師を背負ったニンジャスレイヤーは、地下下水道を時速120キロで走り抜け、ジンジャ・カテドラルから数百メートル離れたマンホールを抜けて地上へ姿を現した。ドラゴン・ゲンドーソーは、ニンジャスレイヤーを地下に導いた直後から、意識を失っていたのだ。
2010-08-22 00:12:26ニンジャスレイヤーがジンジャ・カテドラルの方向を向くと、クモの子を散らすように、武装ヘリ軍団が飛び去するところだった。不穏な動きだ、とニンジャスレイヤーは察する。数秒後、メガトン級の爆発がジンジャ・カテドラルの中心部から発生した。バンザイ・ニュークだ。
2010-08-22 00:13:23視界が揺らいだ。大気が揺れたのだ。衝撃波が来る……! 本能的に危険を察したニンジャスレイヤーは、学園都市の廃墟を全速力で駆けた。光のドームが背後からじりじりと迫ってくる。光に呑みこまれた哀れな水牛たちは、鴉たちは、タケノコたちは、一瞬にして蒸発していった。
2010-08-22 00:14:02走れ! ニンジャスレイヤー! 走れ! 猛爆発を背負いながら、ニンジャスレイヤーはカラテの力で走り続ける。
2010-08-22 00:19:12だが、戦いに次ぐ戦いの疲労が、非情にも足をもつれさせる。爆発の衝撃を逃れるためにツインタワー・ビルを垂直に駆け上っていたニンジャスレイヤーは、足を滑らせ落下した。そして二人のニンジャは、バンザイ・ニュークによって生み出された光のドームの中へと霞むように吸い込まれていったのだ……。
2010-08-22 00:20:29