ストレイトロード:ルート140(8周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。1日1話ペースで継続中。 今回は351~400。毎日書いてたら1年経っていました。 以前のまとめは作者おすすめ欄か下記URLからどうぞ。 元の短編の掲載場所: http://www.gekkado.jp/
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、388。宵闇。 現実的でない話を信じない人はいずれ現実として直面するまで危険に気づかない。

2014-10-13 20:07:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

砂漠を歩く駱駝の群れが民家の外壁に描かれている。珍しいが何でもない壁画だと私は思ったが、藍は一言「気になる」そして停車を命じた。彼女に倣い、家の真南に立って画を斜めから見ると、砂漠は壁の外まで続いていた。駱駝が鼻を向けた先で、民家の裏手にある山が重機で削られ地肌を晒していたのだ。

2014-10-14 19:06:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、389。駱駝。 視点を変えるだけで。

2014-10-14 19:06:24
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

仮眠から目を覚ますと、私の携帯端末が手元になかった。先ず隣を疑う。助手席の藍が端末を勝手に起動し何かを見ていた。「電池切れですか」自分のが使えなくなったから借りた。理由の有力候補を挙げると、藍は口を尖らせて端末を突き返した。「別にいいでしょ」何故か通信履歴を覗き見た痕跡があった。

2014-10-15 19:10:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、390。履歴。 どうせ雇い主からの借り物だけども。

2014-10-15 19:10:59
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍が希望した通り、今日は海を臨む高台で昼食を広げることになった。雲一つない空に彼女の気合いが表れている。遠くに見える島の名を問われて地図を広げ、昔は流刑地だったという話を思い出して語ると、藍は言った。「すぐ逃げ出せる距離じゃない」風が見える視線は激しい潮流の存在に気づいていない。

2014-10-16 19:41:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、391。流刑。 人は空気の流れにも水の流れにも乗れない。

2014-10-16 19:41:47
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私達が植え込みの陰に隠れた直後、大勢の人がそこを通り過ぎた。さっき藍が示した家の門前で、先頭の男が一枚の紙を掲げ、何かを宣言した。「令状ですね」私は首を振った。権力の介入は邪魔できない。「誰よ、通報したの」藍は唇を噛んだ。貰おうとしていた大事な証拠がもうすぐ目の前で運び出される。

2014-10-17 19:47:17
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、392。令状。

2014-10-17 19:47:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

案内された小屋は邸宅の主人が独力で作ったという。中を見回した藍が唐突に言った。「なんだか食べられちゃったみたい」天井を見上げても意味が分からなかった。剥き出しの骨組みを肋骨に見立てたと知ると、丸みを帯びた小屋全体が巨大な生物のように見えてきた。藍は最初からそう見ていたのだろうか。

2014-10-18 22:41:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、393。肋骨。 それは絵本のような。

2014-10-18 22:41:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

街角の屋台で遅い夕食をとっていると、隣の酔客が絡んできた。「何もかも子供の言いなりか!大層なご身分だな!」唾を飛ばされたのは私だが、怒りを顕わにしたのは藍だった。憤慨と酒は人に場を弁えることを忘れさせる。看板が強風に震え、机が拳で揺すられる中、私は両者を引き離すのが精一杯だった。

2014-10-19 23:04:59
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、394。弁える。 落ち着きをなくすと視野は狭くなる。

2014-10-19 23:05:53
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「食欲なさそうですね」「そんなことない」朝の身支度を終えた時から藍の顔色は明らかに悪かったが、私が何を言っても正直に答えなかった。しかし無理に食べさせるわけにはいかない。熟したリンゴを一つ取り出すと、「自分で剥く」と奪い取られ、しばらくして半分だけ返された。私は何も言わなかった。

2014-10-20 19:07:16
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、395。半分。

2014-10-20 19:07:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「わたし、小さい頃は勘違いしてて」川岸の草むらに寝転がった藍が言う。「飛行機雲は飛行機の形をした雲だと思ってたの」深い青に染まった空を、粘土細工のような形状の雲が次々と流れていく。「鳥雲、蜂雲、そんな言葉ないでしょ?だから飛行機は特別な生き物だって信じてた。…誰にも言わないでね」

2014-10-21 19:43:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、396。飛行機雲。

2014-10-21 19:43:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

@Rista_Bakeya 追記忘れていました、今回はラ(@raaaaaaaaaaaa14)さんからいただいたテーマです。ありがとうございました!

2014-10-21 20:05:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

脚にロープを結んで吊り橋の上から飛び降りる。単純な方法で空中を舞う遊びを藍は好んでいるらしい。「今日はあなたから飛んで」峡谷の怪物から見たら餌を吊るすようなもの。私が慎重に安全を確かめていたら、無慈悲な両手に背中を押された。飛び降りというより落ちていく私の頭上に笑い声が反響した。

2014-10-22 19:07:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、397。落ちる。 もやし(@aruihatubame)さんから頂きました。 ゼファールは高さや落下への恐怖はないですが、人間の所業が自然界に負けず劣らず恐ろしいことをよく知っています。

2014-10-22 19:08:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「みんな騙され過ぎ。家の中探しても出てくるわけないわ、だって宝石は隠されてなんかなかったんだから」集められた関係者たちの前で藍は断言した。ポーズだけ名探偵を気取っても、披露する推理は単純だ。「最初にこれを偽物って紹介したの、誰だったかしら?」掲げられた石の前で一人が血相を変えた。

2014-10-23 19:28:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、398。名探偵。 嘘を見抜いたのが誰かなんて今はどうだっていい。 今回は消夢(@syoumu80)さん提供のテーマでした。

2014-10-23 19:28:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

村の収穫物を守ったお礼に野菜を貰うことは珍しくないが、今回は各々の家が一箱ずつ持ってきたので相当な量になった。可能な限りを車に積むのは当然私の仕事だ。「早く運んで。だらけてる暇なんかないのよ」昨日活躍した藍は今、助手席を守っている。運搬を手伝わせるにも少女に持たせていい箱がない。

2014-10-24 19:37:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、399。だらける。 精一杯の姿って、なかなかそうだと認識してもらえない。 お題は愁海棠(@takuramu_ossan)さんからでした。

2014-10-24 19:37:35
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ショーケースの中央に金の鎖を連ねた豪奢なネックレスを見つけ、藍が目を輝かせた。茶色の縞模様が入った大きな瑪瑙を小粒の宝石が囲んでいる。その配置の意味が隣の札に書かれていた。「なるほど、木星ですね」「え?」「瑪瑙を木星に、周囲の宝石を衛星に見立てているそうです」藍は小首をかしげた。

2014-10-25 23:09:29
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