ストレイトロード:ルート140(18周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。 今回は851~900+関連ツイート。 即売会直前のためお知らせのウェイトがいつもより大きいです。ご了承ください。 引き続き1日1組つぶやいています。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、853。薄める。 お節介は時に災いのもと。

2016-01-21 19:21:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私達は道端に座り込む幼い姉弟を保護した。怪物に二度も住む町を追い出されたという。「どうせここもすぐに」「縁起でもないこと言わないで」姉に叱られても弟の不安は消えない。藍は泣き言に耳を傾けてから、その声を刺すように言った。「騒ぐから来るのよ。呼びたいの?」姉弟が揃って顔を凍らせた。

2016-01-22 19:51:51
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、854。縁起。 魔女は次に何と言うだろう。

2016-01-22 19:51:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

言われるまま車を走らせるうち、私は藍が山から麓の私有地に侵入を試みていると察した。停車して事情を聞くと、正面から訪ねても入れない場所だという。「わざわざ苦労するような方法にしなくても」「学問に王道なしって言うでしょ?楽するより確実に進むことが大事なのよ」意味はともかく用法が違う。

2016-01-23 20:12:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、855。王道。 堂々と歩ける道があるならそれに越したことはない。

2016-01-23 20:12:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

チェックアウトの時間が来たのに藍が客室から出てこない。「昨日買ったブーツをうまく履けないの」ドア越しに言われ、私はしばらく廊下で待った。ようやく現れた藍は普段とどこか違って見えた。謎が解けたのは車に乗る直前。背丈が不自然に伸びている。靴の中に何かを詰め、踵を底上げしていたらしい。

2016-01-24 19:36:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、856。踵(かかと)。 それは誰に向けた見栄なのか。

2016-01-24 19:36:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

短時間に頭上を何台分のエンジン音が通り過ぎたか。橋桁の下に車ごと隠れ、私が周囲を警戒する間、集団に追われる原因を作った藍は窓の外をじっと見ていた。河川敷と堤防の先に天の川が輝いている。ここはある銀河の郊外を浮遊する小さな星で、私達と追っ手の攻防も塵の動きに等しい出来事でしかない。

2016-01-25 19:22:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、857。銀河。 遠い輝きの正体を知る程、世界は広がるのか、小さくなるのか。

2016-01-25 19:22:10
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

峠を目指して山道に入ろうとした私達を、村の外れに住む老人が呼び止めた。この冬は特に山が危険だと言う。「例のクリーチャーですか」「それもあるが、何でもそいつが山で冬眠中の熊を起こしたとか」怪物に巣穴を壊された熊は山中をうろついているらしい。私は行先変更を提案した。藍は渋々了承した。

2016-01-26 19:00:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、858。熊。 翼あるものだけが脅威じゃない。

2016-01-26 19:00:30
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍ちゃんは多少の(どころじゃない)無茶も強引に乗り切ろうとする。 だから時にゼファールは車以外のブレーキも踏む必要がある。

2016-01-26 19:02:42
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ある街を縄張りにした怪物が藍の暴風に屈して去った後、私達は残された巣の見学を許された。元は商業施設の最上階だというが、外壁以外にも大穴が開けてあり、巨体が寛ぐ場所の確保に苦心した様子が伺える。藍が窓付近で割れた蛍光灯の列を見つけた。外からの侵入者に向けてわざわざ並べたのだろうか。

2016-01-27 19:37:09
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、859。蛍光灯。 彼女達の時代は「今」より少し先という定義で書いているが、だからこそ社会情勢も生活事情も全部想像でしかない。 照明器具の置き換えは多分簡単には進んでない、そんな未来。

2016-01-27 19:37:17
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

邸宅の最奥にある堅牢な扉が藍の目当てらしい。借りた鍵束のどの鍵も合わないという事実を入念に確かめた彼女は一歩下がり、私を扉の前に立たせた。「何のために工具持たせたと思ってるの」小さな指先が背中をつつく。「証拠は絶対この中にあるから。早く開けて」困難な闘いに挑む番が突然回ってきた。

2016-01-28 19:11:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、860。工具。 用法を知っていることと使い道を知っていることは全く違う。

2016-01-28 19:11:18
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

市場での買い物を終えて駐車場に戻る途中、小型の猿を肩に乗せた男とすれ違った。私の一歩前を行く藍が何を気にしたのか数回振り返った。「前に新聞で見た気がする」「珍しい種類なのでしょうか」「人間の方」藍は私の上着から車の鍵を奪い、駆け出した。「あの猿顔、多分指名手配の。すぐ車出して!」

2016-01-29 19:19:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、861。猿。 見ている方向と見ているものは違う。

2016-01-29 19:20:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

球場はほぼ満員だった。私達が取れた席からは選手の顔が見えない。「人多すぎ」「大事な試合ですから」「わかってるわよ」打者がバットを構えた。多くの観客が固唾を呑んだ瞬間、突風が土煙を起こした。「今の、わたしじゃないから」まだ何も言われないのに、藍は防寒具のフードに顔を隠してしまった。

2016-01-30 20:57:35
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、862。試合。 できるという事実も時には邪魔になる。

2016-01-30 20:57:40
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ホテルの宿泊客に用があるという藍に付き添い、ラウンジでその人を待っていた。外見上の特徴を頼りに私が素性も知らない人物を探す間、藍は車から持ち出した私の手帳を読んでいた。「真面目そうに見せる小道具にちょうどいいと思って」振りにしては読む目が真剣だ。私の素性は親に調べさせたはずだが。

2016-01-31 19:22:51
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、863。素性。 履歴書に残されない経歴や情報こそ面白いし、知りたくなる。

2016-01-31 19:23:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍は車を襲った怪物を文字通り吹き飛ばした。その時の風が雪雲を呼び込み、宿に隣接する駐車場を一晩で雪原に変えた。翌朝、窓から外を見た藍は浮かない顔をしていた。「こんな天気にするつもりなかったのに」魔女の心中など知る由もない子供達の歓声が聞こえる。無数の足跡が雪原に模様を描いていた。

2016-02-01 19:04:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、864。雪原。 時には望まない副産物も生まれる。

2016-02-01 19:04:24
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「ゼファールは最初から勉強好きだったから、どうせわたしの気持ちなんて分からないでしょ」藍は度々宿題の手を止めては私に話しかける。目の前の設問から逃げる為だろう。「そう言えば大学の卒論は何だったの?」次は話題を逸らす作戦。しかし私が専門用語を連ねた長い題名を答えると大人しくなった。

2016-02-02 19:03:49
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