#お好み焼き屋浜風 まとめ５【艦これSS】

紅吏珠名 @chrishna_c2

――深夜・鎮守府近海にて 「イヤーッ！」 「グワァアア！」 軽巡・川内が敵深海棲艦めがけて魚雷の一撃を見舞った。命中した箇所を起点に爆炎と水柱があがる。 #お好み焼き屋浜風

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「どうだ。このゼロ距離酸素魚雷の威力！」 ロングランスの二つ名に相応しいというべきか。砲雷撃戦ならぬ白兵戦を得手とする彼女は、闇夜に紛れ音もなく深海棲艦に忍び寄るや、魚雷を放つのではなく魚雷そのものを手に敵の船体に直接叩きつけるという破天荒だ。 #お好み焼き屋浜風

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考えるより先に行動とする性質も手伝っているのだろう。こと夜戦時の彼女にとって照準とはすなわち突撃を意味していた。「先手必勝、悪・即・滅」夜目を凝らしひとつ、またひとつ、目につくモノから次々に水底へと沈めていく。 #お好み焼き屋浜風

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「相変わらず姉さんは単独先行で無茶をします。後方から援護する身にもなってください」 「ごめんごめん。だって夜戦してると身も心も踊るじゃない？」 武勲艦と名高い妹の神通も、そんな姉の活躍ぶりに溜息するばかり。うそぶく川内の全身からは謎の燐光が洩れ出ていた。 #お好み焼き屋浜風

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「まったく。姉さんは本当に生粋の夜戦ば、夜戦好きなんですね」 「そんな褒めない褒めない。よーし次いってみよー」 「那珂ちゃんもう眠ーい。お肌が荒れちゃうー」 #お好み焼き屋浜風

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……。 そんなこんなで夜戦もひと段落がつき、ひと休みしようと気を抜きかけたその時だった。敵影がひとつ。うっすら漂うものが像を結び、現われたのは深海棲艦・空母ヲ級。 「なーんだラッキー。夜戦の空母なんてただの良い標的よ。一斉射でちゃっちゃとやっちゃってー」 #お好み焼き屋浜風

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だが一斉射で放たれた迎撃は、ヲ級の頭部ユニットをわずかに掠めた程度で、与えた損害は軽微だ。 「造作モナイ」 ヲ級から立ちのぼる尋常ならざる気配。そんな彼女達の驚きに、ヲ級はその相貌から妖しげな光を放つことで応じる。 #お好み焼き屋浜風

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通常空母は夜戦時において艦載機を飛ばせないのがセオリー……だが例外もまた存在する。飛行甲板から放たれた複数の敵艦載機。 「気をつけて。こいつはスペシャル。他の連中とは一味も二味も」 降りそそぐ命中弾。轟音が鳴り響く。 「な、一撃で大破に持っていくなんて――」 #お好み焼き屋浜風

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あっさり大破させられ無力化を余儀なくさせられた川内達……が、そんな彼女たちの姿を一瞥すると何も言わず、ヲ級は陸へと向かって移動を開始する。 「逃がすか！」 「姉さん。この状態で深追いするのは危険です。あとのことは提督達にお願いしましょう」 「……くそッ！」 #お好み焼き屋浜風

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≪川内隊が入渠しました≫ #お好み焼き屋浜風

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シリアスっぽい展開とりあえずここまで。 #おこ浜

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ジリリリリ――。 おや？　こんな時間に電話が鳴っています。ラストオーダーも近い時間なのに。いったい誰からでしょう。 #お好み焼き屋浜風

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電話を取ろうとしたその矢先。店先の引き戸が開かれて姿を見せたのは。 「頼モウ」 なんと深海棲艦・空母ヲ級でした。 頭に被った帽子のような何かからなにやら煙を吹いていますが。あれは確かに空母ヲ級です。 はて。陸地に立つ深海棲艦とは、どういう状況なのでしょう。 #お好み焼き屋浜風

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ともあれ私は護衛の任を担う陽炎型の13番艦として、どんな状況であろうとも最後まで務めを果たさなくてはいけません。 わずか一隻とはいえ、目の前にいるのは正規空母と同等の能力を誇る空母ヲ級。 赤城さんや加賀さん達の力をもってようやく互角に渡り合える相手です。 #お好み焼き屋浜風

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赤城さん達はおろか、谷風や龍驤さんもいないこの状況。勝ち目があるかに関わりなく、この状況をどうにかしなければ。 それが護衛艦である私の務め。私は非常用として隠してある、弾頭をスーパーボールに置き換えた、防犯用に改造を施した二挺の機銃を手に取ります。 #お好み焼き屋浜風

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実弾でも魚雷でもない装備をしかも単艦で。戦力としては心許ないですが、丸腰で挑むより気休め程度にはなるというもの。さて、敵はどう出てくるか……。 「勘違イスルナ　今日ハ客トシテ　ココ二キタ」 そうきましたか。 #お好み焼き屋浜風

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「コノトオリ　武装モ　解除シテアル」 ヲ級さんは両手をあげて抵抗の意思がないことを示します。 「……わかりました」 電探を使って周辺に彼女以外の深海棲艦の反応がないことと、彼女自身の武装がないこと、敵意がないことを確認した上で、私も艤装を解くことにしました。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

お客さんに貴賤はありません。たとえ相手が深海棲艦であっても、お客さんとしてお店にいらしたのであれば、丁重におもてなしをするのが私たち料理人としての務め。 作るものと、食べるもの。 食の世界にあるものは、ただその２つだけなのです。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「ヲ　ヲ　……？」 いっぽうヲ級さんはなにかメニューを注文するわけでもなく、ただきょろきょろと店内を見渡し、うねうねと触手らしきものが動く奇妙な意匠の帽子から仄かな燐光を洩らしながら、なにやら考え事をしている様子でした。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「ナニカ　用ガアッタ気ガスル　ダガ忘レタ」 ？　用件もなにも。お好み焼き屋にやってきた以上、やる事は普通ひとつしかないような気もしますが。最近どんな些細なことでも恋愛相談にやってくるようになった初風姉さんじゃありませんし。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「セッカクダ　コレヲイタダク」 言って彼女が指差したのは谷風焼き。谷風がさきほどビギナーズラックとやらで焼きあげていた奇跡の一枚でした。 「あ、お客さんそれは妹が作った試作品ですので」 「構ワナイ」 いえ、そうではなく私が構うのですが。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「ハムハムモグモグ……」 若干冷めていた谷風焼きを鉄板で温めなおし、鉄皿に再び盛りつけてヲ級さんの目の前に置くと、有無を言わさず帽子から伸びた触手でヘラを持ち、谷風焼きを器用に切り分け、あーんと口元を開ける要領で食べていました。 「ヲ　ヲヲ　……？」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「コレガ　オ好ミ焼キノ味　ナルホド覚エタ」 一口ごとにオーバーリアクション気味な反応を見せながら、谷風焼きを最後まで完食していました。 お好み焼きを食べるのは初めての経験だったのでしょうか。とても感動した様子で、ヲ級さんはいやんいやんと頬を赤らめています。 #お好み焼き屋浜風