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ブラックメイルド・バイ・ニンジャ #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ゲホッ!ゲホーッ!」アサノは後部座席から這い出して地面にくずおれ、肺の中に溜まった黒煙に咽せた。軽傷。ブラックメイルが控えていなければ、確実に死んでいただろう。彼は雨の中で視線を上げた。「イヤーッ!」「アバーッ!」無慈悲なニンジャのカラテ軌跡が、ネオン光に反射していた。 46

2015-02-07 16:16:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……キィイイイイイイン。対戦車弾の影響で、アサノは聴覚と平衡感覚に著しい混乱をきたす。ブラックメイルは半殺しにした隊長格ヤクザを締め上げて指を折り、尋問を行っていた。そして何かを聞き出すと、カラテで殺した。血の染みがアスファルトに広がる。薄汚いマネーに染まった、薄汚い血が。 47

2015-02-07 16:24:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブラックメイルが歩み寄る。アサノは助け起こされることを期待していた……車中では身を挺し、あたかも黒い鎧の如く己を護ってくれたのだから。だが、甘かった。彼女は苛立ち、アサノの襟首を掴んで引きずり上げ、尋問するかのような口調で何かを告げた。人外の瞳は明らかに、怒りを湛えていた。 48

2015-02-07 16:34:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

聴覚がまだ戻らぬ。アサノは混乱した。ニンジャはアサノの首の後ろに手を回した。恐るべきカラテで首を搔き切られるのかとアサノは覚悟したが、違った。彼女の指はスーツの襟元に仕込まれた小型発信器を摘み上げ、それを見せつけた。位置座標のみを送信するヤマダ社の最新型装置YPS33だった。49

2015-02-07 16:41:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャの声が断片的に聞こえ始めた。アサノ・ミツイは愚鈍な男ではない。全てを悟った。黒幕は、アサノサン一族の第3部長、アサノ・モチロウだ。ニューロンを怒りが駆け巡った。「奴を消す」アサノがふり絞るように言った。その邪悪な眼差しが、ニンジャの睨みと重なった。「今夜、今すぐに」 50

2015-02-07 16:50:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ナイスショットドスエ」キャディ型オイランドロイドが優しくプログラミングされた笑顔で拍手した。「そうだろう」アサノ・モチロウ部長はゴルフカートに座り、葉巻を咥えると、オイランドロイドの胸を揉みしだいた。「もっとしてください」オイランドロイドは頬を染めながらカートを運転した。 52

2015-02-07 16:58:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ここは何処か?オキナワなのか?……否。分厚いマッポー級汚染雲に覆われ、重金属酸性雨が降り注ぐネオサイタマである。アサノサン・パワーズ社第3社屋の最上階にある重役用の休憩ルームだ。ここには屋内プール、竹林、ミニゴルフコース、最新のトレーニング機器が揃ったジム・ドージョーがある。53

2015-02-07 17:01:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ミツイ=サンは愚かな男だった。突然社への忠誠心を失い、不相応な野心に目覚めるとは」彼の主催するノミカイの誘いを断った事で、それは明白だった。「胸のすく思いだ!」モチロウは葉巻を吹かし、バンカーの近くでカートから降りた。別のオイランドロイドが正座で待ち受け、彼の靴を磨いた。 54

2015-02-07 17:13:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「難しいショットドスエ」最高級オイランドロイドがクラブを仰々しく手渡す。モチロウがその胸を揉む。「アイエッ!」高度な羞恥心をプログラムされた最新型だ。モチロウは頷き、己の強大なパワーに酔いしれ、さらなる行為に及ぼうとする。その時。スターン!突如装甲フスマが室外から開かれた! 55

2015-02-07 17:25:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエッ!?」モチロウが振り返り、目を凝らした。屋内プールを挟んだ向こうに、アサノ・ミツイ部長が立っていた。「何故だ……生きていた!?どうやってここに……!?」ミツイの生体認証権限ならば確かに、この福利厚生ルームにアクセスできる。だが、警備部隊を如何にして突破したのか。 56

2015-02-07 17:31:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アサノ・ミツイは答えず、怒りに満ちた表情で接近してくる。「DAMNIT!何でもいい!そいつを拘束しろ!」モチロウはプールサイドに控えていた私兵部隊に命じた。クローンヤクザが警棒を構えてアサノを狙う。だが「イヤーッ!」「「アバーッ!」」謎のカラテシャウトが響き、ヤクザ即死! 57

2015-02-07 17:40:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!」モチロウは戦慄した。果たして何が起こったのか。ミツイがやったのか?だが人間業とは思えぬ!実際、ミツイは息ひとつ乱さず、スーツ姿のまま歩み寄って来るではないか!重サイバネ迷彩刺客でも伴っているのか?!「撃て!撃てーッ!」モチロウは自らも銃を抜きながら絶叫した!58

2015-02-07 17:47:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「アバーッ!」ミツイに銃を向けたヤクザが突如死亡!その額にはスリケンが突き刺さっている。「ス……スリケン!?」モチロウは視界の端に、一瞬、恐るべき速度で戦うニンジャを見た。直後「イヤーッ!」「アバーッ!」モチロウの手首にもスリケンが突き刺さり、彼は無力化された。59

2015-02-07 17:55:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「アバーッ!」ブラックメイルによる護衛殺戮を、ミツイは冷たい目で一瞥しながら歩いた。マグロじみて転がる九個の死体。ツキジめいた惨状。血の染みがプールサイドに広がる。薄汚いマネーに染まった、薄汚い血が。「アイエエエエ!」モチロウは激痛と恐怖に塗れ、転げ回っていた。60

2015-02-07 18:03:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「経費でずいぶんと高い買い物をしているな。オイランドロイドへの羞恥心の違法プログラムは重罪だぞ、モチロウ=サン」ミツイが荒廃した声で歩み寄った。「お、おのれーッ!負け犬の分際で……!」BLAMBLAMBLAM!モチロウは愛社精神を振り絞り、トリガを引き続ける!「死ねーッ!!」61

2015-02-07 18:09:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがヤバレカバレで放った銃弾は、ミツイの体に届くことなく、雨粒の如く弾き落とされていた。闇から躍り出たブラックメイルが立ち塞がり、ムテキ・アティチュードを行使したのである。「アイエエエエエ!?ニンジャ!?」暗黒社会で囁かれるニンジャ存在。その真実を前に、モチロウは失禁した。 62

2015-02-07 18:15:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何が……一体何が。何故ニンジャがここに……!ミツイ=サン、何故ニンジャを伴って……!」「愚かな男だ、モチロウ=サン。貴様はアマクダリという強大な怪物の尾を踏んだ」「……ア、アマクダリだと……それは一体……」「立て」ブラックメイルが地獄から遣わされた処刑者めいた声で命じた。 63

2015-02-07 18:21:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイ」モチロウは立ち上がった。「私はお前に復讐し、お前の薄汚い死体をあのプールに浮かべるつもりだった」アサノがぞっとするほど冷たく邪悪な声で言った。以前のアサノとはまるで別人だった。「アイエエエエ!」「だが、やめた」「そ、それは一体……!」「我々はお前とビジネスをしたい」 64

2015-02-07 18:37:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わ、私に社を裏切れと……?」モチロウが言った。「何という堕落だ、ニンポで操られているのかアサノ=サン。考え直せ、こんな事をして……先には破滅しか待っていないぞ。私は屈しない」「娘さんは大学生だったな」「ヤメテ」モチロウは絶句した。「ニョタイモリ器研修させたいか」「ヤメテ」 65

2015-02-07 18:45:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だがこんな違法ドロイド事実がスクープされたら、娘さんはカネに困るだろう」「ヤメテ」「家族のオナーは地に落ちる。司法もマスコミも我々の側だ」「ヤメテ」「ではハンコを押せ」「……ハイ」眼前のニンジャの恐怖と、同じ一族からの的確な脅迫……!合わせ技イポンによりモチロウは屈した。 66

2015-02-07 18:57:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「良い判断だ。それが社を守る事にも繋がる」アサノ部長は微笑み、背を向けて、オイランドロイドから葉巻を受け取った。「ハイ」モチロウは安堵の息をつく。この場さえ凌げば…そのような淡い希望が実際残っていた。そしてハンコを押したマキモノをニンジャに手渡し、ニンジャはそれを懐に収めた。67

2015-02-07 19:02:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが「イヤーッ!」「グワーッ!」突然のカラテ!ブラックメイルの理不尽な拳がモチロウの肥えた腹に叩き込まれる!「ナンデ!わ、私は言われた通りに…!」バンカーに倒れたモチロウ部長の襟首を掴み、ブラックメイルはさらに彼を痛めつけた。「イヤーッ!」「グワーッ!」恐怖を刻みつけてゆく。68

2015-02-07 19:06:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キューバ産の葉巻ドスエ」オイランドロイドが無垢な笑顔で点火サービスする。「フゥーッ……」アサノ・ミツイ第七部長は煙を吹き、窓から夜景を眺めた。「イヤーッ!」「アバーッ!」後方ではニンジャが情け容赦ないカラテを続け、第三部長は叫び声を上げるだけのジョルリの如く変わっていった。69

2015-02-07 19:13:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((……何故私がアマクダリに選ばれたか。理由は明白だ。こいつらは無能で愚かなイディオットだからだ。……家族などに判断力を乱される弱者は、どいつもこいつも、精神が隙だらけだ……)))アサノ・ミツイは荒廃した眼差しで、屹立するトックリ型のアサノサン・パワーズ第1社屋を見ていた。70

2015-02-07 19:19:21