グラウンド・ゼロ、デス・ヴァレイ・オブ・センジン #4
(これまでのあらすじ:私立探偵タカギ・ガンドーは、キョート元老院の陰謀を阻止すべく、俗にいうキョート・ネオサイタマ戦争の前線、ヴァレイ・オブ・センジンに向かった。それは元老院の穏健派からの依頼だ。大量殺戮を引き起こすであろう「ニンジャ兵器」デスドレインを排除すべし)
2015-12-09 22:17:09(ガンドーは傍らにアズールという少女を伴っていた。かつてデスドレインと行動を共にしたニンジャの少女。彼女はガンドーに同行することを希望した。デスドレインを殺す為に。彼らはキョート軍の前線基地に潜入し、ニンジャ兵器の運用の要である三基のコマンド・マトイの破壊に成功した)
2015-12-09 22:20:07(しかしガンドーは敗北した。彼はキョート軍に配備された「カブキコム」のニンジャを出し抜いた。それでも彼は敗北した。彼はカブキマスターのアキラノ・ハンカバを破れなかった。江戸戦争を制したニンジャ封じのジツに、敗れたのだ)
2015-12-09 22:24:53禁禁禁禁禁禁禁禁ンドーの目の前の闇が白く染まった。彼は痙攣し、括目した。「オハヨ」彼の顔を覗き込んでいたニンジャは皮肉めかして呟き、手元のライトを消した。「ドーモ。ゴブサタしています。イフリートです」そのニンジャには右腕がない。 1
2015-12-09 22:29:29ガンドーは立ち上がろうとした。当然、できない。両腕は肘掛けに固定されている。両足も自由が利かない。「もうちょっと柔らかい椅子を用意してくれねえか」「申し訳ないが、ここは最前線でな。望みには応えられぬ」「俺は吐かんぞ」ガンドーは言った。「依頼者がどこのどいつかもわからんのだ」 2
2015-12-09 22:34:42「尋ねる方法は……」イフリートは目を細めた。「……様々にある」「あるんだろうな」ガンドーは顔をしかめた。イフリートの肩越しに、この場所の情報を得ようとした。デスクに並ぶUNIXやファイアウォールの類い。高速タイピングを行うナード風の者達と、それから……白衣の女。 3
2015-12-09 22:38:45「オイ、なんだこりゃあ」ガンドーは呻き、首を動かした。生体LANジャックに器具が挿し込まれており、違和感がひどい。「念の為というやつだ。ハッカー殿」「俺のタイピング速度は警戒に値せんよ」「フフフ」イフリートは鼻を鳴らした。ガンドーは尋ねた。「どこだ。ここは」「カブキコムだ」 4
2015-12-09 22:42:44「やったぜ!俺はここに用があったんだ。責任者出してくれ」ガンドーは椅子をガタガタと揺ら……そうとしたが、びくともしない。「オイ!そこのアンタ。そうだ。そこの見目麗しい……」ガンドーの喚き声に、白衣の女が振り返った。そしてイフリートと目を合わせ、肩をすくめ、モニタに視線を戻した。5
2015-12-09 22:47:22『ヨー。ヨー。ハロー。コンニチワ』スピーカーが、モニタに映し出されたニンジャのふざけた声を拾った。モニタ越しに、彼の姿が、かろうじてガンドーの目に入った。ガンドーは呻いた。『どうしたァ?そろそろ始めるのか?』「ドーモ。デスドレイン=サン」イフリートがモニタ越しにアイサツした。6
2015-12-09 22:52:06『ああお前か、イフリート=サン』「その通りだ。これからミッション・ブリーフィングを行う……」『そこに誰か連れてきたか?』「わかるのか?」『そりゃ感じるさ……ヘヘヘ……愉快な仲間がまた増えるのかよ』「お前には関係の無い話だ」『関係が無いかどうかは、お前にゃわからねえ……』7
2015-12-09 22:59:18「ヌウーッ!」ガンドーは拘束状態でもがいた。ガンドーにもわかる。モニタ越しに喋っているニンジャは実際近い。恐らくガラス窓の向こう……「ヌウーッ!」無駄な努力である。「正常値です」ナードが報告し、女は頷いた。イフリートは続けた。「テスト戦闘のようにはいかんぞ、デスドレイン=サン」8
2015-12-09 23:05:57『そっちに居る奴は何だ?どうするンだ』「関係の無い話だ」『隠すこたねェよ……俺は、ヘヘヘ……道具だろ……何にも出来やしねえさ……。暖炉でライフルを磨きながら話しかけるジジイみてェに俺に聞かせりゃあいいじゃねえか』「……」イフリートは腕を組んだ。女が応えた。「スパイを捕えたの」9
2015-12-09 23:11:01『あっちの軍隊じゃねえよな』デスドレインは呟いた。「察しがいいわね」女が答えた。『何のスパイだ』イフリートが咳払いした。「それをこれから調べるのだ」『俺目当てか?』「デスド……」『なァ!捕まってるスパイのアンタ!聞こえるか?俺に会いに来たか?そうなのか?ヘヘヘヘ!』「黙れ!」10
2015-12-09 23:16:00「ウオオーッ!」ガンドーは吠えた。『ヘヘヘヘハハハハ!聴こえるぜ!アンタも大変だなァ!ハハハハハ!これからもっと大変になるぜ!お前は察しがいい方か?感じるかよ!ヘヘヘハハハハ!』「正常値です!」『忙しくなるぜ!イフリート=サンよォ!』その時である!ブガーブガーブガー!警報音!11
2015-12-09 23:20:58「総員……ピガガガー」合成マイコ警告音声はノイズにかき消された。次の瞬間、くぐもった振動が階下から伝わってきた。『来たぜ!来たぜ!来たぜ来たぜ!キタゼ!キ!タ!ゼ!』「これは!」イフリートはサブモニタを睨んだ。白熱する炎で形成された右腕が輝きを増し、双眸も同様に燃えた。 12
2015-12-09 23:25:40サブモニタに映し出されているのは、おそらくこの建物の付近の光景!土煙がもうもうと立ち込める中、走り出そうとする軍用車に斜め上から飛びきたった黒い球体が直撃、爆発せしめる!『始まるぜ!始まるンだぜ!』デスドレインが叫んだ。イフリートはUNIX机に拳を叩き付けた。「応戦せよ!」13
2015-12-09 23:31:33『テメェは出ねえのか?高みの見物か?』「その通りだ」イフリートはリアルタイム更新される情報を睨み、指示を下す。「敵はニンジャの斥候部隊。標的はまさにこのカブキコム棟だ。後方に地上部隊が展開中……本隊の到達に先んじて、我が軍のニンジャ懸念を排除しようというのだろう。迎撃せよ」 14
2015-12-09 23:40:12『まあいいさ!そこで……ヘヘヘ……待ってろや……!』ブガーブガーブガー!赤い警告ランプがモニタ室内を単色に切り取る。「外のリンボ、コンスティテューション、グレイヴディガーは既に応戦!」オペレーターが叫び、イフリートは厳めしく頷いた。ガンドーはもがき続ける。無駄な努力……!15
2015-12-09 23:44:21KABOOOM!アズールの斜め前方の兵舎が爆発した。アズールは陰へ身をひるがえし、状況を判断しようとする。断続的な銃撃音、叫び、悲鳴が聞こえてくる。ガンドーとの合流は失敗した。彼は現れなかった。どうする。アズールは頷き、再び透明の獣に飛び乗った。 17
2015-12-09 23:49:09戦闘はほんの数ブロック東。哨戒ヤグラから黒煙が噴き上がり、地面に着地したのは両手に兵士の生首を掴んだヘヴィレイン。背には「トクシュブタイ」のカタカナ。向かってくるキョート兵に、両手の生首を投げつける。KABOOM!「「アバーッ!」」生首は惨たらしく爆発。口内にグレネードだ。18
2015-12-09 23:54:55「撃て!撃てーッ!」別方向から殺到するキョート兵は、アサルトライフルの引き金をほとんど引けぬうちに、次々に首を刎ねられて死んでゆく。血しぶきの中をジグザグに走る風がある。ロングシップによる信じがたい速度の連続イアイ攻撃だ。 19
2015-12-09 23:59:18BRATATATATATATA!斜め上から激しい銃撃。兵舎の屋根には四脚ロボニンジャ、モータードクロ雅改善だ。胸部が開き、ミニガンをせり出させたゼンメツ・アクション・モードである。「イヤーッ!」ヘヴィレインは連続側転で火線を回避。1秒後、飛来した矢がドクロ頭部に突き刺さった。20
2015-12-10 00:06:15「ピガガガッ」姿勢制御を行おうとするモータードクロ雅改善に、斜め上方から続けて飛来した第二第三の矢が突き刺さる。極めて強力なニンジャ動体視力とニンジャ視力を併せ持つ者であれば、飛来した矢の山なりの軌道から、信じ難い発射地点を知る事ができる筈だ。それは基地を遥か離れた東である。21
2015-12-10 00:10:21射手はネオサイタマ陣営の高所に膝をついて大弓を構えるニンジャ、ソリティアだ。次なる弓を淡々とつがえ、放つ。四つ目の矢でモータードクロ雅改善が爆発四散すると、更なる標的を求め、弓矢の角度をほんの僅かに傾ける。 22
2015-12-10 00:14:38