#完全ノープラン艦これ与太話 【ワイヴァーン・イズ・スティル・アライヴ】#3～#5

春魔解丼 @vespiking

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#完全ノープラン艦これ与太話 【ワイヴァーン・イズ・スティル・アライヴ】#4 #KZNPLN

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（これまでのあらすじ：『冥王の艦隊』中間棲姫ヨークタウンとの決戦の果て、轟沈した空母飛龍。彼女の目撃情報を受けマイヅル・カテドラルへと急行した山城だったが、消息を絶つ。同時期、失踪した駆逐艦磯波がカテドラルに保護されたとの不確定情報が発生した） #KZNPLN

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（調査に向かう夕立と時雨だったが、謎の爆発事故の影響もあり、住民らは不穏な警戒アトモスフィアを漂わせ一向に進展は見られない。そのような折、住民の1隻、初霜が飛龍を名乗る艦娘の襲撃を受け、死体で発見された。そして同席していた村雨が、失踪した） #KZNPLN

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｢アイエエエ……｣｢恐ろしいです｣｢なぜ、このような非道が｣｢誰が……｣ざわざわと、恐怖に満ちた群衆が｢外して保持｣の黄色バリケードを囲み、互いに囁き合う。図書館屋上に広がったバリケードの中心からは、今まさに駆逐艦初霜が物言わぬ死体となり、運び出されていた。 #KZNPLN

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美しい庭園を望む屋上に似つかわしくないゴア光景。時雨はぞくりと背筋を凍らせた。｢……あの、子は｣｢……ぽい？｣歩み寄る時雨は夕立へ、小さな声で呟いた。(((例の、子だ。『ミユキ様』と、そう漏らした、あの子だ)))その小さな声は、直後の悲鳴でかき消された。 #KZNPLN

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｢キャアアアア！初霜＝サン！初霜＝サン！……ああ、お願いします！通してくださいまし！ああ！ああ……ああ……｣1隻の駆逐艦が群衆をかき分け、初霜の死体に駆け寄った。時雨も無意識に道を譲る。調査初日に会話した駆逐艦だ。確か名は、如月。｢ああ……そんな……｣ #KZNPLN

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｢初霜＝サン！初霜＝サン！……ア、アイエエエエ！｣泣き崩れる如月から少し遅れ、随伴していたと見える駆逐艦がもう1隻、群衆の只中にエントリーした。睦月である。｢そんな……初霜＝サンが……どうして｣｢あああ、ああああ……｣如月は初霜の死体にしがみつき、泣き続けた。 #KZNPLN

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｢如月＝サン。如月＝サン。ああ、落ち着いて。ああ、ああ……しっかり。気をしっかり｣｢嫌……嫌……初霜＝サンが……どうして……｣如月を抱き寄せ、なだめる睦月を見ながら、時雨は考え込んでいた。初霜。自分達に『ミユキ様』の名を漏らしたのは、彼女だけだ。何か……関係が？ #KZNPLN

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｢……マズイ事になったな｣時雨は親指を噛む。｢……ぽい？｣｢……いや、僕の考え過ぎかも知れないけど……、嫌な予感がする｣｢ぽい……｣夕立の癖毛が、不安の汗でしゅんと垂れた。｢……ねえ、それより、村雨＝サンを見なかった？｣｢昨日、初霜＝サンといたのを見たわ｣｢まあ｣ #KZNPLN

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群衆の発したその会話に、夕立の鋭敏な聴覚は反応した。｢……ぽい！？｣夕立は話者に血相を変えて飛びかかる。｢アイエエエ！軍人さん！コワイ！｣｢ねえ！お姉ちゃ……ううん、村雨＝サン、どうしたの！？｣｢ハイ、今朝から姿が｣｢昨晩、初霜＝サンと図書館にいたのを見ました｣ #KZNPLN

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夕立は血液が逆流したような衝撃を覚えた。あの時の、あの朝の記憶がフラッシュバックした。目の前が真っ赤に染まった後、気付くと朝だった。じわじわと、昨日の記憶が蘇ったあの朝。村雨の、お姉ちゃんの頭を砕いた感触。時雨に四肢を砕かれた感触。恐怖と、喪失感。 #KZNPLN

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｢探さなきゃ……探さなきゃ！｣夕立は真紅のオーラを噴出し、駆け出した。｢夕立！待て！落ち着いて！｣時雨も後を追う。｢ンアーッ！？｣｢アイエエエ！ゴ、ゴメンナサイ！｣｢……イエ、こちらこそ……｣途中、屋上へ急ぐ香取にぶつかり、夕立は謝罪して再び駆け出した。 #KZNPLN

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その時。時雨は言いようのない気味の悪さを味わった気がしたが、夕立を追うのを優先した。その違和感の正体は、あとでわかった。 #KZNPLN

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――屋上へ向かう香取の謝罪には、さほど焦る様子が見られなかった。少なくとも、夕立の焦りよりも―― #KZNPLN

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――数時間前。 #KZNPLN

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｢……ハァーッ！ハァーッ！｣瞳孔が開き切り、眼を血走らせ、息を荒げる磯波はどうにか自室にたどり着き、フートンに身を投げた。全身の触覚という触覚が鋭敏になり、刺すように興奮が走る。磯波は自身の最も鋭敏な部分を両手で乱暴に蹂躙し、食いしばるように枕に齧り付いた。 #KZNPLN

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｢フーッ！フーッ！……いた、いた……飛龍＝サン……やっぱり、いた……！本当だったんだ……！見た……図書館の、屋上にいた……！｣紅潮し、火照る全身がベッドで激しく蠢く。｢ウソ、だったんだ……！やっぱり、飛龍＝サンが死んだなんて、ウソなんだ……！｣ #KZNPLN

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初霜の死体が発見され、皆が騒がしくなるまで、磯波は何度も目に焼き付けた光景をフラッシュバックさせ、その度に達した。｢……フーッ！フーッ！フーッ！｣ #KZNPLN

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｢……アア、アアアア｣ぼろぼろと涙を零す如月をなんとか支え、睦月は自室へと向かっていた。｢初霜＝サン……どうして……｣初霜はカテドラルの古参であり、駆逐艦らのまとめ役でもあった。皆の憧れであり、特に如月は、彼女に人一倍強い憧れを抱いていた。 #KZNPLN

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睦月は廊下を歩きながら、休憩用ベンチに腰掛け、不安げに俯く夕立を認めた。｢……アッ、ドーモ。夕立＝サン｣｢……ぽい、ドーモ｣夕立のオジギは弱々しかった。村雨は、カテドラルのどこにもいなかった。時雨の言っていた初霜の事。……村雨が消えたのも、私達の、せいなのか？ #KZNPLN

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夕立はすすり泣く如月を見た。私達がここへ来なければ、初霜から『ミユキ様』の名を聞いてしまったから、彼女は殺され、村雨は、お姉ちゃんの生まれ変わりは、消えてしまったのだろうか。如月に、大切な艦を喪ったあの悲しみを、与えてしまったのだろうか。 #KZNPLN

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ふと、如月が顔を上げた。夕立はどきりとした。被害者遺族に睨まれる、過失致死罪の犯人めいた感覚だった。だが、そうではなかった。｢アア、軍人さん……夕立＝サン……お願いします！犯人を！犯人を捕まえて下さい！初霜＝サンを、ああ、あのような目に遭わせた犯人を……！｣ #KZNPLN