rsbs日誌#38

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　ハヂマリ。

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#rsbs日誌　機は南の空を進んでいる。フラップやラダーがカタカタと振動する音が此処にまで伝わっている。太陽が、眩しいな…「間もなく着水体勢に入ります」僕達は座席に座って衝撃に備えた。暫くして、水に触れる感じが伝わった。僕は下駄履きじゃないけれど、この感じは嫌いじゃないな…

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#rsbs日誌　ぞろぞろと僕達は機を後にした。此処が僕達の配属先。名もない南の島。見た事も無い巨大な戦艦や、独国の様な風体の伊号程の潜水艦が港に浮いていた。「ようこそ、新入り諸君」声が聞こえた方に向くと、パイロットと艦娘が独り立っていた。天城型二番艦、赤城だ…練度が高い。

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#rsbs日誌　「私が此処の飛行隊長だ。此れから諸君らの上司となる。早速だが宿舎に荷物を起き次第、艦戦、艦攻、艦爆。其々の部署に向かい慣熟飛行に入ってくれ」指示のままに僕達は其々の宿舎に向かい、荷物を置いた。戦闘機乗りの新入りは僕を含めて６人しか居なかった。

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#rsbs日誌　「長生きしなよ新入り」宿舎でまだ名前も知らない先輩に声を掛けられた。「召集ー」かんらかんら、とベルが鳴らされて僕達は先導の整備に着いていった。小さな鉄道に乗って、其処から更に少し歩いていった先に格納庫があった。大きい。「諸君らに今日から乗って貰うのはこれです」

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#rsbs日誌　整備の掛け声と共に扉が開かれて格納庫に光が射す。其処に佇んで居たのは…見た事の無い、機体だった。「零式艦戦改、液零です」「…こんな変なのに乗れって言うの？栄発動機はどうしたのさ？」一人のパイロットが聞いた。尤もかも知れない。僕らは零式艦戦の為に育てられたのだから。

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#rsbs日誌　「此処の司令官の意向による物です。此処の基地は大量の彗星を生産した事で熱田エンヂンが余ってしまったんですよ。そして一向に新型機が導入されない。諦め怒り狂った提督が戦力増強の為に液零を作りました」「陸さんの所の逆五式戦かぁ…」明らかに皮肉の込められた声だった。

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#rsbs日誌　「なら、模擬戦をしてみますか？」にやりと整備が笑う。食って掛かったパイロットは売り言葉に買い言葉で勝負に出た。……それから半刻後、食って掛かったパイロットはぐったりとしていた。腕前は五分。旋回性能は零式が勝っていた。しかし全体性能においては液零の方が優勢だった…

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#rsbs日誌　チャージャとエンヂンは確りと整備されて居て、グングンと高く登ったし、ダイブのスピードも速かった。旋回性能もフラップでキビキビと動くし、ロールが速かった。積んでる機銃も１２ミリ以上。弾道も遠く真っ直ぐに飛んでいく。正直に言って、乗らない理由が無い。

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#rsbs日誌　…その日の慣熟飛行を終えた後、ハンガに仕舞われた液零を僕は静かに眺めていた。「まるで九六式艦戦みたいだな…」僕はぽつりと呟きながら液零を撫でた。空冷星形から液冷V型へ…そんな来歴が、あの洒落た小さな艦戦を思い起こさせた。撫でたジュラルミンはひんやりとしていた。

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#rsbs日誌　「強ち間違っちゃ居ないよ」不意に声を掛けられた。振り向くと一人のパイロットがハンガの入口に立っていた。此方に手を振っている。ゆっくりと歩を進めて彼女の間合いに近付く。「新入りだね」「えぇ」僕は頷いた。彼女はライタの蓋を持つと手首のスナップで開き、煙草に火を点けた。

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#rsbs日誌　「飛鷹航空隊のナツメ。宜しく」彼女は手を伸ばして握手を求めた。僕も其に答える。「ハサクラです。本土から、今日此処に」「うん、聞いてる…君は私の後輩だ」「つまり…」僕は言葉を濁らせた。「うちの艦戦隊がヤられた。それだけだよ」ナツメは淡々としていた。

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#rsbs日誌　「其よりどうだった？液零は」彼女の問いに僕は素直に答えた。「零式艦戦より重たいけれど、よく動く良い飛行機です」「そっか。そりゃ良かった。じゃぁ君は長生き出来るね」「…それはどう言う？」彼女の言葉に僕は小首を傾げた。「迷信だけどさ…気に入った奴は早死にしないの」

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#rsbs日誌　「ジンクス…ですか？」「そんなもん、かな…海燕を愛でてあげな。愛でれば、愛でたその分応えてくれる機体だ」「カイエン…？」聞き慣れない言葉に、疑問符が飛んだ。「ああ…液零の事、陸さんの液冷戦闘機が飛燕だろう？此方は海軍だから、海燕。誰が最初に呼んだんだかね」

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#rsbs日誌　「さて…そろそろ飯の時間だ。此処の飯は旨いんだ。遅れないようにね」ナツメは話すことは終わったとばかりに背を向け、歩いた。「ああそうだ…九六式艦戦の事だ」思い出した様に彼女は足を止めて、話した。「此処の提督は九六が好きでさ。この海燕も其に因んだ物だってさ」

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#rsbs日誌　「マニアックな人だ…」九六式にイスパノを積んだ機体が在ったのを知っている人は珍しいから、僕がそう呟くとナツメは肩を竦めた。「何…単に液冷エンヂンが好きな人だからさ…」やれやれとばかりに呟くと、話は終わりだとばかりに今度こそ彼女は背中を向けてハンガから去っていった。

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#rsbs日誌　…――やや暫くして――…

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#rsbs日誌　…―僕達は空を飛んでいた。飛鷹から発艦し、艦攻隊を援護する。左翼やや後ろには僕と同じ新入りの艦戦のパイロット。…名前は確かトガリと言ったっけ。ふわふわと飛んでいた。右手前にはナツメさん…僕の真横をやや離れた所にもう一機。合計四機一組で飛んでいた。

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#rsbs日誌　前方に敵影が見えた。虫の様な、甲殻類の様な不思議なシルエット。『喰い破ってやれ。無理はするな』ナツメさんの掛け声と共に僕らは飛び出していく。高度はこちらがやや上。真っ直ぐ突っ込んできて、敵は機銃掃射。でも速度差で当たらない。当てるならもっと前を狙わないと。