#トラ泊神戸支部～激闘の本土近海決戦編⑩

ですか @desuka_desuyo

青葉たちは旗艦の大井さんを先頭に、単縦陣で敵のもとへと突き進んでいきます。単縦陣は最も火力を出すことが出来る陣形。この火力で敵艦隊を撃滅するのです。 「加賀さん、大丈夫？」 「大丈夫よ。必ず航空優勢には持ち込むわ」 「……それならいいのだけれど」 #トラ泊神戸支部

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加賀さんの返事に大井さんが素っ気なく答えます。大井さんの心配は、加賀さん自身についてであって、作戦についてではなかったのだと思います。それなのに加賀さんが作戦のことについてしか考えがいってないことに、良い気がしなかったのでしょう。 #トラ泊神戸支部

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そんな大井さんはすぐさま気持ちを入れ替えたのか、通信機で連絡を取っていました。相手は第三艦隊……決戦支援艦隊期間の伊勢さんでしょう。伊勢さんたちは青葉たちとは別のルートで敵中枢まで進軍し、遠距離からの支援射撃をします。その最終調整だと思われました。 #トラ泊神戸支部

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「もうそろそろ接敵するわ。みんな気を引き締めて行くわよ」 通信を終えた大井さんが振り返り言います。青葉たちは無言で頷きました。 そうこうしているうちに遠くに黒い影がポツリポツリと見えてきました。あれがこの海域の主力艦隊なのでしょう。 #トラ泊神戸支部

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「制空権はとらせませんよ！」 大鳳がそう言って全力で戦闘機を発艦させていきます。加賀さんもそれに続いて発艦させていきますが、その動きは万全とは程遠いものでした。戦闘前ならいざ知らず、戦闘中の発艦は不可能でしょう。 戦闘機同士の空戦が開始されます。 #トラ泊神戸支部

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水上機は戦闘機相手には圧倒的に不利。なので航空優勢とならなければ射出したとしてもすぐに追い返されてしまいます。だからと言って飛ばさないわけにはいきません。青葉たちは大鳳さんと加賀さん、そして二人の艦載機たちを信じ、水上機を射出しました。 #トラ泊神戸支部

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「航空優勢！」 大鳳さんがそう叫びます。戦闘機同士の戦いは終わり、残った攻撃機がこちらへと飛んできています。その数はごく少数。青葉たちの対空射撃で十分です。 空の戦いが終わったころ、別方向から砲撃音が聞こえてきました。敵艦隊に向かって砲弾の雨が飛んでいきます。 #トラ泊神戸支部

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大きな爆発音が聞こえてきました。敵艦隊に少なくないダメージが与えられます。 「酸素魚雷を食らいなさいな！」 大井さんと北上さんの先制雷撃が敵艦隊の僚艦に突き刺さります。駆逐艦の一隻は沈み、もう一隻は炎を上げていました。数だけ見ればこちらが有利です。 #トラ泊神戸支部

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「ここからですわよ、青葉。昼間だけで勝てる相手ではありませんからね」 熊野さんが後ろからそう声をかけてきます。青葉は答える代りに一つ頷いて、敵艦隊に向けて砲撃をしました。狙うは敵空母。青葉の二連撃は空母ヲ級に小破相当の損害を与えました。 #トラ泊神戸支部

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「来るわ！」 戦艦棲鬼からの砲撃が飛んできます。一撃で大和級をも大破させるほどの威力。それが青葉たちの艦隊の周囲に瞬く間に水柱を上げていきます。青葉たちは砲弾の合間を縫いながら攻撃を加えていきました。 「とぉぉぉっ！」 熊野さんの砲撃がル級に突き刺さります。 #トラ泊神戸支部

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大きな爆発の後、ル級が沈んでいきます。 大井さんと北上さんの砲撃がヲ級に更なるダメージを与えていました。これで心配すべきは旗艦と二番艦の戦艦棲鬼のみ。そう思った矢先でした。 「くっ！やだっ、魚雷発射管が……」 被弾したのは先頭を突き進んでいた大井さんでした。 #トラ泊神戸支部

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「大井さん！……きゃあっ！」 後方の熊野さんが悲鳴をあげました。大井さんの被弾に一瞬気を取られたのが仇となったのかもしれません。それでも足を止めるわけにはいきません。随伴艦にとどめを刺し、北上さんと共に雷撃を放ちます。二番艦の戦艦棲鬼が巨大な爆発に包まれます。 #トラ泊神戸支部

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青葉たちは戦艦棲鬼が中破相当の損害を受けたことを確認しながら 敵艦隊から離れました。一旦体制を整えます。 「ごめんなさい」 離れたところで立ち止まって早々大井さんが謝りました。夜戦火力を期待されているのに戦うことが出来なくて、申し訳なさを感じているのでしょう。 #トラ泊神戸支部

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「謝らなくていいですわよ。仕方ないことですし、ほら、わたくしだってこのザマですから」 そう言って大井さんに声をかけた熊野さんは、ボロボロになった自らの身体を見て、肩を竦めました。 数瞬の沈黙が流れます。それを破ったのは珍しく北上さんでした。 #トラ泊神戸支部

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「ここで決めるよ」 キリッとした北上さんの目が青葉たちを見つめています。熊野さんがニヤリと笑いました。たぶん、青葉も同じような顔を浮かべているでしょう。 「もちろんですわ」 「もちろんですとも」 北上さんもニヤッと笑いました。 夜の闇がやってきます。 #トラ泊神戸支部

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闇夜の中目を凝らし、敵艦隊を見つめます。向こうもこちらの出方を見ているようでした。彼らが退くことはないでしょう。艦隊の中枢が退くということは、艦隊の士気に繋がります。そして覚悟が決まった青葉たちも退くことはないのです。 「夜はわたくしたちの時間ですわよ」 #トラ泊神戸支部

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熊野さんの言葉と共に、青葉たちは水面を駆けだしました。こちらの動きに合わせて向こうも距離を詰めてきます。すこしでもこちらに被害を与えるつもりなのでしょう。そうはさせません。主砲を構え、敵旗艦に狙いを定めようとしたときでした。 「青葉！」 #トラ泊神戸支部

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一瞬の煌めき。それが砲火だったのだと気付いたのは、青葉自身が被弾した時でした。 「くぅっ！」 それでも反撃を与えます。しかし、被弾の影響か、火力が足りません。 「もう一撃来るわ！」 大井さんが叫びます。回避行動をとると狙いが狂ったのか、二番艦は砲撃を外しました。 #トラ泊神戸支部

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勝機！この隙に一気に攻撃を叩き込みます。熊野さんの砲撃が旗艦に当たります。が、その損害は微々たるもの。二番艦が旗艦を庇おうと間に入り込もうとします。それよりも早く北上さんが言いました。 「今まで散々やられてたからねぇ。ギッタギタに、してあげましょうかねぇ！」 #トラ泊神戸支部

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北上さんの主砲が火を噴きます。砲弾は庇おうとした二番艦の目の前を通り抜け、敵旗艦に直撃しました。 巨大な爆発をおこして、敵旗艦が沈んでいきます。その様子をみて敵二番艦は一目散に逃げていきました。 勝った、という達成感はそこまで湧き上がりませんでした。 #トラ泊神戸支部

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青葉たちはただ呆然と、沈みゆく炎の塊を眺め、立ちすくんでいました。 「勝ったね」 「そうですわね」 北上さんの呟きに熊野さんが答えます。それが合図となったのか、張りつめていた緊張の糸が切れたかのように、みな口々に話し始めました。 #トラ泊神戸支部

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司令官へと連絡をする大井さん。 疲れたのかぐったりしている大鳳さんと、そんな彼女に声をかける加賀さん。 作戦成功に喜ぶ北上さんと熊野さん。 青葉がその様子を眺めていると、こちらを向いた熊野さんがウインクしました。 「帰投しますよ」 大井さんが言います。 #トラ泊神戸支部

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「泊地に戻ったら祝宴だそうよ。ホント、最初からこうしてれば無駄に時間を浪費しなくて済んだというのに……作戦悪過ぎよ」 先頭を進む大井さんが言います。その表情は言葉とは裏腹に嬉しそうでした。 泊地の明かりが遠くに見えました。青葉たちは帰ってきたのです。 #トラ泊神戸支部

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執務室はもうすでにお祭り騒ぎで、青葉たちが入ると大きな拍手が巻き起こりました。ここ最近しかめ面だった司令官は憑物が落ちたかのように笑顔で出迎えてくれます。 「お疲れ様、青葉」 「ただいま、古鷹」 入口の脇から声をかけてきた古鷹にそう返事をします。 #トラ泊神戸支部

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「みんなよくやってくれた。今日はパーティーだ。大いに楽しんでくれ」 嬉しそうな表情で司令官が言います。青葉は古鷹さんと楽しげな司令官を見て微笑みあったのでした。 #トラ泊神戸支部