オバケのミカタ第三話『オバケのミカタと吸血鬼』Cパート(3/3)

第三話Cパートです。
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アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

見上げれば、彼女たちの城たる『椿ハイツ』は穴だらけになって黒煙を噴き、今にも崩壊寸前だった。「家が」「平気よ。引っ越せばいいだけの話。でも家族はそうはいかないわ」椿に髪を撫でられる。アザミは自分が薄いシーツをかけられただけの全裸であることに気づいて、赤面した。#OnM_3 215

2015-01-03 22:59:12
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

ようやく事情が呑みこめてきた。アザミを襲ったハンターは、次にクランの皆を襲った。それを誰かが返り討ちにした上、搾り殺されるのを待つばかりだったアザミを救ってくれたのだ。「……一体誰が」「彼女よ」雛菊が示した隣のビニールシートで、傷だらけの少女が眠っていた。#OnM_3 216

2015-01-03 22:59:34
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まだほんの子供だ。眼帯の女の子に膝枕されて、死んだように眠っている。肩に巻いた包帯に赤黒い血が滲み、痛々しい。「……大した子だわ。うちの氏族に欲しいくらい」椿が言うと、眼帯娘が舌を出した。「駄ー目、あげないわよ。マコトはうちの子なんだから」#OnM_3 217

2015-01-03 22:59:52
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アザミは、こんこんと眠る煤だらけの横顔を見つめた。何故か鏡を覗いているような気持ちになる。アザミはその肩に、禍々しい爪を生やした悪意の手を幻視した。思わず、おのれの肩に手をやる。ひんやりした優しい手に思いがけず触れ、振り向くと、薄く微笑む雛菊と目が合った。#OnM_3 218

2015-01-03 23:00:37
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悪意の手はどこにでも現れ、どこまでも追ってくる。だけど、こうして優しい手を差し伸べてくれる人も確かに存在するのだ。誰かの優しい手が、眠り続ける少女を、悪意の爪から守ってくれますように。アザミは祈った。――多分、神ではない何かに。#OnM_3 219

2015-01-03 23:01:13
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眠り続けるマコトの横顔を、スレイ=セレンギルはあからさまに白けた様子で眺めていた。椅子に逆座りし、組んだ腕に顎を埋めている。そして悲しげな溜息を一つ。「もういいわ」手を振ると、中継映像が止まった。部屋の電気が点き、暗幕が巻き上がる。窓の外は百万ドルの夜景。#OnM_3 220

2015-01-03 23:02:20
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東京湾に臨む高層ビルの一室――巨大な会議室であった。スレイは褐色の肌とくっきりした目鼻立ちをした、エキゾチックな美少女だ。短く刈った髪は白い。すらりとした手足はしなやかで、逞しく、そして傷一つなかった。彼女は再び溜息をつく。#OnM_3 221

2015-01-03 23:02:55
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「お気に召しませんでしたか」背後に立つ影がうっそりと笑った。鍔広の帽子。半分に切ったマスク。武器商人――フロイライン・ブロッケンだ。スレイが答えた。「好きな人の劣化した姿を見ることほど悲しいことないね」「では?」「ワタシが出るまでもないと思う」#OnM_3 222

2015-01-03 23:03:29
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ブロッケンはゆるりと振り向き、言った。「だ、そうですので。やっぱり最初の条件でお願いいたしますわ」部屋の奥には、さらに四人の人物がいた。カソックを着た筋骨隆々の神父。ダークスーツにサングラスの男。梓弓を背負った巫女。そして道服姿の、枯れ木の如き老人。#OnM_3 223

2015-01-03 23:04:37
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祓魔師(エクソシスト)――ローランド=ラザロ神父。メン・イン・ブラック――アンダーソン。梓巫女――橘霧歌。霊幻道士――陳戴麟(チャン=ツァイリン)。いずれ劣らぬお化け狩りの達人にして、裏社会の住人たちであった。#OnM_3 224

2015-01-03 23:04:59
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「東京・横浜を基点にしたエクトプラズム輸出ルートの確立は当社の悲願です。そこで、その最大の邪魔者マガリマコトを排除してくださった方に――現金で二百万ドル。むろん対象の処遇はデッド・オア・アライブ。よろしいですね、スレイ?」「もち」#OnM_3 225

2015-01-03 23:08:51
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「それで死ぬならそこまでの器だったってことだしねー」スレイはそこではたと何かに思い至り、くくっと喉を鳴らした。「だけどもし、四人全員に勝っちゃうようなら――ワタシの愛したマコトがまだ健在だって証明になるよね」「そのときはどうします?」とブロッケン。#OnM_3 226

2015-01-03 23:09:26
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「そのときはもちろん、ワタシが迎えに行くわ」スレイは、停止した画面の中のマコトの顔に手をかざした。「だから頑張ってね。私のマ・コ・ト――」煤まみれの顔に重ねられたその手はまるで、彼女を握り潰そうとする巨大な悪意が形をとったようであった。#OnM_3 227

2015-01-03 23:09:58
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第三話『オバケのミカタと吸血鬼』終わり  ~ 第四話『オバケのミカタと瀬戸大将』に続く

2015-01-03 23:10:18
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