ア・セイレーン・シング・フォア・ハー・ウイングス #5

これ作ってる今現在、#6を投稿しています。忘れてた。
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2015-06-01 20:32:12
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。投下中はTLを余り見ないので、感想・実況などを #ryudo_ss に書いて頂けると、後でチェックして小躍りします。では、宜しければ暫くの間お付き合い下さいませ)

2015-06-01 20:33:28
劉度 @arther456

【ア・セイレーン・シング・フォア・ハー・ウイングス】#5

2015-06-01 20:36:00
劉度 @arther456

「二番砲塔、弾切れです!」「後部ミサイルハッチ開きません!攻撃不能!」「魔力センサーはどうなってるの!?」「異常な魔力の乱れにより、機能しません!」戦闘の最中、『蔵王』は混乱状態にあった。水中からプリンス・オブ・ウェールズが現れ砲撃してきたことなど、最早些細な事であった。 1

2015-06-01 20:37:45
劉度 @arther456

海中から現れた戦艦は深海棲艦の艤装だった。恐らくはあの中に戦艦棲姫の本体が乗り込み、船を動かしている。以前別世界よりやってきた、霧の艦隊を思い起こさせる戦闘スタイルだった。深海棲艦になっても元になった戦艦、プリンス・オブ・ウェールズを忘れられなかったのだろうか。 2

2015-06-01 20:41:31
劉度 @arther456

だがそれよりも訳がわからないのは、南北から現れた深海棲艦に攻撃を仕掛けた者達だ。「所属不明戦闘機の解析は終わった!?」「はい……それが、その……」「もじもじしてないで答えて!」「F-14です!」「じゅうよん……?」思わぬ数字に、提督は聞き返した。 3

2015-06-01 20:44:42
劉度 @arther456

「……ちょっと待って、それ何年前の飛行機?」提督が知っている戦闘機で、一番古いナンバーはF-18。それもとっくの昔に退役している。「ええと、70年前に開発された飛行機です」「骨董品じゃないの!?」そんな旧型戦闘機がなぜこちらの援護をしてくれるのか、提督にはまるで心当りがない。 4

2015-06-01 20:48:19
劉度 @arther456

心当りがないといえば、南側の深海棲艦も同様だった。リランカ島の港湾水鬼は金剛が倒した。復讐しにやってくることはあっても、こちらの味方になるようなことは無いはずだ。「金剛、あの子になんかした?」『No! But...』今まさに出撃しようとしていた金剛には、思い当たる節がある。 5

2015-06-01 20:51:33
劉度 @arther456

『あの子、反抗心が強いから、Eliteが嫌いなのかもしれまセーン』「……ううん?」提督にはいまいち意味が分からない。ただ、すぐには敵に回らないのは、確かなようだった。「後はレーダー!敵のジャミング可能性は?」「空気そのものがザワついてますから、敵も大変だと思います!」 6

2015-06-01 20:54:50
劉度 @arther456

敵の策略ではなく、この海が異様な魔力を帯びているらしい。海に溶けた荒ぶる霊のせいか、それとも別の原因があるのか。考えようとした提督を、強烈な横揺れが襲う!「うわっ!?」「船尾に被弾!推力10%低下!」舵にダメージがあったらしい。直撃を受けるまでは、時間の問題か。 7

2015-06-01 20:58:22
劉度 @arther456

大きな揺れで吹き飛ばされる前に、提督は艦長席のシートベルトを閉めた。司令室に窓はないが、床や機材に頭をぶつける可能性はある。「散布界、狭まってきました!」「回避パターン、AからBへ変更!」「ですが、このままでは艦娘さんたちが出撃できません!」 8

2015-06-01 21:01:41
劉度 @arther456

艦娘たちは未だほとんどが『蔵王』の中にいた。砲撃を回避するために、『蔵王』は船体を揺さぶっている。このような不安定な状態では、艦娘は安全に海に降りることができないのだ。だが、艦娘を降ろすために回避行動を止めれば、確実に砲弾が『蔵王』を撃ち抜く。 9

2015-06-01 21:05:02
劉度 @arther456

「どうする……!?」謎の飛行機も、不良深海棲艦もアテにはならない。『蔵王』の武装は残り僅か。状況を打開するアイデアもない。なら、こういう時のマニュアルは。「……全艦娘に告ぐ。左舷出撃リフトに集合、右舷で敵の攻撃を受け止めている間に出撃せよ!」 10

2015-06-01 21:08:13
劉度 @arther456

『提督、それは無茶です』すぐさま不知火が反論してきた。『それは小型船舶からのロケット砲に対するマニュアルです。戦艦砲を受け止めるには、この船は脆すぎます』「他にどうしろっての!?」『一か八か、南北の混戦地帯に飛び込んで、戦艦を振り切れば……』 11

2015-06-01 21:11:26
劉度 @arther456

「駄目だ。戦艦から逃げるために戦艦棲姫に近づくなんて、それこそ無茶だよ。出撃したらすぐに後方の『鳥堀』に応援要請。戦況を見つつ、可能な限り迅速に後退して」『提督はどうするのですか!?』「もちろん、逃げる」内火艇で戦艦から逃げ切れれば、の話だが。 12

2015-06-01 21:14:39
劉度 @arther456

船がまた大きく揺れた。四連装砲の斉射の衝撃は重い。「……次の砲撃で、右舷を敵戦艦に向ける。総員、出撃用意!」手すりを強く握りしめる。砲弾が運悪く司令室を直撃しないよう祈りながら。次の砲撃は、思ったよりもずっと早くやってきた。そして、敵戦艦の船尾が大爆発を起こした。 13

2015-06-01 21:17:54
劉度 @arther456

「……えっ!?」炎上しているのは『蔵王』ではない。プリンス・オブ・ウェールズだ。「赤城さん!?」『違います!』機動部隊の攻撃ではない。もちろん、『蔵王』の砲撃でもない。「艦長!見て下さい!」「何だ!」「敵艦隊の後方です!」目を凝らせば、水平線上に小さな黒い影があった。 14

2015-06-01 21:21:21
劉度 @arther456

「拡大して!」モニタに映った黒い影が拡大される。見えたのは、平べったい甲板の船だった。空母にしては小さい。『鳥堀』のような強襲揚陸艦のサイズだ。そこで提督に思い当たることがあった。「……まさか、いや、でもあいつらは……」その時、『蔵王』に通信が投げつけられた。 15

2015-06-01 21:24:35
劉度 @arther456

『Buon Giorno! こちら、揚陸艦『セント・エフレム』!助けに来たぞ、間に合ってるかい?』スピーカー越しに聞こえるのは、窮地に似合わぬ陽気な声。そして彼の使った言葉は、提督と妖精さんたちを驚かせるには十分だった。「イタリア語……じゃあ、やっぱり!?」 16

2015-06-01 21:27:51
劉度 @arther456

『驚いたかい?紅海で縮こまってるほどヤワな俺達じゃないのさ!』東洋艦隊旗艦、プリンス・オブ・ウェールズの背後から攻撃を仕掛けたのは、今回の西方打通作戦の主目標にして、アフリカで提督たちの救援を待っていたはずのイタリア海軍揚陸艦『セント・エフレム』だった。 17

2015-06-01 21:31:14
劉度 @arther456

「それじゃあ、今の攻撃はそちらの艦のミサイルですか?」『ノンノンノン!そんな無粋なモノじゃあない!っていうかミサイル撃ち尽くしちまってるし……』『艦長、口を謹んで下さい』低い女性の声が割って入った。『アッハイ』「ええと、今のは?」 18

2015-06-01 21:34:37
劉度 @arther456

『申し遅れました。イタリア海軍所属、ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦4番艦、ローマです。貴艦との合流に参りました』『同じく2番艦のリットリオですー。不束者ですが宜しくお願い致しますー』「イタリアの……艦娘か!」噂には聞いていたが、提督も彼女たちを見るのは初めてだった。 19

2015-06-01 21:37:52
劉度 @arther456

船尾が燃えたプリンス・オブ・ウェールズだが、砲は未だに動いている。後部主砲が、イタリア艦隊に向け斉射!だが、砲弾は彼女たちのはるか手前に落ちた。「同じ戦艦砲なのに……」『オート・メラーラ製ですからー。そちらの大和さんの主砲より遠くに届きますよ?』 20

2015-06-01 21:41:05
劉度 @arther456

『日本の提督さん。話は後です。我々が敵を引き付けている間に、艦娘を出撃させて下さい』「分かった!全員聞いてたな!艦を安定させる!第一艦隊からどんどん出撃!」『蔵王』が回避運動を止め、待機していた艦娘たちがリフトで次々と海面に降り立っていく。 21

2015-06-01 21:44:24