#完全ノープラン艦これ与太話 【ワイヴァーン・イズ・スティル・アライヴ】#3~#5

ニンジャスレイヤーをリスペクトした艦これファンジンSSです。 もう戻らない。本当に? before:http://togetter.com/li/787168 続きを読む
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春魔解丼 @vespiking

如月は夕立にすがりつき、泣き喚いた。「あああ、お願いします、お願いします。せめて、村雨=サンだけでも。お願いします。お願いします。無駄に、初霜=サンの犠牲を、無駄にしないで下さいまし。お願いします。お願いします……」夕立は心が潰れそうになった。 #KZNPLN

2015-03-07 08:59:16
春魔解丼 @vespiking

「――安心して。そのつもりだよ」ふいに、睦月らの背後から声がした。「時雨=サン……」「ドーモ。多少、予定は狂ったけれど。僕達も協力しない訳にはいかない。……ごめんよ、彼女を未然に、守ってあげられなくて」時雨は顔を伏せた。 #KZNPLN

2015-03-07 09:01:20
春魔解丼 @vespiking

「あ……アリガトウゴザイマス!アリガトウゴザイマス!あああ……」如月は泣き崩れた。「だから、うん。なんでも言ってよ。些細な事でも構わない。協力は惜しまない。皆の情報が欲しいんだ」「……ハイ、アリガトウゴザイマス」如月はいまだすすり泣き、立てない。 #KZNPLN

2015-03-07 09:03:13
春魔解丼 @vespiking

睦月は一旦、如月の気を落ち着かせる為に、2隻と別れて自室へと戻った。「うん。今はそのほうが良い。落ち着いたら、いつでも頼ってね」時雨は2隻を見送り、ベンチの夕立を優しく撫でた。 #KZNPLN

2015-03-07 09:05:38
春魔解丼 @vespiking

自室へ戻った睦月は如月をベッドに座らせ、抱き締め、吐息のかかる距離で耳に囁いた。「如月=サン。わかってるよね?……ユウジョウ」如月は我に返った。初霜を喪ったショックから、ではない。もっと以前から、己の囚われていた何かから、今初めて、我に返った。恐怖がそこにあった。 #KZNPLN

2015-03-07 09:18:35
春魔解丼 @vespiking

その夜。「2隻だけで話したい事があります」と書かれ、如月に手渡されたメモに呼び出され、時雨が向かった倉庫裏には誰もいなかった。「少し予定が変わりました。睦月=サンに聞いて下さい」倉庫裏に置かれたメモには、明らかに、先のメモとは別の筆跡が踊っていた。 #KZNPLN

2015-03-07 09:20:47
春魔解丼 @vespiking

翌朝。如月が消息を絶った。 #KZNPLN

2015-03-07 09:21:19
春魔解丼 @vespiking

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2015-03-08 07:56:21
春魔解丼 @vespiking

#完全ノープラン艦これ与太話 【ワイヴァーン・イズ・スティル・アライヴ】#5 #KZNPLN

2015-03-08 07:57:17
春魔解丼 @vespiking

暗く濁った曇天。工業用エアロックで重金属酸性雨を阻むマイヅル・カテドラルにも、オーガニックな雨は分け隔てなく降る。深く分厚い雲は今にも、雨粒を滴らせんと地上を睨んでいるようだった。時折、雷鳴が轟く。嵐が近い。そう感じさせた。 #KZNPLN

2015-03-08 08:03:04
春魔解丼 @vespiking

ブロロロロ。黙示録のイナゴじみたレシプロエンジン音が、終末じみた空を翔ける。不穏なアトモスフィアを纏った烈風や天山はぐるぐると迂回し、1隻の艦影の周囲に集合した。「ドーモ。航空母艦、飛龍です。艦載機をお貸し頂き、感謝します。何分、丸腰の身でしたので」 #KZNPLN

2015-03-08 08:08:22
春魔解丼 @vespiking

青白い01の風が、ぐるぐると渦巻く。やがてそれは不完全な艦娘じみた姿に集まり、ブロックノイズめいて漂った。『礼には及ばない。私は私の目的が達成できれば、それでいい。お前は我々にとって、それなりに有益だ。シスターズ601は好きに使え』「ドーモ」飛龍は再びオジギした。 #KZNPLN

2015-03-08 08:11:56
春魔解丼 @vespiking

01ノイズが徐々に具体化し、すべらかな肌の肢体が、暗雲の黒に白を穿った。口元がクスリと笑う。飛龍はくるりと旋回し、その場を去った。『……ナガノめ。何を考えている?』愉快そうな口ぶりで、白色の空母はしばし佇み、また01に変換され、空に吸い込まれた。 #KZNPLN

2015-03-08 08:15:56
春魔解丼 @vespiking

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2015-03-08 08:16:27
春魔解丼 @vespiking

「ドーモ、センセイ」睦月は奥ゆかしくオジギし、香取の私室へと入室した。「あら、睦月=サン。ごきげんよう」「センセイ!如月=サンの『進水式』、どうなさいますか?『軍人さん』が嗅ぎ回ってます。早い方がいいと思うんです」睦月は元気よく進言した。「そうねえ……そうね」 #KZNPLN

2015-03-08 08:19:00
春魔解丼 @vespiking

香取は手袋を外し、睦月の髪の毛を優しく撫でた。「睦月=サンはよく気配りのできる、素晴らしい子ですね。私は誇らしいです」「アッ……エヘヘ」睦月は頬を染め、照れ隠しに微笑んだ。「ちょうど、村雨=サンの準備をしています。良い機会ですから、続けて執り行いましょう」 #KZNPLN

2015-03-08 08:22:34
春魔解丼 @vespiking

「でも、続けてだと、準備に時間がかかると思うんです。私、『軍人さん』に見つからないか、怖くて……」睦月は香取の服をぎゅうと掴んだ。「ウフフ、安心して。……そうね。磯波=サンに相談なさい。きっと飛龍=サンが、守ってくれるんじゃないかしら」「アッ!良い考えです!」 #KZNPLN

2015-03-08 08:25:06
春魔解丼 @vespiking

その時。「如月=サン!如月=サン!どこにいるんだ!如月=サン!」窓の外から、時雨の声が聞こえた。香取は冷たく背後を振り返る。「アッ!……如月=サンを探してるんだ……!ど、どうしよう、センセイ……私、如月=サンを守ってあげなくちゃ……」睦月が怯えた。 #KZNPLN

2015-03-08 08:27:36
春魔解丼 @vespiking

「……睦月=サンは、急いで如月=サンをエスコートして下さい。そうね、一度磯波=サンの所へ、寄った方がいいわ」香取は少し焦った様子で言った。「でも……もし見つかったら」「大丈夫。手荒な真似はしたくなかったのですが、仕方がありません」香取はパチンと指を鳴らした。 #KZNPLN

2015-03-08 08:30:07
春魔解丼 @vespiking

ぬう、と、私室に飾られた、腰から上だけの西洋式甲冑が動き出した。コワイ!「アイエエエ!?オバケ!」香取は驚く睦月をなだめる。「大丈夫。飛龍=サンが来るまで、彼女が貴女を守ってくれるわ」甲冑は睦月にオジギした。「ドーモ、睦月=サン。ガンチャリオットです」 #KZNPLN

2015-03-08 08:32:57
春魔解丼 @vespiking

「ア、アイエエエ……騎士様……?」睦月はいまだ怯えた様子だ。ガンチャリオットと名乗る甲冑はフルフェイス甲冑メンポに全身アーマーを装備し、腰から下は、よく見ると艤装が生えている。下半身が戦車キャタピラめいた艤装に置換され、鎧を着込んだ艦娘であるらしい。 #KZNPLN

2015-03-08 08:35:08
春魔解丼 @vespiking

ガンチャリオットは聖騎士めいて一歩スライド後退し、ホルスターから抜いた連装ハンドキャノン2挺を胸で交差させ、丁寧に再オジギした。騎士道精神の感じられる態度だ。「彼女には、時間を稼いで貰います。その間に、如月=サンを」「……ハイ!わかりました!」睦月は決意を固めた。 #KZNPLN

2015-03-08 08:39:52
春魔解丼 @vespiking

「ア……ウ……アレ?」睦月のすぐ横で、駆逐艦が弱々しく船体を起こした。「……ア、ア……?」明滅する視界。「睦月=サン……?ア、ア……アイエエエ!た、助けて!ヤメテ!」「あ、如月=サン。起きたんだね。オハヨ!」「アイエエエ!ヤメテ!嫌よ!来ないで!ヤメ……」 #KZNPLN

2015-03-08 08:43:43
春魔解丼 @vespiking

「イヤーッ!」「ンアーッ!アーッ!アババババーッ!」香取の鞭が閃き、如月は雷に打たれたように痙攣を始める。「アバババ!痛い!苦しい!助けて!助け……」睦月はもがく如月の横にしゃがみ込んだ。「如月=サン。辛いよね、苦しいよね。大丈夫。すぐに終わるからね」「アーッ!」 #KZNPLN

2015-03-08 08:45:46