不知火に落ち度はない その26

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yamoto @yamoto

緊張の一瞬。沈黙は一分ほど続き。 すっと龍田が立ち上がり、腕を上げて── #不知火に落ち度はない

2014-10-25 15:11:02
yamoto @yamoto

腕が交差し×を作った。 同時に、ブブー、と不正解音が響く。 「残念、ハズレですよぉー♥︎」 「くっそ。読み外したか」 どうやら裏のそのまた裏をかかれたらしい。 「では不知火さん没シュートですー♥︎」 「まて、そいつ持ってかないで。秘書艦だから」 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 15:13:43
yamoto @yamoto

「ではこちらの資料をどうぞー。この子を派遣しようと思うのですー」 「……どれどれ」 ブリーフケースから、書類を一式出してくる龍田。 艦娘のデータが記載されており。 その名前を見た時、流石に凍りついた。 「龍田よぉ」 「あら怖い。どうしましたぁ?」 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 15:24:31
yamoto @yamoto

「早霜って、お前わかって言ってんのか?」 早霜。 不知火撃沈を目撃したとされる艦である。 これは喧嘩でも売られてるのだろうか。 そのつもりなら買ってやるぞ、龍田。 俺個人でだけどな。この司令室から生きて出さない手はあるんだ。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 15:27:39
yamoto @yamoto

「あら、何か問題でもー?」 「問題でも? じゃねえだろ、何考えてやがる」 雰囲気が重くなる。 もし、くだらねえ答えだったら即テーブルを蹴り上げて、ガラスごと龍田をぶち抜くか。 「まさか、勇猛名高き兵頭提督がたかだか逸話を信じて怖気づくのかしら?」 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 15:30:56
yamoto @yamoto

「艤装記憶はあんだろが。何わざわざ焚きつけに来てやがる」 「救済が必要だと思うのよねー。その、拗れたものを解消するいい機会じゃないかしらー」 ものは言い様である。 「それに、不知火さんは訓練で秘書艦続行不可なのではなくてー?」 痛い所突いて来るな。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 15:34:33
yamoto @yamoto

「二水戦所属、秘書艦経験あり、性能上位の夕雲型で、性格も貴方に会うタイプの子よぉー?」 「会ったことねえから知らねえよ」 データを参照する。 練度は流石にアウターヘブン勢。極めて高いようである。 さらには、在任期間は5年以上の秘書艦経歴ありか。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 15:48:55
yamoto @yamoto

確かこの提督、除隊されてなかったっけか。 その後は3つの鎮守府を次々移転して、最後にたどり着いたのがアウターヘブン。 これは後に裏を調べる必要がある。 冷静に考えれば、龍田が寄越すカードで外れはない。 旗艦としての活躍もしてるしな。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 15:55:05
yamoto @yamoto

「早霜に作戦概要は伝えてあるのか?」 「半年前からずーっと集中でー、学習させてるわー」 おい、断りにくくすんなよ。 こいつ半年もあるかないかわからない作戦のために、缶詰にされてたの? それで逃げてないのは龍田が有能か、それとも我慢強いのか。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:01:36
yamoto @yamoto

「まさか、と思うけど」 「はい、正解ー♥︎」 ピンポーン。 いや俺まだ何も言ってないからな!? #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:03:38
yamoto @yamoto

先回りされたことはともかく、龍田はマジイカれてやがる。 どうもこの早霜、ウチにレンタル移籍して秘書艦とするために専用教育されてるくさい。 つまり、俺が不知火の戦闘時間を気にして、秘書艦解任するってことを半年前から確信してたわけだ。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:06:13
yamoto @yamoto

「秘書艦として迎え入れる気はねえぞ」 「あらー。処遇は貴方の決めることではなくてー?」 くそったれ、掌の上か。 「でも、データを見て貴方は確信してるのではなくてー? 足りないものを補ってくれる優秀な代理秘書艦が他にいるー?」 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:08:32
yamoto @yamoto

まったく悔しいが反論はできない。 長門は、今回作戦の要になる。 もう一人のやつも予備枠で入れている。 なにより、龍田の事だ。 こいつを野放しにしとくと、後々面倒の種になる。 例えば、演習でカチ合わせてくるとかな。 合同作戦で同じ組に入れるとかな。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:11:33
yamoto @yamoto

「レンタル移籍でいいんだな」 「あら、本採用で欲しいの? それはうちの提督とかけあってもらわないとぉ、私の一任じゃ決められないわー?」 ちゃうわ。 それにお前の一任だろだいたい。 あの笹食うくまに肉球判子押させてるだけで。 パンダは曲芸しかやらん。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:16:01
yamoto @yamoto

そも、腹黒ピエロがカードを用意した段階で、こっちが何の対処も取ってなかったのが悪い。 それに作戦終了までの間のレンタル移籍なら、それなりに理由にもなるから、いざこざはそう起きない。 アウターヘブン勢の協力とあれば、ほいほい従うのだっている。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:20:57
yamoto @yamoto

ただ、気に入らない。 頭の先から、尻尾まで気に入らない話だ。 この早霜ってのがどんなやつなのかわからんが、龍田の子飼なら同類と見なしていい。 油断なく、信用せずに利用する。 龍田に『食われた』鎮守府は数多い。 そうならぬためのルールを頭に敷いた。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:25:02
yamoto @yamoto

「一応聞いとくぞ?」 「何かしらー?」 「うっかりセクハラしたら、怒る?」 「気にしない子だけどぉー。子供が出来ちゃう行為はお控えくださいねー?」 よし。訴えられて負けることはなさそうだ。 じゃあ、しゃあねえ。 このカードを引き受けるか。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:27:55
yamoto @yamoto

「着任前には連絡くれ。配属転換の辞令と共に発表する」 「はいはーい。仲良くしてあげてねー?」 じゃあ、乾杯しましょうかー。 などと言い出し、龍田が缶を開ける。 こちらも応えるように、缶コーヒーを開けて目線の高さまであげ。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:31:12
yamoto @yamoto

「作戦の成功を祈って」 「互いの友好を誓ってー」 『乾杯』 缶が安っぽい音を立ててぶつかり、そして俺はコーヒーを飲み干した。 甘ったるさの後にくる苦い味が、脳を冴えさせる。 このカードをどう扱うべきか。俺は悩まずにはいられなかった。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:34:48
yamoto @yamoto

そんなわけで、今日はこれでおしまい。 龍田がカードを置いて行った日。 それが白なのか黒なのか、灰色なのか、それを吟味せざるを得なかった日。 そんな一日だった。 ったく、苦労ばっかか。 #不知火に落ち度はない

2014-10-25 16:36:01
yamoto @yamoto

「ところで龍田、何してんの?」 「振るの忘れてたのよー。出て来ないわー」 「あほですかお前は。来るとき振っとけよ」 「しょんぼりだわー……」 「缶切とスプーン持って来てやっから、ちょっと待ってろ」 「あらー。ありがとうー?」 #不知火に落ち度はない #おまけ

2014-10-25 16:39:58
yamoto @yamoto

ってわけで龍田回終了。 龍田はだいたいあんな感じで行動を潰しにきつつもおちゃっぴいなお姉さんですよ。駆逐艦からは人気あり。 なお、大熊猫提督は今日、駆逐艦の子を背中に乗っけてお散歩してるらしいです。平和。 #落ちぬい

2014-10-25 16:43:04
yamoto @yamoto

なお、引っ掻き回すだけなら最強にイカした人材いますよ。 「巻雲です!へやあああああああ!」 #落ちぬい

2014-10-25 17:09:03
yamoto @yamoto

なお、ギンブチさんは鷲塚なのだ。 片目:兵頭 モグリ:長瀬 ギンブチ:鷲塚 無駄設定のコーナーでした。 ぶっちゃけ覚えづらい名前だよねこいつら。 #落ちぬい

2014-10-25 15:36:34