ストレイトロード:ルート140(33周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビが毎日お届けしている、掌編という名の習作。 今回は1601~1650。終盤のリクエストコーナー以外は「漢字一文字」しばりに挑戦しました。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
「また襲ってくるならここを通るはずよ」藍は野営場所の近くで罠を組み立て、網を落ち葉の下に埋めた。小一時間して、滑車の回る音が私の仮眠を止めた。「誰だ、こんな所に」声は仕掛けが壊れる音に打ち消された。私は折れた枝と網に包まれた誰かの救出に手間取り、その間に藍と野犬の再戦が始まった。
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140文字で描く練習、1601。網。
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広い部屋の中央に置かれた潜水艦は本物そっくりで、内部も同じ部品で実物大に造られていた。「船が沈んでる」藍が窓に表示された映像を指した。今この瞬間に沖合で撮影されている深海だ。よく見ると、海底に刺さった錨が影に紛れ込んでいる。「船からはぐれた迷子の錨だよ」艦長が通信で教えてくれた。
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140文字で描く練習、1602。錨。
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車を停めた直後に意識が遠のいた。怪物と出会うことなく山道を走りきった安心感からかと思ったが違ったらしい。運び込まれた病院で、私は背中の傷口に溜まった膿を出され、藍は腕の包帯を巻き直された。「誰が手当てしたの」尋ねる看護師の顔が怖い。山越えの前に買った薬を見せると眉間の皺が増えた。
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140文字で描く練習、1603。膿。 素人の限界。
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「待って」パーティ会場に入る手前で藍が私の行く手を阻んだ。「襟が曲がってる」手振りで屈めと指示され、肩の高さを彼女に合わせた。すると私の襟を直しながら言われた。「前に買ったサングラス持ってきた?」「はい」「かけて。報道陣が多すぎる」公の場に出るのに襟を正さなかった者がいるらしい。
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140文字で描く練習、1604。襟。
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「ここから先はついてこないで」固く閉ざされた扉の前で、藍の手が私の腹に突き出された。「そういう掟らしいから」私は一歩退くことを返答とした。言いたいことなら山のようにあった。今いる場所は彼女が慣れ親しんだ研究所と全く違う。私の心配を掴んだ上で、風の魔女は敵地に切り込もうとしている。
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
140文字で描く練習、1605。掟。
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「あのライトの笠を替えさせて」ホテルにわざと無茶を要求する客の話はどの地域でも珍しくない。客室に入るなり天井を指した藍もその手かと疑ったのは、一見何も問題がなかったからだ。だが彼女の言葉を電話でフロントに伝えると支配人が飛んできた。すぐに交換が行われ、天井に不審な穴が見つかった。
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140文字で描く練習、1606。笠。
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林の中で今日集めた茸が明日の私達を支える生命線になる。問題は手当たり次第とは行かないことか。「食べられない種類も集めておいて」「区別が難しいからですか」「後で使うの。あっ、ここ見て」藍が発見した小さな塊は、最近数が減ったと話題の食用茸だった。この辺りに古い足跡が多い理由が判った。
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140文字で描く練習、1607。茸。
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家主の悲鳴で目が覚め、藍の指示で窓から外を見た。庭も田畑も無数の杭に占拠され、道はロープで塞がれ、私達の車も囲まれていた。「一体誰が」「みんな見当ついてるみたい」村外れの老人が方々で土地の所有権を主張しては居住者と揉めているらしい。「先祖伝来の土地を返せ!」杭を打つ音が聞こえる。
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140文字で描く練習、1608。杭。
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私からの宿題だと言って、藍に領収書の束と電卓を渡した。問題は今週の出費の合計だ。「難しい数学は何に使うかさっぱりだけど、これはさすがに分かるわ」藍はすぐ解答した。桁が違う。先頭から見直し、計算ミスを見つけた時にはほっとしたが、予算とかけ離れているという意味では正答も大差なかった。
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140文字で描く練習、1609。桁。
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車に荷物を積み込む時には常に細心の注意を払っている。しかし激しい戦いの後、疲れて眠る藍を助手席に乗せる場面で油断した。「この人くらいの年だとよく腰を痛めるって聞くけど」治療を受ける私の頭上で医師に話しかける声がする。「無茶させてない?」「記憶にないわ」元気になったようで何よりだ。
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140文字で描く練習、1610。腰。
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私が紅茶を淹れる手順を藍は採点者のように見ていた。香りを確かめ、口に含んでからやっと緊張を解いた。「だいぶマシになってきたじゃない」ところが彼女は自分のティーカップを一度手元に置き、匙一杯に盛った砂糖を私のカップに流し入れた。「次はこれ。見た目の分量で覚えようなんて思わないでね」
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140文字で描く練習、1611。匙。
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芝で覆われた広い庭は昨日まで手入れが行き届いていたというが、今はすっかり荒れていた。「信じられない。これをお前さんがやったというのか」雹の一粒を拾う庭師の隣で、藍がそっぽを向いている。「わたしだってこんなにするつもりはなかったの」幼い頃から知っている相手だからこそ気まずいようだ。
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya
140文字で描く練習、1612。芝。
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怪物の巣になっていた町に人が戻ってきたと聞いて訪れたが、一見すると廃墟と大差なかった。目につく人家の屋根やバルコニーはどれも雀たちのねぐらになっているらしい。「我々が帰るのが遅すぎただけだ。鳥に罪はない」瓦礫を片付けている人が教えてくれた。藍が見上げた先を雀の群れが飛んでいった。
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