アンエクスペクテッド・ゲスト #6

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「クソが!散弾銃を奪われた!」ヤマヒロが警告!「ウワハハハハハ!」BLAMN!「アバーッ!」イシカワの前をよぎった無関係の囚人死亡!「ついに光と闇の最終戦争が到来したのだ!俺はニンジャとなってここを脱出し、光の軍勢に属する者を皆殺しにする!手始めにイシカワアア!」BLAMN!43

2016-01-15 22:38:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スッゾコラー!」ヤマヒロが決死のタックル!辛うじて散弾銃の銃口が逸れるも、イシカワは脚に被弾!「アイエエエエ!」ヤマヒロと発狂マニアックは散弾銃を奪い合い、膂力比べ!「ウワハハハハハハ!あの時のヤクザか!」「テメッコラー!」BLAMN!暴発し無関係囚人死亡!「アバーッ!」 44

2016-01-15 22:45:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!イヤーッ!」ヤマヒロの膝蹴りがシゲオの腹に叩き込まれる!だが狂人はびくともせぬ!懲罰房への投獄が彼を真の狂気へと導いていたのだ!「ウワハハハハハ!」ジリジリと押され銃口がタロを狙う!それを押し返すヤマヒロ!「ARRRGH!タロ!てめえは独りで先に行け!邪魔だ!」 45

2016-01-15 22:51:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「エッ!?」タロは一瞬躊躇した。グレーターヤクザのカラテを支援しても足手纏いは当然。彼はヤマヒロと動けぬイシカワを交互に見た。このままでは散弾の餌食!「兄弟、これを運べ!」見かねたイシカワは懐からLAN直結キーボードを取り出し、タロに投げ渡した!「追い付く!また後で会おう!」46

2016-01-15 23:01:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ARRRRRRRRRGH!」タロは駆けた。ほとんどヤバレカバレで、歯を食いしばりながら、無我夢中で駆けた。耳の横を散弾の熱がかすめた。視界が狭まり、回転を始めた。駆け、階段を下り、レバーを下ろし、囚人たちを解放し、触手を跳び越え、狂ったように叫びながら、下へ、下へ、下へ! 47

2016-01-15 23:10:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニューロンの中に仲間たちの顔がよぎる。ヤマヒロ。イシカワ。別働隊の3人も地上でギリギリの潜入を続け、この作戦の成功を待っているはずだ。そして母や弟たちの顔。ジロ。サブロ。兄弟。危険なソーマト・リコールのカクテル!「アイエエエエエエエ!」タロは足を踏み外し、階段を転げ落ちる! 48

2016-01-15 23:13:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キーボードを抱きかかえながら、タロは下の階の床へと転がる。そこは静寂に包まれた最下層の、湿った岩の床。非常ボンボリ灯の下、タロはキーボードの無事を確認した。次いで、感覚の無い右足裏を見る。転倒した理由。靴底が溶解しゴムと肉と骨が混ざり合っている。血の気が失せた。溶けている。49

2016-01-15 23:19:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タロはそれを見た事を後悔した。おそらく、上で何かオモチめいたものを踏んだと思った時に、溶解粘液に触れてしまったのだ。こんな時に限って想像力がフル回転で働いた。溶解が進行しているのかどうかは判らない。全身の毛穴から汗が絞り出されてきた。勇気付けてくれる仲間は、もう傍にいない。 50

2016-01-15 23:24:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウウーッ!」タロは鼻水と涙を拭うと、歯を食いしばり前進を再開した。本当にサイモンジはこの最下層にいるのか?見つけ出せるのか?(((何年間も独房に入れられた人間が、全盛期のワザマエを維持しているのかね……?)))作戦前に一味の仲間が述べた疑問が、頭の中でぐるぐると回転した。 51

2016-01-15 23:29:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タロはサイモンジ・ヤナギダの名を呼びながら、最下層の独房レーンを当てどもなく進んだ。答えはない。無慈悲な沈黙だけが帰ってきた。次第に無力感が彼をさいなみ始めた。痛みを感じないはずの片足が、鉛のように重く感じられ、彼はついに歩く事すらままならなくなり、冷たい岩を這い進んだ。 52

2016-01-15 23:37:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

最下層の暗闇には希望も解鍵レバーも見当たらない。「ウウウウーッ……!」タロが声も出せなくなり、ナメクジめいて進み、ついに独房レーンの突き当たりへ達した時。奇妙な音が聞こえた。……タン、タタン、タタタン、タタ、タタン、スッ、スッ、スッ……タタタタタタタタタタタ……ターン。 53

2016-01-15 23:40:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ブラインド……タッチだ……」だが何処で。誰が。タロは目を見開き、立ち上がった。……タン、タタン、タタタン、タタ、タタン、スッ、スッ、スッ……タタタタタタタタタタタ……ターン。それは機械めいて繰り返される。それは速い。圧倒的に速い!イシカワの何倍も速い!まるで魔法のようだ! 54

2016-01-15 23:46:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タロは立ち上がり、進み、見た!独房で目を閉じ正座タイプする、浮浪者めいた風体の囚人を!「ああ…ああ……!諦めなくて……良かった…!」伝説は実在した!その指は床を叩き、床にはキーボード型の凹みができている!壮絶!彼は投獄後も、独房の壁や床に対しタイプ鍛錬を繰り返していたのだ! 55

2016-01-15 23:54:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あなたが……サイモンジ=サン……ですね……」タロはハッカーの執念に対する畏敬の念に打たれ、鉄格子前で正座した。サイモンジはエア・タイプ鍛錬を終えると、ゆっくりとタロを見て、濁った目を開き、頷いた。「ウー…アー…アアー…」長年の投獄生活でサイモンジの声帯は萎え、枯れていた。 56

2016-01-15 23:59:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニ、ニンジャ……巨大なニンジャが……!囚人を溶かして食うんです!早く脱出しないと、触手やスリケンが……!」「アアー……」取り乱すタロに対し、サイモンジは何かを指図した。「アッ…ハイ!」タロはキーボードを鉄格子のスリット越しに差し入れ、ケーブルを廊下側の制御ユニットに挿した。57

2016-01-16 00:05:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「他には何を」タタタタタタタタタタ。木の葉から滴る雨のように繊細なタイプが、猛烈な速度で叩き込まれた。ターン。「開錠ドスエ」電子マイコ音声が鳴り、ロックが開いた。「エッ」タロは息を飲んだ。それは一瞬だった。物理タイプ原理主義ハッカーカルトから神と崇められた男のワザマエだった。58

2016-01-16 00:12:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼はまだタイプを続けていた。「アー、ウー……」呻き、指差した。ドアロック制御盤に右から左へと奥ゆかしく流れる赤色LED文字を。それは完全にハックされていた。「◆私は足が萎え歩けない。すまないが運んでくれるかね◆」「ヨロコンデー!」「◆最下層の看守用リフトをハックして出よう◆」59

2016-01-16 00:19:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タロは喜び、だが同時に、未だ最下層に到達せぬヤマヒロたちを案じた。「アッ、スンマセン、でもやっぱり、上も助けが必要で……!でも上には触手と狂人とニンジャが……アーッ!」タロは困惑し頭を振った。「◆別の手もある◆」サイモンジはタイプした。「◆最下層にはいいものがあるんだよ◆」60

2016-01-16 00:26:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タロは足の状態も忘れ、伝説のハッカーを背負った。やせ衰えたその重犯罪ハッカーの体重は、羽毛のフートンのように軽かったが、万軍のように頼もしかった。 61

2016-01-16 00:29:35