FF6二次創作【鎮魂のアリア】その8
- minarudhia
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時は三か月前にさかのぼる。 全ては、パック・スコットとその若い妻の関係から始まった。 スコットの家はフーパー家・マクシム家と同じ中流階級であったが、パックの祖父の代からコネに恵まれ、名はそこそこに評判もあった。
2014-12-18 22:01:22パックの妻であったガネットは、彼女の両親がスコット家に取り入るため嫁がせた事情もあり、嫁いだ当初からパックに対してさほどの感情は持っていなかったという。 しかし、嫁いでまもなく彼女は憂き目に遭うことになる。
2014-12-18 22:03:46パックにはサディスト的な性癖があり、行為に及ぶとなると必ず妻を目隠し、鞭や蝋責めは愚か、入手の難しくない麻薬によるトリップなどを厭わず使って責め抜いた。
2014-12-18 22:07:54ガネットも当初はこれに耐えかね逃げようとはしたものの、パックからは痴女としての噂を周囲に撒くと脅されていたため、助けを求めることもままならなかった。それでも、パックのこの悪質な性癖はやがてゴシップのネタとして流れるようになる。
2014-12-18 22:09:04使用人がパックの目の届かぬところでこの有様を酒に任せて言いふらしたため、噂は飛び交い、それに加えて尾ひれもつき始めた。 ガネットの件にしても、もはや彼女一人ではどうしようもない所まで、その評判を貶められる程に噂は悪化する始末だった。
2014-12-18 22:12:16とある夜、ついにガネットは夫の所業に耐えかね、行為中夫を振り切った彼女は窓から外へと飛び出した。 そこへ居合わせたのがジュリアス・フーパーで、彼は偶然スコット家のそばを通り過ぎようとしていた所にガネットと遭遇する。
2014-12-18 22:16:25さらに、ガネットに逃げられ腹を立て追ってきたパックと鉢合わせになり、壮絶な大喧嘩に勃発した。 この喧嘩は近隣の住民も止めに入れなくなるほどで、危うく流血沙汰になる所を自警団が取り押さえ、ガネットはどさくさに紛れてフーパー家に身を寄せることになる。
2014-12-18 22:18:58そして、その頃から、ジュリアス・フーパーは度々ゾゾの街のちんぴらや悪漢による仕事の妨害を受けるようになった。 ガネットの家からも、ガネットへは何の連絡も届かなかった。
2014-12-18 22:21:27これらの状況に対し、ジュリアス・フーパーとは古くからの知り合いであったヘンリー・マクシムが、彼に援護し対応に勤しんだ。 薬を投与され続けた結果中毒に侵されていたガネットの看病も、事実を知った彼にとって、大いに痛々しく思われたため医者を幾度となく通わせもした。
2014-12-18 22:23:19しかしそのような中――― 今から一か月前、ジュリアス・フーパーは殺害された。 パック・スコットの雇った竜の首コロシアムの参加者によってである。
2014-12-18 22:25:33「殺害される所は、私も見ていたの。彼より後ろに配置された席からだった」 フィストは堅い口調で淡々と続けた。 「彼はナイフで何度も直に刺されたの。何度も、何度も。様相はヘンリー・マクシムを殺した人間とは別人よ」 「てことは…?」
2014-12-18 22:27:51「そう、今回の殺人を犯した人間はゾゾの人間。ジュリアス・フーパーを殺した人間は、その後どうなったかは知らない。用済みとして殺されたかもしれない」 「しかし、ひどい話だ…自分の奥さんをそんな風に扱うなんて」
2014-12-18 22:29:38「今までそうした性癖を隠していたのかもしれない。でも、彼はそうでもしなければ妻を愛せなかったんでしょうね。でも、その後に、ガネットも首を吊っていた。ヘンリー・マクシムがジュリアス・フーパーの顔の確認から戻った矢先で」 「えっ!?」
2014-12-18 22:31:23その頃、フィストはジドールで人知れず走り回っていた。 使い魔を使ってスコット家を張らせたり、オペラ座にこれ以上の負担を掛からせないようにと自らの鱗を売って作った資金を使ったりしていたのだ。
2014-12-18 22:33:47その中で、彼女は、オペラ座に異様な怨念が立ち込めていることに気づいた。 それが、ジュリアス・フーパーのものであるということにも。
2014-12-18 22:35:36「それで気づいたの。彼は死んだけれど、その後すぐにガネットが死亡した事で、まだこの世に留まっているうちからパック・スコットへの怨念を募らせていることに。それが募るに募り、期限を過ぎてもこの世に留まり続ければ、彼は死者としての特権を許されなくなる」 「どういうことだ?」
2014-12-18 22:36:43「普通、死者は亡霊でも、未練や執念そのものを解消できれば、そのままあの世…霊界へ行くことができる。でも、それはあくまでも限られた期間の間だけ。限られた期限を超えてこの世に存在し続ければ…」 ・・・し続ければ? 互いに顔を見合わせる面々に、フィストは続ける。
2014-12-18 22:39:32「死者は永遠の安らぎも地獄の制裁も受けることができない。そして、生まれ変わることも許されない。個人にとってメリットの有無はともかく、…生と死のサイクルを崩しかねない事態にも、繋がる」 「てことは…」
2014-12-18 22:41:59自分を訝しげに見る仲間にマッシュは魔列車の事を話した。 死者を霊界へ運ぶという列車。 かつてティナのためにナルシェへ向かう最中エドガー達をはぐれた道中で乗ってしまった事をマッシュは話した。
2014-12-18 22:47:03「…死者を乗せる列車…」 「ああ、俺はもう二度と生きてるうちはあれに乗りたくねえけどな」 「多分、その列車を利用できれば…」 何か思いついたようにフィストは考え込む。 「何か秘策が?」 セリスが聞く。
2014-12-18 22:49:40「……そうね。パック・スコットを殺されないよう守ってくれるなら、時間を稼いでくれるなら」 グリフォンの飛ぶ速度が速くなる。 日が沈み、暗くなった視界にジドールの街明かりは明るかった。
2014-12-18 22:51:13