ストレイトロード:ルート140(40周目)
- Rista_Bakeya
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今回の本編
車を盗み損ねた男が逃げる途中、路上のギター弾きの足元に何かを捨てていった。男を逃した私達は帰り支度をする演者を見つけ、置いていた空き缶の中を調べた。硬貨や紙幣に混じって奇妙な道具があった。鍵開け用だろうか。「これは?」「たまにある嫌がらせ」藍は石にアルミ箔を巻いた物を眺めている。
2019-01-23 19:10:59近くの町から来たという若者が鋳物を売っていた。昔は大きな工場と機材で複雑な製品を造っていたが、最近は古い製法に頼る職人が増えたという。「伝統の手法の再現って銘打ったら売上が良くなりまして」「最新技術ってだけで嫌う人多いもん」藍の反応に若者が笑う。「なんならうちに来て作ってみる?」
2019-01-24 18:56:24『打った!』ラジオの野球中継が試合の興奮と歓声を車内に届ける。選手の動きやボールの行方を見ることができなくても、世界一を争う大会に相応しい熱気は伝わってくる。「外で何か物音しなかった?」藍が首をひねった。金属バットによる会心の一打に聞こえたのは、本当はどこで何を打つ音だったのか。
2019-01-25 19:18:14車に乗ろうとした藍が悲鳴を上げて飛び退いた。鋭利な物体による細い傷は近くで見なければ判らない。被害は広範囲に及び、手間のかかる悪戯というより別の理由が疑われた。「何でもいいから犯人捕まえて!」怒りの一声を浴びた直後、車の下から逃げ出す影を見た。その場所を調べると工具が見つかった。
2019-01-26 19:38:36錘をつけた箱が海に沈む様子はよく覚えている。魚のすみかの為と依頼人は言ったが、藍は疑っていた。「あんなの置いても壊れた岩の代わりになんかならないのに」「何度も中身を見ようとした理由はそれですか」私達が箱を届けた半年後にニュース映像を見た。錘に潰され半壊した箱を魚が出入りしていた。
2019-01-27 18:44:39「これ知ってる?」藍が雑貨屋で手に取った玩具は、私が幼い頃に流行したものだった。模造品を疑ったが、製造元は紛れもなく本家本元だ。「懐かしいだけじゃないのよ」彼女の端末に表示されたのは、怪物に踏み潰された工場の解体中に古い金型を発見したとの記事。再生産が会社の再生に繋がったという。
2019-01-28 18:43:47湖を囲む別荘の多くは荒らされていた。樹上の巣箱の一つに端末を近づけて撮影すると、鳥や小動物の寝床とは思えない中身が写っていた。銀で出来たカトラリーを始め皿やコイン、装飾品などの形が判別できる。「隠したのは人間だと思う」藍は周辺の木々を指した。「さっきから他の生き物を見かけないの」
2019-01-29 18:41:36風にたなびく大きな旗は人々の目を釘付けにするだろう。近くで見上げれば色も形も様々な布を繋ぎ合わせただけだが、少し離れて全体を視界に収めると文章が見えてくる。「あなたが見とれてどうするの、早く」藍に促され身を隠した。廃墟の屋上に掲げたメッセージは釘で固定した。簡単には撤去できない。
2019-01-30 18:46:41炎を吐く怪物が住み着いて以来、当然その洞窟の環境は大きく変わった。調査隊は失われゆく太古の景観を嘆きつつ進み、どこからか吹きつける熱風に震えながらも進んだ。『その先に面白いものがある』風の魔女が無線機越しに奥へと誘う。前進した一同が見たのは、鍾乳石を覆う風変わりな結晶の山だった。
2019-01-31 18:45:57「海の底にいるみたい」藍は青いガラスで出来たドームを見上げている。「それはコバルトの青だな」職人は手元の作業にだけ視線を向けたまま藍に教えた。「貴重な材料でね、今は流通しているかどうかも判らない」工業にも多用される素材だ。情報網が切り裂かれたこの時代、話が届かないだけだと良いが。
2019-02-01 18:42:15岩場の陰で風雨に耐えていたテントを見つけた。周囲に新しい足跡はない。すると中を調べていた藍が砂を浚う道具を持ってきた。「ここで使った痕跡があります」近くの川から砂金を掬い取る為に滞在していたらしい。「どうしてわかるの」「目的を達成していますから」私は箱の隅に潜む金色の光を指した。
2019-02-02 19:18:10「コンパスが太陽の方向を指すのってどんなとき?」信じ難い質問だが、藍が提示した方位磁針は言葉通りの状態だった。針が指す方へ進むと、崖の下に倉庫らしき建物を見つけた。外壁が全壊し鉄骨しか残っていない。もし建物自体が磁力を帯びたなら確かに方位確認への影響は大きいが、問題はその原因だ。
2019-02-03 19:09:57