#トラ泊神戸支部～激闘の本土近海決戦編⑤

ですか @desuka_desuyo

北上の指示で輪形陣で進んでいく。全員が対空機銃を構え、千歳たち軽空母は戦闘機をいつでも発艦できるよう準備していた。敵は空母棲姫。MI作戦の進行を遅らせるほどの強さを持っている深海棲艦だ。艦載機からの攻撃を防ぐだけで手いっぱいのように思えた。 #トラ泊神戸支部

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ならば無理に撃破を狙う必要はない。こちらの目的は敵部隊の偵察で、空母棲鬼の撃滅ではないのだ。全速力で突っ切って、最深部を目指す。それが司令官から伝えられた作戦だった。 「もうそろそろだよ」 北上の珍しく緊張した声で、艦隊の空気が張り詰めたものとなる。 #トラ泊神戸支部

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「空母棲鬼なんていませんでしたー…とは、いかないよねぇ」 鈴谷が肩を落として呟く。 「そうですねぇ。実は聞いてるほど強くなかったりすると嬉しいんですが」 そう返事をすると鈴谷はこちらに振り返って「だよねー」とだけ答えて前を向いた。鈴谷も緊張しているのだ。 #トラ泊神戸支部

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「敵空母発見！やはり空母棲姫です。それに、空母ヲ級も」 千代田が偵察機からの情報を伝える。全員が息を飲むのが分かった。敵艦隊は正規空母が二隻。その情報だけでこの後の戦闘がどうなるか嫌でも想像できた。敵に頭上を取られる。自然と主砲を持つ手に力が入った。 #トラ泊神戸支部

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遠く彼方に敵艦隊の姿が現れる。その中で一際目立つのが空母棲鬼なのだろう。その頭上が黒に染まっていく。 「艦載機の皆さん、やっちゃってください！」 「攻撃隊、発艦開始よ！」 そう言って二人は艦載機を発艦させ始めた。私たちも戦闘前の最後の確認をする。 #トラ泊神戸支部

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チラリと横を見ると、軽空母の二人を挟んで反対側にいる古鷹の姿が目に入った。古鷹はキッと敵艦隊を見据えている。前方から鈴谷のカタパルトの音が聞こえてきた。航空戦でちょっとでも足しになるようにと瑞雲を射出したようだ。 #トラ泊神戸支部

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空を見上げると二つの艦載機群がどんどん近づいて行くのが見えた。それがぶつかり合った瞬間が戦闘開始の合図だった。 「行くよ！」 北上の合図で私たちは一気に速度を上げた。上空では航空戦が開始されているのか激しい戦闘音が聞こえる。 「制空権確保出来ませんでした！」 #トラ泊神戸支部

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千歳の言葉に鈴谷が思わず呟いた。 「嘘でしょぉ」 嘘だと思いたいが現実は非常で、現に上空には無数の敵攻撃機がこちらに向かって飛んできていた。私たちは対空機銃を打ち放つ。だが、敵艦載機が怯むことはなかった。投下される爆弾の雨を必死に回避する。 #トラ泊神戸支部

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なんとか第一波をやり過ごし、敵艦隊と向かい合う。至近弾をいくつか受けたが、全員無事切り抜けられたようだった。だがこちらの戦闘機部隊は壊滅。北上の雷撃も外れたとのことだった。ならば少しでも数を減らしつつ、早々に離脱するしかない。 「撃てぇー！」 #トラ泊神戸支部

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古鷹の掛け声に合わせて私たちも砲撃を開始する。その間にも敵空母が第二次攻撃隊を発艦しようと準備しているのが目に見えた。 「なんなのあいつ、堅すぎ！」 空母棲鬼に砲撃した鈴谷が叫ぶ。続けて私も砲撃するが、直撃した砲弾は敵の外装を少しばかり削っただけだった。 #トラ泊神戸支部

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「敵の第二波、来ます！」 残った戦闘機たちを指示し、なんとか上空を守らせていた千歳が叫ぶ。空母棲鬼が何機もの艦載機を発艦させていくのが見えた。艦載機の塊がどんどん膨れ上がっていく。 「青葉、直上！」 #トラ泊神戸支部

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古鷹の声にハッと上を向くと、敵攻撃隊が今にも急降下爆撃をしようというところだった。空母棲鬼に気を取られていて、空母ヲ級の攻撃を見逃したのだ。急降下を始めた艦載機に対して機銃で必死に牽制する。それでも何発もの爆弾が降り注いだ。私の周りに水柱が何本も立ち上る。 #トラ泊神戸支部

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「青…」 古鷹の叫び声は爆発音で掻き消された。 #トラ泊神戸支部