アンエクスペクテッド・ゲスト #6

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

3人はコーゾの監視に気づいていない。(((気付くはずもない)))……コーゾは次いで、吹き抜け部に垂れ下がった巨大な肉の繭へ目を転じた。(((カンゼンタイは無防備。命に代えても守らねばならぬ)))ヨロシサン製薬謹製の重役用ZBR鎮痛剤が、彼に静かな狂気と明晰な判断力をもたらす。21

2016-01-14 22:48:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

現在、肉の繭はサイロ並みのサイズにまで成長。巨人の心臓めいて静かに脈打つ。破滅時計の振り子にも似たその響きは、コーゾの愛社精神をかきたてた。(((おお、カンゼンタイ、人類と兵器とニンジャの究極の融合体よ。美しきバイオ兵器。無駄がなく全てが美しい。明日を、ヨロシサン……!)))22

2016-01-14 22:55:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シュコーッ……。ガスマスクの息を荒げながら、コーゾは心停止毒針ニードルガンで、イシカワ、ヤマヒロ、タロ、3人を順番に狙った。(((奴らは何が目的だ……脱走か?)))だが未だ引き金は引かぬ。銃弾は限られているからだ。コーゾは冷徹に計算した。あの狂った医師を見逃した時のように。 23

2016-01-14 23:03:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イシカワがコーゾの潜んでいる暗闇を見上げ、しばし、訝しむような視線を向けた。(((サイバネ聴覚持ちか……?)))コーゾはニードルガンの銃口をイシカワに向け直した。イシカワは彼に気付かず、またすぐに肉の繭を見た。そして声を震わせながら、今はとにかく下へ進むよう2人に提案した。 24

2016-01-14 23:10:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((…やはり脱走。脅威ではない。ただの人間、愚かで身勝手な囚人どもに何ができよう…)))コーゾは銃口を下ろし、弾を温存した。真の脅威はデッカーニンジャどもだ。彼はごくりと唾を飲み、繭から伸びる太い触手の一本を撫でた。(((敵がニンジャであろうと、私が守ってみせるぞ))) 25

2016-01-14 23:18:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

3人は静かに階段を降り、階層を下った。近くの吹き抜け部には、老朽化したマッチャ供給ホースやスシ・コンベアに混じり、溶解有機物を吸い上げる触手が何本も脈打っていた。タロは片足の裏の感覚が無くなっていたが、気にせず進んだ。イシカワの脳内では、次第に狂気的な洞察が働き始めていた。 26

2016-01-14 23:30:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエ……」不意に、弱々しい悲鳴が、前方右手の独房のひとつから聞こえてきた。その鉄格子の中には何故か、太いホースの一本が伸びて床を這い、3人の行く手を遮っていた。「何だ、何だおい、チクショウ……?」ヤマヒロは小声で毒づき、咄嗟に散弾銃を構えた。そして、遂に、照らした。 27

2016-01-14 23:44:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

独房の中にいたのは……ナムアミダブツ!半ば溶かされ吸収されゆく囚人!何故独房がどれももぬけのカラだったのか、その答えであった!逃げられぬ囚人たちはまさに、飢えたるバイオニンジャの前に差し出されたスシにも等しかったのである!「「「アイエエエエエエエエ!」」」3人の絶叫が響く! 28

2016-01-14 23:50:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザッケンナ、ザッケンナコラー……な、何だこりゃあ!」さしものヤマヒロも狼狽した。「あ、あれは……!」イシカワが震える手で、それを指し示した。溶けかけた囚人の体に突き刺さっている、何個もの白い星型の骨!スリケンである!「アイエエエエエエ!」タロは恐怖し頭を激しく振った! 29

2016-01-15 00:00:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だ、誰か来たのか!?」「マッポか!?タスケテ!タスケテー!」「やめろ!大声を出すな!次はお前が溶かさアイエエエエエ!」階下から囚人たちの悲鳴!何たるアビ・インフェルノ・ジゴクか!そして実際、上の繭から垂れ下がった新たな触手の何本かが、床を這い、ヤマヒロたちに近づいていた! 30

2016-01-15 00:05:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「走るぞ!」ヤマヒロが叫んだ!イシカワを助けながら、3人は1個のセルめいて走った!「ど、どこへ!?」「下だ!サイモンジ・ヤナギダさえ見つけりゃ、下からでも脱出できる!」「溶けてる可能性は!?」「馬鹿野郎!下の奴らのほうが生きてるだろ!走れ!俺が走れと言ったら走るんだよ!」 31

2016-01-15 00:18:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

3人はヤバレカバレで階段を駆け下りた。階層を下るたび、"中身"のある独房が増えていった。グレーターヤクザの生存本能にも似た直感は、実際アタリであった。肉の繭を作って天井から垂れ下がるカンゼンタイは、その触手を下へと垂らし、上階層の独房から順にこれを餌食にしていたのである。 32

2016-01-15 00:26:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「看守か!?開けてくれ!」「タスケテ!タスケテー!」下に向かうに連れ、助けを求めて鉄格子から伸びる手や、悲鳴が増えていった。闇の中、彼らは何が起こっているかも解らず、上から聞こえてくる悲鳴だけを頼りに状況を想像し、じわじわと迫り来る死の恐怖に震えながら声を殺していたのである。33

2016-01-15 00:29:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「また吹き抜けの周りを走るぞ!ブッダのクソッタレめ!」ヤマヒロたちは一刻も早く最下層までたどり着きたかったが、複雑な過剰増築を重ねられたスガモ地下懲罰棟の構造がそれを許さなかった。数階層下るたび、中央吹き抜けを挟んで反対側にある次の階段まで、独房群の横を走らねばならぬのだ。 34

2016-01-15 00:34:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「「タスケテー!」」」当然彼らの走る横には懲罰独房が並ぶ。今まさにニンジャの餌食になろうとしている重犯罪者の悲痛な叫びが、助けを求める手が、鉄格子から彼らに向けられた。タロは迷い、言った。「ヤ、ヤマヒロ=サン……!」「黙って走れ!」「お、檻!檻を!開けてやれませんか!?」 35

2016-01-15 00:39:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤマヒロは舌打ちして、駆け続けた。今は他の囚人の命などどうでもいい。己のファミリーを守らねばならぬ。その時、イシカワが何かに気づいた。「各階の火災レバーを使えば一括で開けられるはず」「アァ!?」ヤマヒロは威圧的に唸った。イシカワは続けた。「上に逃がす。デッカーに伝える。繭を」36

2016-01-15 00:53:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「繭?」「繭だった。あれは絶対に、何か良くないものだった。この、星にとって」イシカワはNRSフィードバックの中で、何らかの狂気的真実を見出しかけていた。「ぞっとしねえな」ヤマヒロは冷徹に、命の損得勘定だけを行った。そして頷いた。独り方向転換して走り、解鍵レバーを作動させた。 37

2016-01-15 01:11:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「繭?」「繭だった。あれは絶対に、何か良くないものだった。この、星にとって」イシカワはNRSフィードバックの中で、何らかの狂気的真実を見出しかけていた。「ぞっとしねえな」ヤマヒロは冷徹に、命の損得勘定だけを行った。そして頷いた。独り方向転換して走り、解鍵レバーを作動させた。 37

2016-01-15 22:06:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガン!ガン!ガン!一斉に独房が開く!数十人の重犯罪者が足をもつれさせ、通路にあふれ出た。「バンザイ!」スキンヘッドの全身刺青スモトリが喜び勇んで飛び出し、我先にと駆け、触手を踏んだ。アブナイ!触手先端からバイオ骨スリケンが連続射出されスモトリは白目を剥き即死!「アバーッ!」 38

2016-01-15 22:11:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「よし、行くぞ!」ヤマヒロは囚人の流れに逆らいながら駆け戻り、再び3人組で階段を下る。次の階層でまたも囚人解放レバーを引き、走り、さらに下へ!「アイエエエ!」「アバババーッ!」解放された囚人らは地上脱出を試みるも、触手やスリケンに襲われる者多数!アビ・インフェルノ・ジゴク! 39

2016-01-15 22:15:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエ……」タロは駆けながら不安げに上の様子を仰ぎ見た。触手に絡め取られ持ち上げられるいくつものシルエットを。「なあ気にすんなよ!」ヤマヒロが笑った。「逃げ切る奴も大勢いるだろ!さもなきゃ、あいつら全員檻の中で死んでたんだ!自分で動ける分遥かにマシだぜ!」「アッハイ!」40

2016-01-15 22:19:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

3人は再び囚人の流れに逆行し、下り階段へと走る!「触手が上に行ったぞ!」イシカワが報告!「よォし!このまま一気に…!」その時である。マグロ魚群めいて押し寄せる囚人たちの間から、不意に一発のカラテパンチが飛び出した。「イヤーッ!」「グワーッ!?」顔面を殴り飛ばされるヤマヒロ! 41

2016-01-15 22:25:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

3人は揃ってバランスを崩し、転倒!散弾銃が転がる!果たして何者の襲撃か!?「イシカワアアアア!この日を待っていたぞオオオ!」傷だらけのサイバネ皮膚顔!イシカワとともに投獄された発狂マニアック、シゲオである!懲罰房にはこの絶望的なニンジャ妄想者がいたのだ!「アイエエエエエ!」 42

2016-01-15 22:30:54