バック・イン・ブラック #4
(あらすじ:ネオサイタマの闇社会を支配するのはソウカイヤのニンジャ達だ。だが今、彼らニンジャを葬る謎の殺戮者の存在あり。その者の名はニンジャスレイヤー。加速する憎悪と殺意は無差別殺戮の狂気に至らんとしていたが……。 #1 まとめ:togetter.com/li/702450 )
2014-08-15 22:35:34年老いたニンジャ、ドラゴン・ゲンドーソーと赤黒装束のニンジャ、ニンジャスレイヤーは、互いにオジギを繰り出し、そしてカラテを構えた。それは極度に張りつめた数秒間であった。ゲンドーソーの背後には巨大バッファローの亡骸があった。その斜め後方の木陰には、牛車から避難したユカノの姿。 1
2014-08-15 22:42:43オフィス街のオアシスであるべきこの公園は今や地獄の炎の拡散源と化していた。草、花、樹木を、人やクローンヤクザの死体を、拡がる炎が呑み、吹きすさぶ風は火の粉を散らし、周囲の区画へ熱と火の触手を伸ばした。それは自動消火スプリンクラー設備では容易に消しえぬ不浄の炎だった。 2
2014-08-15 22:47:44「ググググ……はじめましてローシ・ニンジャ=サン。ニンジャスレイヤーです」炎を背に、ニンジャスレイヤーが目を細めた。巻き起こる黒煙が今や空を覆い、ただでさえスモッグを通して弱々しい朝の光を、闇の中に閉ざしてしまった。「……ニンジャソウル憑依者ではないな……老いぼれ犬め」3
2014-08-15 22:58:15「我はドラゴン・ニンジャ・クランのアーチニンジャなり」ドラゴン・ゲンドーソーは用心深く間合いを維持した。「貴様は何者だ」「儂はニンジャを殺す者……全ニンジャを……ググググ」ニンジャスレイヤーは喉を鳴らした。「オヌシとて例外ではない」「なんたる邪気」ゲンドーソーは呻いた。 4
2014-08-15 23:04:09「お爺様」「下がれユカノ」ゲンドーソーはニンジャスレイヤーを注視したまま、ユカノを止めた。「これはもはやお前の力になれるイクサではない。火に巻かれるでないぞ!」ユカノは歯を食いしばり、従った。「儂の感じた畏れは正しかった。ニンジャスレイヤー=サン……儂が貴様を退治てくれよう!」5
2014-08-15 23:11:31「しゃらくさいわ!痴れ犬!」ニンジャスレイヤーが地を蹴った!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーとゲンドーソーのチョップがぶつかり合い、衝撃が周囲の空気を揺らした。左の瞳が拡散と凝集を繰り返し、血涙が赤黒い蒸気と化す。ニンジャスレイヤーのニューロンが激しく乱れる。 6
2014-08-15 23:15:34「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ワン・インチ距離においてゲンドーソーと凄まじいカラテ乱打戦を繰り広げながら、ニンジャスレイヤーの周囲を流れる主観時間は泥めいて鈍化していった。敵と闘いながら、彼は炎の中に別の影を見ていた。苦悶に叫ぶサラリマンの影を。7
2014-08-15 23:19:07(イクサのさなかに情けないツラを晒しに参ったか!フジキド!)ニンジャスレイヤーはサラリマンの影に向かって叫んだ。それは現実の光景に重ね合わされたニューロン内の対話だった。(((ナラク。ナラク・ニンジャよ)))影は胸を抑えた。(((この者はソウカイヤのニンジャではない……))) 8
2014-08-15 23:23:23「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーとドラゴン・ゲンドーソーの回し蹴りが交互に繰り出される。触れれば首が一撃で跳ね飛ばされるであろう恐るべき殺人カラテの応酬だ。(何を愚かな……ソウカイヤがどうした。ニンジャに例外など無し。狩りの獲物よ!) 9
2014-08-15 23:26:53「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」三点打破のチョップ突きをゲンドーソーが繰り出す!「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーがそれらを全て捌く!そして四打目の掌打!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ゲンドーソーはバック転回避!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケン投擲!10
2014-08-15 23:31:25(((何かが……違う……グワーッ!)))呻く影はスリケンの威力に掻き消された。(黙れ!)ゲンドーソーに追撃の跳び蹴りを繰りだしながら、ニンジャスレイヤーは呻く影をも圧倒した。(左様な迷いはカラテを鈍らせる毒ぞ!愚かなり!妻子の恨みを晴らす手段を知るは儂のみ!ニンジャを殺せ!)11
2014-08-15 23:35:02(((ニンジャを殺す!)))(然り!)ニンジャスレイヤーは彼の嘆きを己の意識の支配下に押し留めた。(((フユコ!トチノキ!妻子を殺した憎き敵!)))(それがニンジャだ!ソウカイヤはニンジャの吹き溜まり、ゆえに先ず滅ぼす。何を思い悩む必要があろう!)(((殺す!)))(然り!)12
2014-08-15 23:40:56「イヤーッ!」ゲンドーソーの空中回転肘打ちが襲いかかる!「邪魔だ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは蹴りを見舞う。ゲンドーソーは圧し負け、横に弾かれた。「グワーッ!」「弱敵!」ニンジャスレイヤーは笑った。カラテの快さを、ニンジャを殺す愉悦を、彼はニューロンの同居者に注ぎ込んだ。13
2014-08-15 23:45:20「イヤーッ!」「グワーッ!」追い打ちのケリ・キックがゲンドーソーを襲う!「イヤーッ!」「グワーッ!」更に一撃!「イヤーッ!」「グワーッ!」更に!「ググググハハハハハ!」ニンジャスレイヤーは歪んだメンポの牙の隙間から哄笑を放つ!その両目が赤黒く燃える!「ニンジャ!殺すべし!」14
2014-08-15 23:48:33「お爺様ーッ!」その時である!燃え朽ちて倒れる木の陰から跳び出したのは、ゲンドーソーが従えてきたユカノという女であった。その手にはクナイが握られ、見開かれた目にはゲンドーソーへの敬意と捨鉢な決意が漲っていた。ニンジャスレイヤーは嘲った。修行も至らぬニンジャ未満!死にに来たか!15
2014-08-15 23:52:28赤黒く染まったニンジャスレイヤーの視野は、この女の魂の格を、蔑むべき半人前と断じた。ユカノの攻撃はニンジャスレイヤーに届かなかった。ニンジャスレイヤーの鉤爪めいた手がユカノの顔をたやすく掴み、足元へ叩き伏せたのだ。(((フユコ!トチノキ!)))ニンジャスレイヤーは訝しんだ。 16
2014-08-15 23:57:25足元にはトマトめいて頭部を破砕消失した半人前の死骸があるはずだった。何故生きている。何故生かした!「お爺様……」ユカノが呻いた。(((フユコ!トチノキ!)))「グワーッ!」心臓が強く脈打ち、ニンジャスレイヤーの両目から血の涙が溢れだした。彼は後ずさった。「グワーッ!」 17
2014-08-16 00:00:49破裂せんばかりに膨れ上がった内なる苦痛に耐えながら、ニンジャスレイヤーは考えようとした。なにがこの肉体を、フジキド・ケンジを動揺せしめたのか!おお、ナムサン……その答えはこの者には……ナラク・ニンジャには見えはしなかったのだ!「イヤーッ!」ゲンドーソーが跳ね起き、襲いかかる!18
2014-08-16 00:09:08「グワーッ!」跳び込み前転からの空中前転踵落とし、即ちドラゴン・ヒノクルマ・ケリがニンジャスレイヤーの顔面を捉えた!よろめくニンジャスレイヤーをドラゴン・ゲンドーソーは逃さなかった。接近しながらの小足払いがニンジャスレイヤーの足首を刈った。「イヤーッ!」「グワーッ!」 19
2014-08-16 00:14:40ニンジャスレイヤーの身体が浮き上がる!ドラゴン・ゲンドーソーはニンジャスレイヤーの首元を掴み、離さない!「フジキド!フジキドーッ!愚か者めがーッ!」ニンジャスレイヤーは喚いた。「身体を……」「イヤーッ!」「グワーッ!」回転!地面に叩きつけられる!「グワーッ!」20
2014-08-16 00:17:27ゲンドーソーは首元の手を離さない!持ち上げ、再び回転!「イヤーッ!」地面に叩きつける!「グワーッ!」「お爺様……!」ユカノが震えながら身を起こす。ゲンドーソーは自嘲した。「"背中の子が水先案内人"とはこの事か……イヤーッ!」ニンジャスレイヤーを再び叩きつける!「グワーッ!」 21
2014-08-16 00:22:59「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」 22
2014-08-16 00:24:52ゴウランガ……ゴウランガ!ドラゴン・ゲンドーソーは絶対にその手を離さぬ!投げ続ける!投げ続ける!これぞジュー・ジツのベーシック・アーツにして終生磨き続けるべきヒサツ・ワザである!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」 23
2014-08-16 00:28:50