「千の想いを」~番外編・天城がいた頃/夏の日(#4)~
- mamiya_AFS
- 782
- 0
- 0
- 0
空になった瓶を握ったまま、天城が口を閉ざして赤城を見据える。 何も思ってないかのような軽薄の笑みを浮かべたまま、何もかも見透せそうな真っ黒な瞳に妹を映す。 何も考えてないようにも、思考を深く巡らせているようにも、どっちにも見える。
2014-07-13 00:04:17@AC_akagi @tiyodadayo ……。 赤城。鳥が初めて空を飛ぶ時、何を思うかしら。さっきからやかましいセミでもいいし、新しく造られた瑞雲でもいいよ。
2014-07-13 00:06:45@AC_akagi @tiyodadayo 赤城はそう思う? 確かに渡り鳥は何割も途中で力尽きて海に落下するらしいし、セミに至ってはたったの一週間の命だ。瑞雲もCAPCOMってマジックで書いた奴から片っ端から奴らに喰われていったね。 でもあいつらみんな飛ぶでしょ。だって…。
2014-07-13 00:13:18@AC_akagi @tiyodadayo 飛ばなきゃ自分の存在意義を否定する事になるんだもん。飛ぶ為に生まれてきてるんだからさ。飛ばない豚はただの豚なわけよ。
2014-07-13 00:14:58@AC_akagi @tiyodadayo あっはっは。赤城が何を気に病んでるのかわかんないけど、俺は出撃を怖いと思った事ないよ! あっはっは。
2014-07-13 00:21:54大口を開けて笑う姉の姿と言葉に、赤城の見ている世界がまた色彩を薄める。 何を言ってほしかったのかは自分でもわからないし、どう想ってほしかったのかも言葉にならない。 でも、これは違う。 相手に感情や言葉を強制するのはおかしいとわかってはいるものの。
2014-07-13 00:25:49俯く。 赤城が抱えた不安や恐怖を、姉なら察して和らげてくれると信じていた。確信と言ってもいい。 何かが崩れる。何かが壊れる。 俯いたまま、言葉を失う。
2014-07-13 00:29:30@AC_akagi @tiyodadayo …嘘だよ。 今でも怖いし、赤城が出るのはもっと怖いと思ってる。 絶対にいなくならないでよ、赤城。
2014-07-13 00:23:00震え始める前に。 涙が浮かぶ前に。 正面から抱き締められる。 耳元で呟かれた言葉は、かつて聞いた事も無いくらいに真摯そのもので。 背に食い込む姉の指先は、痛みすら覚えるのに。
2014-07-13 00:32:22視界がぼやける。 涙腺からこぼれた粒が天城のシャツに染み込んでいく。 さっき流そうとした理由とは、違う感情が溢れ続けて止まらない。 明かりを点けていない部屋は徐々に薄暗くなっていき。 構う事なく姉妹はしばらく抱き合っていた。
2014-07-13 00:40:11テーブルに置いたままの赤城の携帯が、メールを着信し震えて音を立てても2人には聴こえていないようだった。 すぐ隣の箱に描かれたウサギが、親指を立てたまま動く事も無く。 果たされない約束は、こうして夏の夕暮れの中で交わされた。
2014-07-13 00:46:08