温室本丸つぶやきまとめ:3

140文字で自分設定の本丸の審神者と近侍とかいる刀剣男士のぼややんとしたのを書いた分の自分用まとめ:3 (だいたい140文字小話、たまにつづく、たまに設定など呟きのごっちゃ) ツイート数増えたのでさらに続き。前のはこちら(http://togetter.com/li/834746)(http://togetter.com/li/857067) この本丸の顛末で一本書きたい話があるので練習がてら。 見られる方への注意点: 続きを読む
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こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

「あら、主じゃん」「よー。お疲れ様です。五虎くんも」「ありがとうございます…!」ぐるぐると何かしら考えているのだろう審神者の表情と口調に、さっきの会話が聞かれていたか、と大和守安定は思った。発作が続いている、くすむ瞳の審神者はぺたりと加州清光の側に座る。「手伝えること、ある?」

2015-10-18 21:40:52
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

加州清光の返事が早かった。「ないよー。俺が頑張るとこ、見てて。ね」「えー」大豆を炒る主に指示を出されたか、静かにやってきた子虎が審神者の膝を占拠した。「甘やかされてねーかな、私」「されてないない。主も仕事終わらせてきたんでしょ」言い繕うと、やがて彼女は黄粉の匂いの中で眠りこけた。

2015-10-18 21:47:48
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

物語の頁を、喰らって味わう女がいるらしい。山姥切国広が最近読んだ創作上の話であって、現実ではない。

2015-10-18 21:56:47
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

書庫に本を返してから執務室を訪れれば、朝の光のなかで娘は畳の上で眠っていた。監査が先日来たばかりだから、定期的な発作ではないのは明らかだ。山姥切国広を待つ間に転寝したのだろう。起こすか悩む、判断材料は彼女が手に薄い文庫を握っていたことだ。山姥切国広は本を奪い、娘の頭を膝に招く。

2015-10-18 22:04:51
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

古い。背表紙の一番下に「908」と書かれたシールが貼ってある奇妙な本だった。裏表紙を見るともう一枚シールがあったが、赤いペンでバーコード部分にばつ印がつけられ、「廃棄」とその横に書き添えてある。「なんだろうな、これは」シールを撫でながら、本をめくれば、中表紙に見知らぬ紋があった。

2015-10-18 22:13:35
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

紋の中には政府の麾下ではない、見知らぬ学校名らしきものが記載されていた。推測するに、審神者となるまえの娘が通っていた学校か。廃棄される予定だった本を、貰って、はるか時間も経ちきったというに、未だに保持し続けているということか。

2015-10-18 22:21:11
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

物語の頁を、喰らって味わう女がいるらしい。山姥切国広はそういう類いのあやかしではないが、娘の抱える記憶のひとつひとつを、こそりと味わって感情の糧とする。湧いては本丸に溶けてわからなくなる霊力を喰らって彼の糧に。歴史を紐解いては心の糧へ。 ひとつ決める。そろそろ彼女を起こそうと。

2015-10-18 22:26:09
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

それは創作であって、山姥切国広だって彼女の記憶を喰らえるわけではない。ないが。唇に吸い付いてその霊力を直接啜ってやっても、彼女はまるで気づかないのだろうなと思いながら、彼は娘を朝餉だぞと呼んだ。

2015-10-18 22:32:29
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

蜻蛉を追って外に出ていたら、夕食を食いはぐれた。秋田藤四郎は結局満ち足りないものを感じて亥の刻に起きだす。「何か食べていいもの、あるかなあ。聞いとけばよかったな」顕現したてのこどもには、礼節が備わっていたがゆえ、罪悪感があった。だから厨を覗き、「…秋田藤四郎?」声に跳ね驚いた。

2015-10-18 22:59:53
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

中は甘酸っぱい酢と、玉葱の匂いが満ちていた。洋風の卓袱台について居たのは声の元だろう山姥切国広と、「あれ?ほんとだ、秋田くんだ」切国くんよく分かるなあ、と声を上げる今の主だった。秋田藤四郎こそ、山姥切国広の気配の影の、彼女の気配はてんで分からなかった。おいで、と招かれて席につく。

2015-10-18 23:04:13
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

「変なこと言ってたらごめんね。夕食を…たべてない?」角灯に照らされる鉄色の瞳が煌めいて、指を一本、ぴしりと立てて主は聞いてきた。その横で山姥切国広は酢に浸けてあるらしい鮎の素揚げを食んでいる。「はい」「あーやっぱ。茶碗が幾つか余っててな」食べる?と山姥切国広と同じものを供された。

2015-10-18 23:13:25
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

歯を通せば、衣の香ばしさと、小さく縮んだ身の歯ごたえ。噛み締めて酢の甘辛さが加わる。おいしい。…顕現してから何度目かしら、確り話すのって、そう独り言を呟いてから、緊張した面持ちで主は秋田藤四郎に相対する。「本丸は慣れましたか、かみさま」「…えーと」「困ってるぞ」もごもごと助け船。

2015-10-18 23:20:02
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

山姥切国広に睨まれ、弱そうな表情をした主に、「慣れました!」と秋田藤四郎は語る。「どこもかしこも、楽しいです」答えに、そう、と言い方は短いけども、照れ顔で俯きがちになった審神者の口許は、笑っている。食べ物で腹が膨れるわけではないが、供される行為と食物に蓄積した霊力に、彼は満ちた。

2015-10-18 23:26:12
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

口頭で指導した二回目も、石のような小さく固い握り飯しか出来なかったので、さっき思い付いた手を使う。山伏国広に手を出すように言った。「?なにかしたのだろうか、主どの」差し出された手を、繋ぎ、握る。「握り返してみて。…そう、これくらいの力でいいんだよ」「力加減が難しいものであるな」

2015-10-20 12:10:32
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

こちらとしては、握り潰されないか今更ひやりとした。自分を大事にしろと脳内の布お化けが叱ってくる。「…小さい」「ん?」「小さい、手であるな」壊れ物を扱うような、というのか。おそろしく柔らかな弱い力で、ふやけた米を纏わせながらぺたぺたと山伏国広は触れてくる。「山伏さんは、大きいねえ」

2015-10-20 12:16:18
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

お兄ちゃんの手とはこうなのかなと、見かけの性差で異なる、覆ることのない大きさに、審神者は素直に感嘆する。見上げれば、彼はにかりと笑った。つられて笑みを深める。「えへへ」「カッカッカ」「へへへ」「…なにをやっているんだ、あんたたち」やってきた山姥切国広が米の石を掴み、顔をしかめた。

2015-10-20 13:01:49
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

細く、昼の空に溶けるような灰色の煙に気がついたのは、執務が終わってからだ。散歩がてら、万が一の火の用心に出歩けば、畑当番の筈の三日月宗近が縁側に座っていて、落ち葉の山はとうに崩されていた。「あいすまぬ、売り切れだ。俺のを一口分けてやろう」「いいの?わあい」髪をかきあげ、一口囓る。

2015-10-20 23:07:29
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

まだボク達と一緒にいてよ、それが本当に本音だったのに、審神者は眠りについてしまった。まだし足りないことはたくさんあった。また食べたいものはたくさんあった。彼女と一緒だったからこそ美味しいものを、沢山。泣かないでいたいと思っていたのに、乱藤四郎は泣いた。その頭を山姥切国広が撫でた。

2015-10-20 23:13:48
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

目が溶けてしまう、と砂糖菓子のような夢見る瞳が言った。乱藤四郎は、主さまは、と尋ねる。彼は首を振った。その輝きは無くなっていない。

2015-10-20 23:17:19

温室本丸の担当さんと監査さんまわり(ほぼ1次創作)。審神者について触れている部分があるので挿入。

こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

@cradleofraimu 「怒るの、苦手なんですよね」師匠が話をふっとやめて、そう呟いた。「あんまりいいことのあった試しがなくて」感情を剥き出しにする事が苦手だ、と言い換えることはない。自分の制御しない行動が、どんなにひとを傷つけているのか、傷ついた瞳であのひとは怖れている。

2015-10-22 13:29:58
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

@cradleofraimu 師匠とその彼氏(生後一年くらいの俺の最初の恩人であるのだが、あの人は苦手だ)は、けっこう長続きしている。複数の揺れる感情、例えば実験体に無垢な顔で接し続ける人格を、時に別人のように見える心を丁寧に制御し続ける師匠は彼氏の前でだけひとりきりでいる。

2015-10-22 13:42:40
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

@cradleofraimu 俺は物心ついてからの付き合いである首の醜いひきつれ傷に触れる。こんな風に、わかりやすく見える傷ではない。でも、優しいひとが、見えない傷、治らない傷を癒されながら、しあわせになってほしいと、俺だって思うんだよ、なあ姉さん。

2015-10-22 13:45:28

時々混ざりますが、ここからまた通常運行。

こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

「何してんだ、ひいさん」「ひいさんはおよし。親子丼っす」煮える醤油の匂いに引き寄せられたか、同田貫正国が厨に現れた。手には採れ立てなのだろう、芋の篭。「鶏肉は昔は食べてなかったんだっけ?牡丹紅葉、草木の名が」「興味ねえぞ俺は」「ちぇー」代わりに味見を任せると、彼は暗く笑った。

2015-10-22 17:45:28
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