#完全ノープラン艦これ与太話 【ライジング・コメット・ダイバーダウン】 #5～#6

春魔解丼 @vespiking

エクサは側面機関砲の弾丸を丁寧に回避しながら、悠々と雲海を泳ぐ空の不沈艦へ狙いを定める。その左腕、大きく飛び出た3つの発動機のうち、胴体に最も近いそれを。失敗は許されない。エクサはじわじわと相対距離を詰めていき、機首を……下へ向けた！ #KZNPLN

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三本足の鴉が重力に乗り、道を示す。速度が遅くなる感覚。体感時間が鈍化しているのだ。エクサは富嶽の第三発動機、OR99アマテラスのみを凝視した。ただ一点だけを視界に捉えた。余計な視界情報をシャットアウトした。 #KZNPLN

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――先に擦れ違った瞬間。視界の隅に捉えた風防の内側を。黒いヘドロめいた触手で満たされた操縦席を。そこに座る1人の妖精を、エクサは意識の外へと除外した。己の人間性と共に。 #KZNPLN

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「イイイヤアアアーーーッ！」 #KZNPLN

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炸裂した瞬間の記憶はない。断絶した記憶の谷のリカバリーポイントで、左主翼のもぎ取られた夢の超重爆を、エクサはしかと目に焼き付けた。 #KZNPLN

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風防の内で、目や耳から触手を生やした妖精の残骸が、壁に打ち付けられていた。「キッカワ＝サン。お願いします。カイシャクを」『行くぜ！イヤーッ！』上空で燃料節約グライダー飛行を行っていたキッカワが、翼の折れた富嶽に向かって、最後の燃料をふかした。『グワーッ！？』 #KZNPLN

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その時だった！秋水の反応が突如、レーダーから消失した！『どうした！何があったキッカワ！キッカワーッ！』タモンが叫ぶ！エクサも慌てて富嶽へ向き直る！それは、とてもおぞましい光景であった。もげた主翼から、名状しがたき黒いタコ足が、うねうねと脈打ち、秋水を貫いていた。 #KZNPLN

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「ア、アバー……」風防を貫いた触手の先端に、細い枝葉に取り込まれるように、見知った妖精が司令塔めいて括り付けられている。耳や口から触手を生やし、おぞましく白目を剥いてはいるが、見紛う筈もなし。弟子のテラだ。人呼吸遅れ、秋水は爆発四散した。『キッカワーッ！』 #KZNPLN

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『……大丈夫だ。女々しい声出してんじゃねえよ』ザリザリとノイズ混じりの通信が届く。キッカワは落ち行く富嶽の背に立ち、小型通信機を握り締めながらカラテを構えた。『燃料をカラにしといて助かった。爆発が遅れた。しかし……なんだこのオバケは。聞いてねえぞ』 #KZNPLN

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富嶽に取り憑いたタコ怪物は唸り声をあげ、キッカワを触手で襲う。『イヤーッ！クッソ！いきなりかァ！』キッカワは四方から迫る触手を寸前まで引き付け、前転！うち一本の背後をとった！『イヤーッ！』強靭なカラテパンチが触手を打ち据える！ #KZNPLN

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エクサは状況判断した。黒い触手状の物体。艦娘の艦霊が漏れ出した場合と同じ反応だ。何らかの霊的反応に相違ない。おそらくは、霊的発動機アマテラスの、否、富嶽の『中身』。尋常ならざる霊的存在を、狭い器に詰め込んだか。なるほど暴走など始める筈である。 #KZNPLN

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エクサは理解した。――富嶽は原理上、艦娘と同様の一体型霊的兵器なのだ。霊と、機械と、テラの肉体による、第三次キメラだ。艦娘は生体部を潰せば死ぬ。ならば。「タモン＝サン！80号爆弾の転送リロードを！キッカワ＝サン！機首の妖精だ！それが富嶽の本体だ！」 #KZNPLN

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エクサは電撃的速度で再上昇する！妻も、子も、弟子をも殺した。一人でもいい。救わねばならないのだ！己の手で、自らの落とす爆弾で、この負の連鎖に終止符を打つのだ！『オーケイ！今から転送するわ！……お願い。キッカワを、助けて』エクサはもう、目を逸らさない。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ライジング・コメット・ダイバーダウン】#6終わり。#7へ続く。 #KZNPLN