『アニメ作家としての手塚治虫 その軌跡と本質』(津堅信之)を批判する
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>「これは、私と穴見さん、それから今井(義章)さんしか知らなかった話なんですが、『五十万円はあまりにもひどいよ』ということで、手塚さんには『五十万円で受けていますよ』と話していましたけれど、実際は萬年社から百五十五万円を受け取っていたんです。
2015-04-05 22:35:10手塚自伝では「出血大サービスで55万円で請けてしまった」とあって、これをうけて宮崎駿も手塚死去後に「55万円なんて安値で請けたばっかりに、後に続く者がどんなに苦労したか」と酷評。
2015-04-05 22:37:13で、津堅はここを突いたわけです。「55万?違うよ自分の調査によると155万円だよ監督」と。
2015-04-05 22:38:25彼の狙いは明白です。宮崎による手塚アニメ罵倒を、なんとかして無効化したい。これです。これが狙い。
2015-04-05 22:39:32ひとの数学の論文を検証するときよく使う手です。論理の穴を必死に探して「ここ違っとるやないか」と指摘する。一か所でも脆いパーツがあれば、それが鎖全体の強度の弱さになる。
2015-04-05 22:43:18「55万円?はっ、155万円だわバーカ」とツッコミを入れることで、宮崎による手塚批判を崩壊させたかったのでしょう。実際そこをいろんな方面から評価された。夏目房之介による絶賛評がこれ。blogs.itmedia.co.jp/natsume/2007/0…
2015-04-05 22:46:27否定命題の否定は必ずしも肯定にはならない…敵の敵は味方とは限らないように。これ、論理学の基礎だと思うのですが、津堅もその賞賛者たちもそこは華麗にスルーした。
2015-04-05 22:55:57「ほれみろ従軍慰安婦の強制連行なんてなかったんだ!あいつらはただの売春婦だったんだ!」と。
2015-04-05 22:56:52この話題を振ると逆上する方が必ず出てくるのでここまでにするとして、この155万円説に今度は私がツッコミしてみます。
2015-04-05 23:00:36『鉄腕アトム』一本の実際の制作費は400万円を超えていました。最初期からそうです。実際にいくらかかっていたか社内では誰もろくに把握していなかった。なぜなら虫プロの帳簿は大雑把で、「制作費」の項目ひとつでまわしていたから。
2015-04-05 23:02:32嘘みたいですが『アトム』演出チームのひとりだった山本暎一の『虫プロ興亡記』にそう記されています。
2015-04-05 23:03:36「55万ではなく155万円だった」と強弁したところで、それが一体なんだというのでしょう。
2015-04-05 23:05:30そもそも経営の基本は「いくら稼いだか」ではありません。「何に金を使っているか」を把握することです。
2015-04-05 23:06:51また津堅は社員の給与についても論じています。東映動画に入りたての宮崎駿が貰っていた月給は1万9500円だったのに対し、前述の山本は初任給3万円。さらに前述の須藤の回想をこう紹介しています。
2015-04-05 23:10:22>「一般的な企業でも月給が2万2千円だった時代に、私は7万円もらっていました。しかも、「給料をいくら上げてほしいか?」と聞かれたことがあって、私は冗談で「5万円上がったらもう死んでもやりますよ」と言ったら、次の月に本当に5万円上がってきました。
2015-04-05 23:12:37>杉井ギサブローは「自分を含め当時の中核スタッフは、一番もらっていた時期で月20万円近かったと思う」と回想する(本書のインタビューによる)。 p132
2015-04-05 23:15:53などなど、どんぶり勘定の極みだった。私が会計の人間なら社長の手塚を刺し違えてでも説得して止めさせるところですが、津堅はというと
2015-04-05 23:17:28>忘れてはならないのは、それだけの給与が支払えるだけの収入が、当時(設立初期)の虫プロにはあったということである。(p132)
2015-04-05 23:19:17