ストレイトロード:ルート140(22周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。 今回は1051~1100+おまけ。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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今回の本編(まとめパート)

Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

風の魔女は自ら怪物退治の先頭に立った。一つの街を人間の手に取り戻した夜、祝賀会の席で藍の活躍を聞いた老婦人が悲鳴を上げた。「女の子がそんなことを!」孫らしき子供達が困惑している。だが本人はドレスの裾を摘みながら笑った。「これ見たら倒れそうね」私にだけ見せた脚には幾つも痣があった。

2016-08-06 19:39:34
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1051。痣。 しかも退治は旅のついでだとかとても言えない。

2016-08-06 19:39:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

山道を塞ぐ怪物は硫黄の匂いを発していた。腐食した背中の刺が怖い。私が急ぎ車の窓を閉め、地図で迂回路を探す間に、藍は一人車を降りていた。「どちらへ」「すぐそこまで」背中や頭に無数の刺を持つ怪物と、無防備な少女。見つめ合った両者は互いに背を向け去った。「あの子、温泉に住んでるみたい」

2016-08-07 19:59:09
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1052。硫黄。 触れてはいけない空気。

2016-08-07 19:59:16
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「貴女の為なら何でもします!」奇抜な衣装の女が藍の足元に這いつくばり頭を下げた。商売人と思いきや自分自身を売り込みに来た彼女は占い師らしい。「雑用係でもいいです、どうかお側に」「何も分かってない」藍は冷たく首を振る。「呼んだのはわたしじゃない。だからダメ」女の背中が大きく震えた。

2016-08-08 19:56:18
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1053。売り込み。 いくら優れた武器があっても、頼み方が悪いと採用は難しい。

2016-08-08 19:56:40
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

別室で着替えているはずの藍からメールが届いた。絵文字ばかりの文面にはヒントも法則性もない。私はつい隠された意味を探していたが、ふと最初の絵文字が差出人の得意気な顔に見えた。「あなたが止めても絶対行くから」子供だけが興味を示す秘密の遊び場へ。思い出した直後、庭を駆ける足音を聞いた。

2016-08-09 20:07:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1054。絵文字。 感情を伝える。それは本来の使い方。

2016-08-09 20:07:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「おはようございます!今日はどちらへ?」密かに宿を出た私達の前に、果物を抱えた女が現れた。車の前を塞ぐのはこれで三度目。度重なるお節介の動機は純粋な善意らしく、強引に排除できない藍の苛立ちにも気づかない。「昨日の差し入れに毒はなかったようです」「えっ食べたの?」「本人が私の前で」

2016-08-10 19:57:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1055。お節介。 そういう藍も時には人のこと言えないスケールで人様の人生に割り込む。

2016-08-10 19:57:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

手荷物は自分で守る。旅行者の鉄則と言うべき心構えを私達も常に意識するが、人間の力には限界があるものだ。「あれ見て」藍が私の鞄を指した。地図を広げる際足元に置いたはずのくたびれた鞄が、板張りの歩道を滑るように移動していた。「糸か何かでしょうか」「仕掛けなんてどうでもいいでしょ!?」

2016-08-11 19:32:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1056。鞄。 無防備では生きていけない世界。

2016-08-11 19:32:14
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

立ち寄った町で暴動を共謀した嫌疑を突然かけられた。私は捕まり、藍は連れて行かれた。身元不詳の流れ者に警察は厳しく、私の証言は黙殺された。「誰のシナリオなのか」留置場に忍び込む隙間風が人工音声のように発音した。「わたしがバラすまで待機して」藍が無事と判れば、次の指示を待つ他にない。

2016-08-12 19:11:34
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1057。共謀。 連携する集団が敵に回ると面倒が多い。 秩序の乱れた集団は敵も味方も厄介。

2016-08-12 19:11:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

庭で鎖に繋いでいた大型生物が大暴れの末に逃げ出した。散らかり方から得た仮説に私達は顔を見合わせ、家の主は下を向いた。「庭に何がいたの?」藍が控えめな声で尋ねた。大型犬か何かとの答えを期待したが、沈黙は揺るがない。「誰がいたの?」質問が変わると主の目が逸れた。藍の手元で鎖が揺れた。

2016-08-13 20:52:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1058。鎖。 隠しているものを決めつけてはいけない。

2016-08-13 20:52:47
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「テレビ消して」藍がソファに深く体を埋め、リモコンを指した。同じ音声と同じ映像を延々と繰り返す画面を彼女は見ていない。「早くして」「はい」内戦再開の速報は私がリモコンを操作した瞬間に途切れた。静かになった部屋で溜め息を聞いた。きっと彼女が本当に消したいのはニュースそのものだろう。

2016-08-14 19:37:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1059。消す。 手を伸ばしても救えない悲しみをただ煽られるのは苦しいだけ。

2016-08-14 19:37:40
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍は手紙を畳んでダッシュボードに置いた。「決めた。会いに行く」差出人は私達がこれから通る地域に詳しく、一帯を牛耳る組織が魔女を襲わないよう交渉するという。本当に味方なのか。都合の良い話を警戒する私を藍が鼻で笑う。「そんなのただの口実だから」彼女なりの文法で裏読みしての決断らしい。

2016-08-15 19:04:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1060。口実。 裏の裏まで塗り潰しにかかるゲームのように。

2016-08-15 19:04:51
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

町の有力者の夫人が食事会を開いた。藍は母親の知人から誘われたようだが、女性ばかりの集いに私まで招かれた理由が解らない。末席で肩身の狭さを堪えていると、急に名を呼ばれた。「今夜うちの旦那が誘ってきたら断らないで」主宰と藍が同じ笑顔で私を見る。「毎晩どこで遊ぶのか調べたいんですって」

2016-08-16 19:31:53
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1061。誘う。 調べて来て、ではない不思議に彼は気づくのか。

2016-08-16 19:32:01
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私達が道を歩いていると、突然背後から怒鳴られた。周囲には誰もいない。「あら、学校?」藍が隣の塀を見上げた。建物の中で誰かが楽団を指導中らしい。漏れ聞こえる発言から本番が近いことが窺えた。「懐かしい。先生の言葉録音して間違い探しとかやったなぁ」厳しい指導に逆らった経験があるようだ。

2016-08-17 19:47:40
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1062。指導。 論理と感情のさじ加減を間違えなければ心に届く言葉がある。

2016-08-17 19:47:48
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