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第 幕[オペラ:サロメ]

 10月、ハロウィーンが近く上客たちからの要望もあり、劇団ではホラーの色が強いオペラ:サロメを上演することに決める。しかし、配役について役者たちの間で言い争いが起こってしまう。  本物と見紛う作り物の生首、“動物”の血を使った演出――それに誘われたかのように、劇場でもう一つ、奇妙な騒動が起こった。 [原作/リヒャルト・シュトラウス作曲、オスカー・ワイルド著]
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裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「いやー今日は伝説的な最終日だったな!」「アンコールにカーテンコールに……一体何回やったんだ?」「あのアンコール嫌いなロニカが珍しく乗り気だったしな。復帰早々よくやるよ」「久々だったから力が有り余ってたんじゃねえか?」「ファンサービスかもしれないわよ?」)

2015-02-11 21:23:44
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(舞台の打ち上げ会場も、普段よりも一層盛り上がっていた。しかし、話題に上っている人物は会場にはいなかった。「そのロニカ様はどこ行ったんだ?」「『今日は疲れたから帰る』ってさ」「まあ、病み上がりなら仕方がないんじゃないかしら」「え?ロニカって病気だったの?」「いや、知らないけど」)

2015-02-11 21:28:46

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「……色々と苦労をかけてすまなかったな、ロルフ」白金の髪の青年が一人、夜風に当たりながら物思いに耽っていると、男が歩み寄り声を掛けた。「……いえ、私は何も。それよりも、彼が復帰できて何よりです」)

2015-02-11 22:20:27
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(そう返した青年の表情を見て男が笑う。「心配をして損をしたか?」「っ、いえ!そういうわけでは……ただ、彼が何事もなかったかのように平然としていたので…拍子抜けしてしまいました」気まずい様子で微笑む青年に、男は目を細める。)

2015-02-11 22:24:19
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「あの子は……彼は、何も覚えていない。全て夢だと思っているんだ」「何も……ですか?あの、夜のことも」青年は自分が体験した不気味な出来事を思い返し、眉をひそめて問いかけた。「ああ。『長い夢を見ていた』……そう言っていたよ。だからお前もそう思ってしまったらいい。その方が楽だろう」)

2015-02-11 22:29:48
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「……そう、ですね。それが一番かもしれません」だが青年には、あの夜の出来事は忘れられそうになかった。この世のものとは思えない異形の存在、そしてその相手に魂を奪われ死の淵を彷徨った“彼”と、その“彼”の見たこともない一面が、青年の記憶にはっきりと焼き付いていた。)

2015-02-11 22:35:51

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(――復帰したばかりの青年は、未だに記憶が酷く混乱していた。覚えのある最後の記憶から今までの時間の経過にも、全くついていけていない。それでもどうにか舞台を終えることができ、青年はやっと安堵の息を吐いた。「……まだ、大丈夫だ」自分の屋敷へと向かう馬車の中でひっそりと呟く。)

2015-02-11 23:56:44
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(自分の屋敷に、随分と久々に戻る。ふと使用人のことを思い出し窓の外を流れる景色を見つめた。「……また妙なことに巻き込まれてないといいんだがな」あまり人のことを言える立場ではないが、厄介ごとに巻き込まれやすい使用人のことを考え苦い表情を浮かべる。)

2015-02-12 00:00:59


裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

『ロニカ!今日は午前で稽古が終わるから、』『一緒にスイーツを食べに行きましょ!』「……いや、俺が甘いもの苦手なの知って」『お料理もあるから大丈夫よ!』『美味しいから大丈夫よ!』「……」

2015-02-22 11:10:50

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

「……勝手に持ってきやがった」『だってロニカったらビュッフェだからって』『こーんなちょっとしか持ってこないんだもの』「どれくらいだろうが俺の勝手だろ」『『ロニカはもっと食べなきゃだめよ!』』「……はぁ、」 pic.twitter.com/2Xrm7hLpPB

2015-02-22 22:18:16
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裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「……ただいま、団長」「お帰りロニカ、ビオラとライラと出掛けていたのか」男のもとを訪れた青年は疲れた様子で、上着を男に押し付け浴室へと足を向けた。「……ああ。さんざん食わされてきた。暫く何も食べなくてもいいくらいにな」「はは、毎日きちんと食べないといけないぞ」「はいはい、」)

2015-02-22 23:17:37
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(青年は手早く湯浴みを済ませて男が待つ部屋へと歩いていく。――こんな平穏は久々だろう。そう思いながら、テーブルで書類に目を通している男に後ろから思いきり抱きついた。男は振り返り、青年を優しく引き寄せて口付けを送る。「――もうベッドにいく時間か?」)

2015-02-22 23:51:15
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(男の言葉に青年は目を細めて、返事の代わりにキスを返す。そんな青年を男は抱き上げベッドへと連れて行った。そっと寝かせると青年は男の首に腕を回して嬉しそうに笑う。「その後、身体の具合はどうだ?」「ご覧の通り、もうすっかり大丈夫さ。……ま、記憶のこともある程度は心の整理がついたよ」)

2015-02-23 00:08:34
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「……ただ、ずっと気に掛かってたんだが。俺を助けてくれたのは誰だったんだ?団長なら知ってるだろ」青年の言葉に男は少しばかりお道化た様子で首を傾げた。「さて、誰だったかな。お前と相手のために知らない方が良いかも知れない」「っはは、まるで王子様だな?ま、俺の王子様は団長だけどな」)

2015-02-23 00:17:01
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(「私は父親だろう」そう男は返したが、これから2人が行うことは決して親子がするようなことではない。深く、深く口付けを交わし、互いの体温に溺れていった。)

2015-02-23 00:22:31

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(――舞台の上で青年が1人、静かに歌を紡いでいる。その時、突然周囲が暗くなった。そして青年の眼前には人の形をした悍ましい存在が現れる。その口から紡がれる言葉は、青年にとって呪詛のようなものだった。『お前がいなくなっても、誰も気づきはしない』『いなくなってしまえばいいお前なんて』)

2015-02-23 08:38:30
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(人の形をしたものの長い髪が首に絡み付き、締め上げる。その顔は、実の母と、実の父のような顔に見えた。「やめろ!嫌だ…俺は、まだ……っ!」ぎりぎりと首を圧迫され苦しさに喘ぐ。嗚呼、自分は死ぬしかないのか。そう青年が諦めかけた時、『――ロニカ!!』)

2015-02-23 08:44:02
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