ニンジャ・サルベイション #5
下から上へ!アスファルトを砕きながら、キャリバーは落下してくるピーコックを斬った。……だが、やはり浅い!キャリバーの目が殺意に燃え上がる。受け身を取って着地するピーコックに、キャリバーは斬りかかった。ピーコックは新たな光の尾を育てる。間に合わない!防御ごと斬って捨てるべし!25
2015-04-10 00:08:43……左脇腹にチクリとした痛みがあった。「イヤーッ!」キャリバーはピーコックの脳天を真っ二つにすべく、剣を上段から振り下ろした。剣がキャリバーの手を離れ、地面に転がった。「あン?」ぐらりと世界が揺れた。身体の感覚が失われる。キャリバーは毒を循環させる己の血管を感じる。「あン?」26
2015-04-10 00:10:50ドクン!心臓が強烈に動きニンジャアドレナリンを過剰分泌する。なんらかのアンタイ・ニンジャ麻痺毒はニンジャ新陳代謝によって一気に洗い流されてゆく。覚醒する意識の端で、キャリバーはインターラプト攻撃を仕掛けた者を発見する。リムジンの車体の下で腹這いになり、吹き矢を咥えた男がいる。27
2015-04-10 00:12:45傷だらけのサラリマンの顔が、妙に印象的だ。キャリバーは光の尾に胸部を貫かれた己自身に気づいた。身体が宙に高く持ち上げられた。ピーコックはその目に憎悪をたぎらせ、腕組みして、キャリバーを見上げている。「グワーッ!」思い出したようにキャリバーは悲鳴を上げる。イクサを決める一瞬。28
2015-04-10 00:15:49「でかした。シュモダ=サン」ピーコックは低く言った。シュモダが、今の古傷だらけの男の名前か。吹き矢野郎め。ピーコックの光の尾にとらえられてもがきながら、キャリバーの思考は乱れ飛んだ。「ニュービーにしてはよくやった方だぞ。キャリバー=サン」ピーコックが言った。「誇ってよい」29
2015-04-10 00:20:43キャリバーの身体を空中に固定し続けるのは骨と見え、ピーコックはキャリバーを地面に叩きつけ、光の尾を引き抜く。キャリバーは身を起そうとする。甘くねえ。ニンジャで、手練れだ。キャリバーは己に呟く。攻撃を当てたが、浅かった。浅かったのは、つまり、ピーコックがそうやって避けたからだ。30
2015-04-10 00:23:08剣はどこだ。剣を作らねえと。キャリバーは打つべき手を探す。ピーコックが近づく。胸の傷はどうだ。背中から力が流れ出る。まだやれる。ユダカは逃げたぞ、ざまあみろ。こっちは囮だ。ユダカはずっと遠くだ。ミカリ=サンと二人だ。奴はこれからもクールにやる。「バカ野郎」キャリバーは呟いた。31
2015-04-10 00:29:07ピーコックが振り返った。バイクが突っ込んでくる。ピーコックは身を守る。衝突。そしてバイクから飛び降りながら、銃を向ける非ニンジャ。BLAMBLAMBLAM……ユダカの銃撃がピーコックに浴びせられる。キャリバーは身を起そうとする。ピーコックの光の尾が閃く……。 32
2015-04-10 00:32:19「聴こえねえな」シンゴは通信相手にかぶせるように言った。「全然聴こえねえ」『捜査は中止……』「聴こえねえ!悪りィなあ!」『中止だ!シンゴ・アモ!』通信相手は負けなかった。『署長命令だ!シンゴ=サン!おいタバタ=サン。シンゴ=サンを止めろ。高度に政治的な判断が下ったのだ!』 34
2015-04-10 00:35:12「シンゴ=サンを止めるつッても、いま運転してるの自分なんですよ。……って言ってもらえますか、シンゴ=サン」運転席のタバタはハンドル操作しながら横目でシンゴを見た。「でも、そのう、高度に政治的なら仕方なくないですか、シンゴ=サン」「仕方なくねえよ」シンゴが睨み返した。 35
2015-04-10 00:37:47「で、どういう理由です。署長」シンゴは通信機に吐き捨てる。『私も詳細は知らされておらん。とにかく、確保対象のニンジャは、実際排除される。その点では問題ない。社会秩序は守られる。ゆえに貴様らのケジメも問われない』「俺らがやらんで、だれが排除するんだ」『高度に政治的だ』「チッ!」36
2015-04-10 00:40:08ビークルの速度が多少落ちる。「何やってる」「ちょっと考えながら行きましょう」「アア?」「いや、ニンジャを追いかけてて、高度に政治的で、ニンジャが排除されるんでしょう?非常にこう……今回は、してやられちまったんじゃ?」「アア?」「ここで無理を通しても、ケジメするのがオチかも」37
2015-04-10 00:44:01「なに腑抜けた事言ってやがる」「命張るなら、もっと周到に行きませんか、シンゴ=サン」タバタは真顔だった。「最近のあれこれに根っこが繋がってるんですよ、多分。この横槍も。で、今回、自分達はうまくやれなかった。勝負がついちまったッて事では」「……」シンゴは唸り声を上げた。38
2015-04-10 00:47:21シンゴは音楽のボリュームを目一杯上げた。そして通信機をスピーカーに押し付けた。『何を!グワーッ!』署長が悲鳴を上げた。シンゴはタバタに言った。「アマクダリッて言いてえのか!」「……そうです」タバタは頷いた。シンゴは顔をしかめた。「だがよ……」ゴウ。クルマの横を何かが横切った。39
2015-04-10 00:50:58「あン?」シンゴはウインドウを振り返り、それから前を見た。「……あン?」走り過ぎたのは巨大なバイクだった。乗り手は長い赤黒の布をマフラーめいて後ろへなびかせていた。「今のは……オイ」シンゴはタバタを見た。タバタは唾を飲んだ。「今のは……」40
2015-04-10 00:53:50「あン?」シンゴはウインドウを振り返り、それから前を見た。「……あン?」走り過ぎたのは巨大なバイクだった。乗り手は長い赤黒の布をマフラーめいて後ろへなびかせていた。「今のは……オイ」シンゴはタバタを見た。タバタは唾を飲んだ。「今のは……」40
2015-04-12 22:17:42息を深く吸って吐けば、震えは止まる。シンプルだ。ユダカは前方に炎上する車体やキャリバーを異常なエネルギーで吊り上げるニンジャを視認したが、心は平常だった。ハラを決めれば、後はやるだけだ。カイシャの前から、それこそ、カシイと色々やらかしていた頃からのマインドセットだ。42
2015-04-12 22:22:21やると決めたら、やる。それだけだ。アビシナ社はロクでもないカイシャで、建設エージェントの皮を被った悪魔。ユダカの腹のすわり具合は実際このカイシャの歓迎するところだった。最初どんなにビクつこうが、息を吸って吐けば、競合他社のスパイを拷問したり、監査役を暗殺するのも平常心だ。 43
2015-04-12 22:32:12ユダカは難しいことは気にしなかった。だから……あの夜も、カイシャの悪行に加担する事に我慢がならなくなったとか、そういう激情に身を任せての行いではなかった。ただ、不意に辞めようと思いついて、息を吸い、吐いたら、マインドセットは終わり、課長は無防備だった。 44
2015-04-12 22:36:33課長に撃ち込んだ瞬間、オフィスの連中は一斉にユダカに反応したから、課長の生死は確かめきれなかった。ショットガンを持ち出した奴が一番速かったが、結局それはユダカにより強い武器を与える結果になった。弾がなくなれば、次は消化斧だ。消化斧から消火器に連想が移り、火でケリをつける事に。45
2015-04-12 22:44:04