#お好み焼き屋浜風 VS浦風 お好み焼き対決編【艦これSSっぽい】

紅吏珠名 @chrishna_c2

「……」 「……」 畳敷きの居間。座布団に座りこみ、私たちはちゃぶ台ごしに向かい合ったまま、長い長い沈黙が続いています。 なお、その間の店番は谷風と板が担当していました。 #お好み焼き屋浜風

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浦風姉さんは、陽炎後期型を象徴する12.7cm連装高角砲（後期型）を肩に担ぐように持ったまま臨戦態勢の構え。 『姉より強い妹などいない』そんな大昔から伝わる格言がありますが。 口を開いた瞬間に砲撃が飛んでくる。 そんな緊張感が居間全体を包みこんでいました。 #お好み焼き屋浜風

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……せっかく再会できたのに。 ……心から歓迎するつもりでいたのに。 ……私は姉さんとそんな関係になりたいわけじゃないのに。 ……どうしてこんなことになってしまうの。 ……私はいったい、どうすれば。 #お好み焼き屋浜風

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……そんな沈黙を破ったのは谷風でした。 「よいではないか。よいではないか」 「もう、谷風はテクニシャンじゃねぇ。そがぁないけん技どこで覚えたんじゃ」 「知りたいかい？　ならその身をもって教えてやろうじゃないか」 「あはははは。こそばゆい。やめちゃめて！」 #お好み焼き屋浜風

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……。空気を読んでいない。あるいは読んだうえで、あえて読まないようにしている。 こういう器用さが要求されることにおいて、谷風は妹ながら天才だと思います。 #お好み焼き屋浜風

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「谷風はホントに可愛いなぁ。可愛いなぁ」 「そうだろう。そうだろう」 「お姉ちゃん。谷風みたいな妹を持って幸せ者じゃ」 「よきにはからえ」 ……。浦風姉さんは私と視線もあわさず、谷風に向けて事あるごとに妹、妹といい、見せつけるようにいちゃいちゃしています。 #お好み焼き屋浜風

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縁日で私が射的の景品がほしいと言ったらプロ顔負けの早撃ちで景品を取ってくれたり、綿菓子やイカ焼き、水風船。なんでも欲しいものを買ってくれるし、どんなわがままでも笑顔で聞いてくれて。 何かあったら、いの一番に駆けつけて私の味方になってくれた。あの浦風姉さん。 #お好み焼き屋浜風

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私のことも可愛がってほしい。あの頃みたいに。 なのに今はどうでしょう。私だって谷風と同じ浦風姉さんの妹なのに。 姉が妹を可愛がるのは自然なことじゃないですか。 妹が姉に甘えたいのは自然なことじゃないですか。 姉と妹が仲良くするのは自然なことじゃないですか。 #お好み焼き屋浜風

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私、なにか姉さんにいけないことでもしましたか？ 「……どうやらお客さんがきたみたいじゃね。谷風、ちぃと手伝ってくれる？」 「おう。ガッテンだ」 一瞬だけ私と目が合うと浦風姉さんはそのままそっぽを向いて、店先に出ていってしまいました。 #お好み焼き屋浜風

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姉さんと入れ替わりに居間に入ってきた龍驤さん。 「話ぃ聞いとったで。なんや浜やん。自分の姉ちゃんにごっつ避けられとるやんか。それでええんかい」 「……いいんです」 「ええわけあるかい。面と向かって言いにくいコトなら、うちが代わりにガツンと言うてきたるで？」 #お好み焼き屋浜風

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「いいんです。姉さんには姉さんの事情があるのでしょうから。私はただそんな姉さんの背中をじっと見ているだけでいい」 「浜やん……」 #お好み焼き屋浜風

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浦風姉さんはそんな中、熟練のヘラさばきで次々とお好み焼きを焼きあげ、テンポよく調理場を回していました。 私と谷風の二人だけで回していた時とは一味違った店内。エプロン姿が凛々しく様になっている姉さん。 #お好み焼き屋浜風

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谷風と再会するのも久しぶりのはずなのに、今まで一緒だったようにピッタリ息の合った連携を見せ、調理場という『場』を完全に支配しているかのよう。 やっぱりすごい。この人は私の憧れの姉さんなのだと。 #お好み焼き屋浜風

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なのに私はお店に顔を出す気になれず、こうして私たちは一言も言葉を交わすことなく、ただただ時間だけが過ぎていきました。 #お好み焼き屋浜風

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「どうやら厨房の方は落ち着いたようじゃね」 カンバン時を迎え、お客さん達の姿が捌けた頃。手慣れた所作で調理場の後片づけを済ませる浦風姉さんでした。 「おう浦風。お疲れさまだね！」 「谷風。お疲れさまじゃ！」 パシンと、勝利を祝うように手のひらを叩きあう二人。 #お好み焼き屋浜風

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「あ、あの、姉さん。ありがとうございました……」 「勘違いすなや」 私がお礼を言おうとすると態度が一変し、びしっと一喝されてしまいます。 「こがぁことで店を切り盛りできんようじゃ、お好み焼き屋失格じゃ」 うぅ。とても手厳しいことを言われてしまいました。 #お好み焼き屋浜風

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「なぁ浜やんの姉ちゃん、そろそろ大概にせぇ……」 歩み出た龍驤さんを、私が手でさえぎって静止します。 「ええわけあるか。いくら浜やんの身内とはいえ、いきなり店にやってきたなり浜やんにこんな仕打ちしよる。さすがに堪忍袋の緒が切れるで」 #お好み焼き屋浜風

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「なによりうちのマブダチにこないな真似されて、黙ってられるかいな」 え……龍驤さんって私のお友達だったんですか。それは初耳でした。 #お好み焼き屋浜風

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「ほんでやな。このまんまウダウダやってもキリないし、見とるうちらも感じ悪い。言うて荒事で片を付けるっちゅーのもバツが悪い。ここはお互い恨みっこなしの一発勝負でいこうやんか」 そんな龍驤さんからの提案でした。 #お好み焼き屋浜風

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「一発勝負？」 「せや。お好み焼き職人同士、決着つける言うたらこいつやろ？」 言ってビシッと見せたのは、お好み焼きのヘラでした。 「ちょうど今なら店に誰もおらん。そこの厨房でお互い得意なお好み焼きを作って食わす。わかりやすいルールやろ？」 「えぇ確かに」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「お好み焼き……ひいては料理全般の世界の共通言語、美味いは正義や。違うか？」 美味しいは正義……ですか。なるほど悪くない考えですね。 軍事教練の折、ケンカと恋は先に熱くなった方が負けるのだと、足柄さんが実体験をもとに熱く語っていたことを思い出します。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「このまま水掛け論を続けとっても平行線のままや。話をつけるええ機会やろ？」 「……でも、肝心の審査員はどうするんですか？」 龍驤さんと谷風では人数が偶数のうえ、公平な判定など難しいと思うのですが。 「なんや、誰が採点するかとかそんなん決まっとるやろ？」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

……？ なんでしょう。私には皆目見当がつきません。いったいどうやって……？ そんな私を見て、腕を組んで満面のドヤ顔を決めながら、龍驤さんは言いました。 「それはな。お互いの作った自慢の一品を、お互いで食うて採点しあう相互評価方式や」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

なるほど……。お互いのお好み焼きを、お互いで食べあう……。 「それってつまり、久しぶりに浦風姉さんの作ったお好み焼きが食べられるということですね……！」 「……あかん。目が完全にあっちの世界に逝ってもうとる」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「二人の間には、なんや言葉に尽くせへんほどの確執があるんやろ？　これ以上事態がややこしくなる前に、お互いの得意を出し切った単純明快なルールで勝負を決める方が得策っちゅう話や」 「おぉ。りゅーちん頭いいな！」 龍驤さん。いざというときは頼りになりますね。 #お好み焼き屋浜風