ICRPの内部被曝評価モデルは合っているのか?

危険派から批判されることの多いICRPの内部被曝評価モデルは正しいのでしょうか? 空間線量への寄与度に比較して内部被曝の実効線量への寄与度が低いTe132について、検証を試みました。
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iPatrioticmom @iPatrioticmom

単純計算すると、I131とTe132を1000Bqずつ吸入した時、崩壊する回数は半減期が2.5倍長いI131がTe132の2.5倍になります。Te132の壊変数を1000とすると、I131の壊変数は2,500です。

2015-04-22 20:21:38
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I131は6時間後に7割が膀胱から排出されるので、甲状腺に蓄積して壊変するI131は3割の750。残りの1,750は膀胱か体外で崩壊します。一方、Te132は吸収率f1=0.1なので、体内に滞留して崩壊するのは900。I132の体内での壊変数はI131より多くなります

2015-04-22 20:21:48
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実際には生物学的半減期を考慮してもっと複雑な計算になるはずですが、甲状腺にはほとんど到達しなくても、血液中で体のどこかで崩壊して6倍のγ線を出すte132由来のI132は、実効線量にはほとんどカウントされていないのではないでしょうか?

2015-04-22 20:22:03
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3.内部被曝線量係数はどうやって計算しているのか?

2015-04-22 20:29:16
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ICRPの内部被曝線量係数の計算方法は前述のJAEA資料に詳しく説明されていますが、簡単に言えば  ①呼吸気道モデルと胃腸管モデルと核種ごとの代謝・動態モデルから体内のどこでどれだけ崩壊するか計算→ pic.twitter.com/YsNTUoMqbO

2015-04-22 20:30:07
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②各臓器のコンパートメント(線源器官)で壊変した放射性物質のエネルギーが、身体のどこの臓器(標的器官)にどれだけ吸収されるか、モンテカルロ輸送コードを使って計算 → pic.twitter.com/WJyecNefLq

2015-04-22 20:30:49
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③線源器官→標的器官の組み合わせごとに電子、光子、中性子について比吸収割合(SAF,specific absorbed fractions)を計算 → ④線源器官→標的器官ごとに、各核種の単位壊変あたりの標的器官の吸収線量(S値)を計算   という流れになっています。

2015-04-22 20:31:02
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現在、計算されている線源器官と標的器官はこちら。ORNLのCristyとEckermanのモデルcrpk.ornl.gov/documents/tm83…に基づいています。 pic.twitter.com/UM8enRNjWa

2015-04-22 20:31:55
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S値から等価線量評価器官の等価線量を計算→組織荷重係数をかけて実効線量を算出することになりますが、表2-II の標的器官と等価線量評価器官を比較すると、LN-Th(リンパ節)とHt_Wall(心臓)の等価線量が評価されていません。 pic.twitter.com/E1EXcStMU1

2015-04-22 20:34:25
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現在の等価線量評価器官と組織荷重係数。 心臓もリンパ節も2007年勧告では等価線量評価器官となりますが、組織荷重係数はその他14器官のうちのひとつです。 pic.twitter.com/xFMvhn0doi

2015-04-22 20:36:51
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4. 現在のICRP内部被曝評価モデルの問題点

2015-04-22 20:37:02
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①リンパ節と心臓が評価されていない なぜ標的領域とされているリンパ節と心臓が評価されていないのでしょう? リンパ節はモデル化が難しいようですが、心臓は確定的影響が認められていますし循環器疾患や免疫は放影協の研究課題になっています。 pic.twitter.com/SE5C738d6c

2015-04-22 20:37:32
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②血液(通過コンパートメント)の評価 CristyモデルではBloodは「Body_Tissueを代用値として使用」としており、血液が全身の組織に均一に分布することを想定しています。

2015-04-22 20:38:15
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ICRP30は「通過コンパートメント中に起こる変換は、全身中に均等に分布するものと仮定する」としており、血液コンパートメントでの壊変のうち、臓器重量/全身重量分の壊変が各臓器で起きると想定されています。 pic.twitter.com/z9kIvHpjlc

2015-04-22 20:38:38
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その後ICRP89で血液の分布が検討され、2007年勧告以降ではICRP110のような評価となるようですが、現在の係数はICRP30に基づいています。 pic.twitter.com/D1Ttk7mPkL

2015-04-22 20:39:38
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ICRP89の血液配分と臓器中の血液量のデータ pic.twitter.com/EVLjg1eFfj

2015-04-22 20:41:28
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血液をICRP30のように全身均等配分する場合と、ICRP89のデータに基づく配分ではどのくらいの差がでるでしょうか? ICRP89の主な臓器の重量と血液量の割合を比較してみました。 pic.twitter.com/rd0QX2r1AW

2015-04-22 20:43:45
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ICRP89のデータでは、血液量は心臓、肺、肝臓、動静脈の血液だけで全体の53.5%ですが、4臓器合わせても重量は全身重量の5%未満です。 血液を臓器の重量/全身重量で評価すると、大幅な過小評価になるのではないでしょうか?

2015-04-22 20:44:08
iPatrioticmom @iPatrioticmom

血液コンパートメントで崩壊するTe132由来のI132はほとんど評価されていないことになります。I132だけでなく、血液に取り込まれて6時間循環するI131、その他すべての核種の血液中での崩壊分も過小評価されていることになるでしょう。

2015-04-22 20:44:41
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5. 2007年勧告モデルでの評価

2015-04-22 20:44:56
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2007年勧告では胃腸管モデルがICRP pub100に変わるほか、線源・標的臓器と組織荷重係数が改定され、吸収線量を計算するためのファントムもORNLのMIBD型ファントムからコンピュータ上のVoxelファントムに変更されるようです。

2015-04-22 20:45:19
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現在、新モデルとファントムに基づいたSAFやS値の評価が行われているようです。 Electron SAF for the adult ICRP/ICRU reference computational phantoms(2012) ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22722546

2015-04-22 20:45:32
iPatrioticmom @iPatrioticmom

Evaluation of absorbed and effective doses to patients from radiopharmaceuticals .. (2013) ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23525914

2015-04-22 20:45:56
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COMPUTATIONAL LYMPHATIC NODE MODELS IN PEDIATRIC AND ADULT HYBRID PHANTOMS(2014) ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/P…

2015-04-22 20:46:11