海法紀光氏による「小説家になろう」系の異世界チート物についての解説

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海法 紀光 @nk12

いわゆる、なろう系のチート物の作品(といっても一口には語れないんだけど)において、たいていの作品では、自身の能力と、その世界のルールを把握した上で、能力やその運用を磨き上げ、社会的地位を築いている。 つまり異世界チート作品に、努力や向上心がない、というのは大きな間違いだ。

2016-01-30 17:42:40
海法 紀光 @nk12

一方で、これらの作品には(これも一口には言えないんだけど)、ある種の「不真面目さ」がある。「正当で地道な努力が最後には報われる」的な努力への信頼はなく、「たまたま素質を持った人間」が「正しいやり方」でやったのでうまくいってるというわけだ。要は、これは、ハッカーの思想である。

2016-01-30 17:46:33
海法 紀光 @nk12

いわゆるステータス魔法を前提とする「RPG的ファンタジー世界」だからというのもあるが、なろう系のチートというのは、多くの場合「世界をハックする物語」なのだ。うまいハックが重要なのであって、「努力」や「向上心」は付随条件でしかなく、時に邪魔でさえある。

2016-01-30 17:49:48
海法 紀光 @nk12

世の中を風通し良く、楽しくするのに必要なのはちょっとした工夫であって、「努力」とか「向上心」とかは不要だよ、という思想は、個人的には大好きであって、いわゆるハードSFの多くとも共通しているな、と、思うのであった。「ふわふわの泉」とかさ。

2016-01-30 17:54:57
海法 紀光 @nk12

もちろん、ここに書いたのは、あくまで、なろう小説の一面であって、地道な努力の大切さが描かれる、傑作なろう小説も一杯あるので、念のため。

2016-01-30 17:58:30

 

海法 紀光 @nk12

お客を見下す、というのは、プロとして敗北だと常々思っている。自分の思う「難しい作品」「新しい作品」にお客がついてこないように思えるとしたら、それは、「魅力ある難しさ・新しさ」を自分が作れていないせいだ。そう考えないと自己正当化の沼に落ちる。人間の根本なんてそんな変わるもんじゃない

2016-01-30 21:33:28
海法 紀光 @nk12

似た話として、自分から見て「下手な」「工夫のない」作品が受けてるとしたら、そこには「自分が気付いてない技巧」があるはずだと考えるのも大切だと思う。

2016-01-30 21:36:38

 

海法 紀光 @nk12

さて、なろう作品が、単純な願望充足ものであるかどうかだけれども、(別に単純な願望充足ものでいいじゃんというのは前提として)、自分が読んだ限り、たいていの長編作品はそうじゃない、という印象を持っている。そうなるのは、主に作劇上の理由である。

2016-01-31 15:42:32
海法 紀光 @nk12

要するに「チート能力で無双して痛快!」というのは、最初は面白いのだけど、ずっとそれ一辺倒だと飽きるのだ。実際、そこでストーリーが止まって未完になる投稿作が非常に多い。そこを越えて連載され、人気を保っている作品は、たいていの場合、なんらかの大きなテーマを持つようになる。

2016-01-31 15:44:58
海法 紀光 @nk12

最初からテーマを持ってる場合も、途中から芽生える場合もあるが、いずれにせよ、作品毎に様々な問いかけがされ、様々な答えが出されていく。その答えが納得いくかは作品それぞれ、人それぞれとして、意外と「無双チーレム」作品は、無双チーレムで終わらないことは指摘しておきたい。

2016-01-31 15:47:23
海法 紀光 @nk12

なお、なろう系長編で、自分が一番よく見かけるテーマが、「現実世界で不遇/不真面目で孤独だった主人公が、異世界という第二のチャンスで、ちゃんとした人間関係、社会性を築くこと」というもの。わりとちゃんとしたビルドゥングスロマンですよ。

2016-01-31 16:04:05