学校の英語はどうしてデタラメになってしまうのか小論

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２６）例えば中二には関係代名詞を教えることになっていて、一方で中二では受動態は教えてはいけないことになっています。

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２７）そういう厳しい縛りのなかでコスモポリタンでリアルライフでトラディショナルカルチャーオブジャパンな物語世界を維持するのは、至難の業。

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２８）たとえばこれ。中二の教科書から。同級生のガイジンを自宅に招く日本の男の子。この英文めちゃくちゃ。「ここは藁マットが保管された部屋です。ぼくらの内輪ではこのマットをタタミと呼んでいますが。タタミ部屋はとても心地よい」。 pic.twitter.com/wrGKf5vzLl

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２９）「われわれを訪れる者たちはここでなら体の力を抜くことが許されます」とネイティヴには聞こえる。

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３０）なぜこんなめっちゃくちゃな英文になってしまうのかというと、この単元では何が何でも関係代名詞を初登場させないといけないから。それで強引に関係代名詞を使った文をこしらえる。

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３１）関係代名詞を使わないほうが自然な文になるのに。This is the living room. These straw mats are called tatami. Come in. You'll feel comfortable. とか。

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３２）こう私が赤入れしても絶対に採用してもらえない。なぜなら①関係代名詞を使っていない、②受動態を使っているから。

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３３）「受動態がだめなら能動態にすればいいじゃないの」そんなことをしたらニュアンスが変わってしまいます。

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３４）こういうありえない英文がこうして生まれてしまうわけです。

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３５）文部科学省の教科書検定調査審議会は文が正しいのかどうかはチェックしていないのがわかる。

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３６）指導要領から逸脱していないかどうかが審議される。

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３７）教科書出版社はとにかく各地方自治体の教育委員会に気に入ってもらえるようなコスモポリタンで日教組的な物語世界を作り上げるのに必死で、英文が正しいかどうかはどうしても二の次になる、のでしょう。

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３８）教育委員会にすれば、国の検定を通った本だから間違いなかろうと判断する。自分の目で一文一文確認しない。そもそもわからないから。

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３９）現場の教師もやはり自分でチェックしない。そんな能力ないから。

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４０）こうやってめちゃくちゃな英語教科書がまかり通ってしまうのだと推理します。

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４１）これは開隆堂発行の教科書。ジャパンのトラディショナルでヒストリカルなカルチャーで今世界で大人気のジャパニーズマンガのルーツであるチョージューギガが金髪碧眼の男の子によってたたえられていますね。 pic.twitter.com/K8pcojyoNa

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４２）さらにマイク君はキョウトに旅行するとかで茶道まで手を広げるのです。 pic.twitter.com/hBL0zrOYJL

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４３）開隆堂も三省堂と同じくファンタジーな多国籍ジャパニーズジュニアハイスクールを舞台にしている。 pic.twitter.com/vaNIajwR4V

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４４）で、やはりめっちゃくちゃな英文でいっぱいです。

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４５）国と教育委員会（ならびに現場の英語教師）と教科書出版社の三者が、それぞれの思惑で教科書に口を出し、選び出し、作り出す。その歪みは英文にしわ寄せされる。つまり生徒は間違った英語を押し付けられるのです。

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４６）そこにさらに間違った文でいっぱいの定期考査、校外実力試験、そして高校入試がのしかかってくるわけだから、生徒も途中で適応してしまう。

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４７）こういうデタラメな高校入試英語をとにかく受け入れて点を取ることを至上命題とさせられる。 pic.twitter.com/y8l3OQASg3

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４８）話はまだまだ続きます。大阪府が高校入試の大改革をするそうです。橋下知事の落とし子ですね。サンプルを拝見しましたが、高校入試にしてはけっこうtoughです。TOEICや英検での成績を高校入試代わりに参照することも行うとか。

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４９）私なりに解釈すると、つまり中学の英語の授業は利害関係でがんじがらめでもはやまともな英語を学べないから、そういう場を見限って独力または外部の教育サービスに軸足を置いたものを優先的に合格させるバイパスを用意しますということではないかと思います。

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５０）ところで鳥獣戯画は小学校国語でも登場します。光村図書の小６用教科書です。論者はあの高畑勲。日本のアニメの偉大なルーツであるともっともらしく論じた『十二世紀のアニメーション』を教科書用に改稿したものです。